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日本の伝統工芸を取り入れた表現で魅せるAo Miyasaka、廃材×カビがモチーフの表現にこだわるMarika Suzuki、新進気鋭のデザイナーに独占インタビュー【Global Fashion Collective】

  • 2026.4.9

カナダ・バンクーバーに本拠を置く「Global Fashion Collective(グローバルファッションコレクティブ)」は、「Rakuten Fashion Week Tokyo F/W‘26」会期中の2026年3月17日に「Global Fashion Collective × Rakuten Fashion Week Tokyo F/W‘26」を開催。日本を含め、世界各国のブランドがさまざまなスタイルのコレクションを発表。新鋭デザイナーによる個性豊かなショーも実施され、好評を博した。

Ao Miyasakaさんのショーでは、フィナーレでパフォーマンスも実施された 撮影:ソムタム田井
Ao Miyasakaさんのショーでは、フィナーレでパフォーマンスも実施された 撮影:ソムタム田井

日本の若手デザイナーがこだわりのコレクションを披露

毎回、さまざまな試みを導入し、多方面から注目されている「Global Fashion Collective × Rakuten Fashion Week Tokyo」だが、今回は世界各国から3ブランドが参加。日本の伝統工芸品を独自の世界観で“表現”へと昇華し続けるアーティスト「Ao Miyasaka」。弱冠20歳ながら、初のニューヨークでのコレクション披露を成功させた「Marika Suzuki」。クラシックな技術と現代的な感性を融合させた「Eduardo Ramos」。いずれの新作も個性が際立ち、話題になったが、ウォーカープラスではショーの終了後、Ao MiyasakaさんとMarika Suzukiさんに単独インタビューを実施。デザインに対する思いや、今回のショーへの参加にいたった経緯などを聞いた。

グラフィティと日本伝統工芸の融合、社会課題を可視化するコレクション

東京を拠点に現代アーティストとして活動。表参道、銀座、ニューヨーク、ソウルなどで展示経験もあるAo Miyasakaさんは、グラフィティアートと刺しゅう・日本のテキスタイルを融合させた表現に取り組み、ストリートカルチャーと伝統工芸の橋渡しを志向している。

今回の作品も、般若や菊の花などが取り入れられ、日本文化(和彫り・浮世絵)からの影響が随所に見られる。周囲の刺青文化や彫り師の存在を通じて和彫りに強い影響を受け、浮世絵の平面性と和彫りの美学を服飾表現に取り入れることを大学時代に志向。日本各地の産地と協業する方針も、そのころに確立したという。

【Ao Miyasaka】「私の周りに刺青を入れてる方だとか、彫り師の方がけっこういて。和彫りの文化と浮世絵の文化ってすごく似たところにあるんですけど、私は和彫りがめちゃくちゃ好きなんですよ。この浮世絵と和彫りの平面の表現っていうのを服に取り入れたいなって思ったのが大学時代。国際ファッション専門職大学を昨年の3月に卒業したんですけど、そのころに日本の文化であったり、それらの産地と協業していくという方針を決めて。いいなって思ったものがあったらお電話して、工場や工房に見学に行かせていただいて。そこで直接やり取りをさせていただく…ということをしていました。

コレクションで出した般若の面は京都の中煒能翔先生という能面師の方にお願いしました。大学時代から親しくさせていただいて、今回のために特注でサイズを小さくするなどして、木彫りで作ってもらいました」

【写真を見る】能面師によって製作されたという、背中の“般若の面”の装飾が際立つ 撮影:ソムタム田井
【写真を見る】能面師によって製作されたという、背中の“般若の面”の装飾が際立つ 撮影:ソムタム田井

今回の楽天ファッションウィークでは14着の衣装を発表。そのうち2着は日本でのコレクション用に制作した新着で、そこには“性犯罪・虐待・貧困連鎖への告発”という、社会課題への強いメッセージが込められている。

【Ao Miyasaka】「日本では今、性犯罪や子どもへの虐待、貧困、家庭内で連鎖するそれらの問題だとかが、よりいっそう浮き彫りになってきていると思います。その一方で、私が初めて性犯罪を警察に相談した10年前と今でも、警察の対応は全然変わっていないんです。

今回、フィナーレで滝廉太郎の『花』を流したのですが、それに合わせて電話の音声も流しました。その音声は、私と警察官が行った実際のやり取りです(※)。どうにかして被害届を出させたくないかのような言葉を言っていて…そういうことがリアルにあるんですよね。

※:被害届を抑制するような対応の実例を音声演出(Ao Miyasakaさんによる実際の通話)で提示していた。

そういう現実を本当はみんな知ってるはずなんです。だからもう、見て見ぬふりするのはやめよう。性犯罪VS性被害者などという閉ざされた対立構造ではなく、すべてのまともな人間が性犯罪や虐待を許さない世の中にしようよ、と世の中に訴えかけることが今回の狙いでした」

【Ao Miyasaka】コレクション 撮影:ソムタム田井
【Ao Miyasaka】コレクション 撮影:ソムタム田井

Ao Miyasakaさんは、暴力被害というものは身体や皮膚に記憶として残り、日常の中でも前触れなく、皮膚に纏わりついた自身を侵食する感触がフラッシュバックすると語る。今回の新着では、この“皮膚の記憶”を造形的に可視化して、当事者が「自分が悪い」と抱え込む構図を打破することを目指したという。それが顕著に表れているのが、グラフィティによる直接的言辞で、黒を基調に「法律が動かないなら私が動く」といった英語メッセージを全面に描いたグラフィティのルックだ。

【Ao Miyasaka】「重要なのは、ポジティブになれる表現っていうのは最高だけど、最悪なことを変えるための表現はもっと最高で重要という“Making GOOD is Dope.Changing FUCK is Doper.”の精神です。このワードが一番重要なグラフィティになっています」

グラフィティによる直接的言辞が際立つ 撮影:ソムタム田井
グラフィティによる直接的言辞が際立つ 撮影:ソムタム田井

そして最後に、今回のコレクションのタイトルを伺ったところ、Ao Miyasakaさんは「見て見ぬふりをできる時代はもう終わった」を掲げ、暗部の直視を宣言。美談やポジティブ表現だけでは社会は変わらないという自身が体感した10年の観察から、リアルをさらけ出す実践へ舵を切ったことを明かした。

【Ao Miyasaka】「いいことばっかりを伝えていくような表現をしたって、社会は何も変わらなかったっていう10年を見ていたので。悪いことでもなんでも本当にあったことを描いて、リアルでさらけ出していかなきゃ何も変わらないという事実があるので、これからもこの方針で表現を続けていくつもりです」

廃材×草木染め×カビのメタファー、悩み苦しんできた経験をカビで表現

モデルたちとともに取材を受けるMarika Suzukiさん(中央) 撮影:ソムタム田井
モデルたちとともに取材を受けるMarika Suzukiさん(中央) 撮影:ソムタム田井

自身をファッションアーティストと位置づけ、実用性より“五感で感じる体験”を重視した服を制作するMarika Suzukiさん。着る人、見る人、発する音など、服と人・空間の相互作用を作品の核とし、服を媒体に見立ててメッセージを伝達することにおもしろみを感じ、この道を目指したという。

【Marika Suzuki】「もともと美術系の高校に通っていて、その後、卒業してすぐにロンドン芸術大学に進学したんですけど、服飾の専門科目は未受講で…。だから全然、専門的な技術は学んでいなくて、すべて独学なんです。それでも、自分の伝えたいことを一番表現できる媒体は服で、直接肌に触れる空間アートとして作品を作り続けていたら、18歳のときにファッションショーのお話をいただいて。それからもひたすら、いろんな作品を作っているうちに20歳を迎えました。今回発表した16着はすべて、20歳になった節目に合わせて作った新着になります」

【Marika Suzuki】コレクション 撮影:ソムタム田井
【Marika Suzuki】コレクション 撮影:ソムタム田井

Marika Suzukiさんの作品は、廃棄ペットボトルや古着といった廃材を多用しており、歩行時に発生する音や触れたときの質感など、視覚外の感覚体験にも重きを置いている点が特徴に挙げられる。本来なら捨てられるはずだった素材が、服の色や存在感を形づくり、観客に新鮮で楽しい体験をもたらすところがユニークなポイントで、そうした発想は高校時代からすでにあったと話す。

その一方で、Marika Suzukiさんは幼年期より自身の双極性障害やASDと向き合い、悩み、苦しい毎日を送っていたそう。そのような日々の中で、自己像への不安を否定や忘却ではなく“抱えたまま生きる”という姿勢で解消する方法を発見。そこから、双極性障害やASDで苦しんだ経験を“カビ”に見立てて表現する創意に行き着いたという。

【Marika Suzuki】コレクション 撮影:ソムタム田井
【Marika Suzuki】コレクション 撮影:ソムタム田井

【Marika Suzuki】「私は生まれたときから双極性障害やASDを持っていて。自分の見た目に自信がなかったりだとか、精神的に重いものを抱えていた時期がかなり長い期間ありました。その時々で考え方や制作に対する姿勢は変わっていくので、これから先もずっとこのテーマでやっていく…とは言い切れません。でも今は、そうした経験で生じた悩みや苦しみを、克服したり忘れたりするのではなく、持ったまま生きていきたい。それを何で表現できるかって言ったら、私の中では“カビ”だったんですね。

心の中のジメジメした部屋の中にカビが生えていて。でもそのカビって、すごく色とりどりで美しいんですよ。だから私は、ドレスとかにも全体にカビを意識した表現を採用していて。それを見た人にどういう風に伝わるか。カビを美しいと思ってもらえるかどうかは強制できないので、その判断は見てくださった方に委ねる形で作品を発表させてもらっています」

【Marika Suzuki】コレクション 撮影:ソムタム田井
【Marika Suzuki】コレクション 撮影:ソムタム田井

このたびの楽天ファッションウィークで発表した16着の新作にも、廃材を利用しつつ、カビをイメージしたデザインが随所に施されている。そのなかでも特にお気に入りのものは、ヴィンテージテイストの濃色ドレスだそうで、草木染めで多層の色を重ね、ナチュラルな風合いを強調。つぎはぎ構成でカビの有機的な広がりを示唆し、そこに廃材布や切れ端を染めて再生する手法も取り入れ、サステナブルかつコンセプチュアルな制作姿勢を示している。

現在、大学は休学中で、複数のファッションショーから招待を受け、それに向けての作品制作に没頭する日々を送っているというMarika Suzukiさん。最後に今後の活動方針や予定を聞かせてもらった。

【Marika Suzuki】「今現在、いろんなファッションショーからお誘いを受けていまして。まだ確実ではないんですけど、もしかしたらカンヌのファッションショーに参加させていただけるかもしれなくて、それをモチベーションに日々の創作に取り組んでいます。あと、私は小さいころから映画にインスピレーションを受けて育ってきたので、機会があれば映画の衣装制作にも挑戦してみたいです」

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取材・文=ソムタム田井

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