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「女の子らしくしろ」ジーパンで登校した娘を殴った父親。40年間自分を殺して生きたノンバイナリーの絶望【作者に聞く】

  • 2026.4.20
「女子」と呼ばれることも女になっていく自分の体にも、違和感を感じていた 画像提供:『性別に振り回されたわたしの話』(C)桜木きぬ
「女子」と呼ばれることも女になっていく自分の体にも、違和感を感じていた 画像提供:『性別に振り回されたわたしの話』(C)桜木きぬ

桜木きぬ(@kinumanga)さんのWeb漫画『性別に振り回されたわたしの話~1981年生まれのノンバイナリー~』は、自身の性自認に悩み抜いた40年間の軌跡を描いた作品だ。ノンバイナリーとは、男性・女性という2つの枠組みに当てはまらない、あるいは中間の性自認を持つ人を指す。男性・女性という区分けが当たり前だった時代、桜木さんが感じ続けてきた違和感の正体とは何だったのか。

女の子という役への嫌悪と親からの暴力

第一話_001 画像提供:『性別に振り回されたわたしの話』(C)桜木きぬ/KADOKAWA
第一話_001 画像提供:『性別に振り回されたわたしの話』(C)桜木きぬ/KADOKAWA
第一話_002 画像提供:『性別に振り回されたわたしの話』(C)桜木きぬ/KADOKAWA
第一話_002 画像提供:『性別に振り回されたわたしの話』(C)桜木きぬ/KADOKAWA
第一話_003 画像提供:『性別に振り回されたわたしの話』(C)桜木きぬ/KADOKAWA
第一話_003 画像提供:『性別に振り回されたわたしの話』(C)桜木きぬ/KADOKAWA

昭和の時代、性別による固定観念は今よりずっと強かった。桜木さんは、自分が「女の子」として扱われることに幼少期から強い嫌悪感を抱いていた。母親が決めた「ピンク」の色や、祖母が作ったワンピースを無理やり着せられるたびに、「女の子という役」を押し付けられているように感じていた。あるとき、その耐えがたい苦しさからワンピースをハサミで切り刻んでしまったこともあった。

小学3年生のとき、限界に達した桜木さんはジーパン姿で登校する。すると女の子から異常にモテるようになったが、それを見た父親からは「女の子らしくしろ」「ろくな人間にならないぞ」と殴られた。親の望む「普通の女の子」として生きるため、桜木さんは将来の夢を「お花屋さん」や「かわいいお嫁さん」だとうそをつき、自分の心を閉ざして生きていく道を選んだ。思春期を迎え、体が女性へと変化していくことに絶望しながら、桜木さんは40年間もの間「普通の女」として振る舞い続けてきたのである。

ノンバイナリーという言葉との出会いと葛藤

そんなある日、インターネットを通じて「ノンバイナリー」という言葉に出会う。その意味を知ったとき「これはまさに自分のことだ」と確信したが、受け入れるまでにはさらなる葛藤があった。当初、桜木さんは自分が当事者だと認めることに強い反発を感じていた。「認めてしまったら、また差別されるのではないか」という不安があったからだ。しかし、認めずに生きることの限界を感じ、「これ以上は危ない」というギリギリの状態で、なかば「折れた」ような形でようやく受け入れたという。

カミングアウト後、当事者目線で漫画を描けるようになった桜木さんは、現在の心境をこう語る。「LGBTQは若者のものという声も耳にするが、中年以上にも透明化されてきた当事者がたくさんいる。間違いなく社会はよくなっているが、私がこの世を去る前に、私の世代にもこういう人がいたという記録を残したい」。

本作は、女子と呼ばれることに違和感を覚えた小学生時代から、結婚を経て「男でも女でもない性」に出会うまでの半生を赤裸々に描いている。桜木さんは、過去のつらい体験も「そんなに珍しいことでもないので、淡々と描くようにした」という。1981年生まれの彼女が歩んできた、性別に振り回された日々。その記録は、多様なセクシュアリティが存在する現代において、資料としての価値も持つ。彼女の今後の活躍にも注目したい。

取材協力:桜木きぬ(@kinumanga)

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