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「お母さんのご飯が食べたい」の裏にあった両親の苦労。ワガママを言った結果、娘の胸がざわついたワケ

  • 2026.4.10

筆者の話です。
帰省前、軽い気持ちで「巻きずし食べたいな」と母に伝えました。
その一言の向こうにあったものを、私は想像していなかったのです。

画像: ftnews.jp
ftnews.jp

七輪の煙

帰省すると、玄関先に七輪が出ていました。
ぱちぱちと炭がはぜ、細い煙が空へ上がっています。
父は火を落とそうと炭を調節していました。
少しかがんだ背中がゆっくりとこちらを向きます。
「アナゴをあぶったんよ」
と七輪の意味を教えてくれました。それは、私がリクエストした巻きずしに欠かせない具材でした。

私は帰省前「次に帰ったらお母さんの巻きずしが食べたいな」と軽い気持ちで言いました。
自分では小さなわがままのつもりだったのです。

台所の手

玄関を上がると、台所では母と母の友人が並んで巻きずしを作っていました。
酢飯を広げ、具材を整え、巻きすをきゅっと締める。
「巻くのは結構力がいるんよ」
笑いながら言われ、私は母の手元を見ます。
指先は赤くなっていました。

甘く煮たかんぴょうや、何度も返して焼いた卵焼き。
具材の仕込みも一つひとつ手間がかかります。
近くのスーパーにしか行けない母は、親戚に頼んで大型店で食材をそろえていたと聞きました。
玄関では父が炭の様子を見ながら、香ばしくアナゴを焼き上げている。
私は、何気なく言ったあの一言を思い出しました。

思い出す声

私は、何気なく口にしたあの言葉を思い出しました。
「巻きずし食べたいな」
それはお願いというより、甘えに近い響きだった気がします。
母の味が食べたいと言いながら、その準備や負担を想像していませんでした。
七輪の炭の匂いと、赤くなった指先が重なり、申し訳なさと感謝で胸の奥が静かにざわつきます。

言葉の先

あれ以来、「食べたい」と口にするとき、私はその向こう側にある準備を考えるようになりました。
誰かの手間や時間の上に、自分の願いがのっていること。
それを忘れなければ、わがままは少しやさしい形に変わるのかもしれません。

母の巻きずしは、今も変わらずおいしいです。
けれど私の中では、あの日から味わいが少しだけ深くなりました。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2026年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。

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