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若村麻由美、「仲代達矢さん・宮崎恭子さんご夫妻の“演劇DNA”が自分の中にはある」――弱くなった時はそう信じて頑張る

  • 2026.4.4
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若村麻由美 クランクイン! 写真:米玉利朋子(G.P. FLAG inc)

舞台、映画、ドラマとジャンルを問わずさまざまな作品で確かな演技力を放つ俳優の若村麻由美。この春上演される栗山民也演出の舞台、パルコ・プロデュース 2026『メアリー・ステュアート』では、数奇な運命に翻弄されるイングランド女王・エリザベス1世という難役に挑む。

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◆「16世紀の物語としてではなく」――現代が見えてくるような作品

メアリー・ステュアートとエリザベス1世――スコットランド女王とイングランド女王という2人の運命を描いた本作。パルコ・プロデュース作品を数多く手がける栗山民也の演出のもと、宮沢りえ、若村麻由美、橋本淳、木村達成、段田安則ら実力派キャストが顔をそろえ、力強い演技で観客を緊迫の英王室へと誘う。

――本作出演オファーを聞かれた時の心境はいかがでしたか?

若村:シンプルに驚きました。「私がエリザベス1世か…。できるかな…?」と思いましたけど、パルコの企画で栗山さんといえば、私は『チルドレン』という作品でお世話になったことがあったので、今回も勇気を振り絞ってやらせていただこうと思いました。

――メアリー・ステュアートとエリザベス1世のお話と聞くと、“女の戦い”というようなイメージを持ってしまうのですが、台本を拝見すると、大きな運命に対峙する2人の女性の物語という印象で、とても興味深かったです。

若村:王位継承権を持った立場として生まれた2人なんですね。エリザベスは、幼い頃父親のヘンリー8世に母親を処刑されるという辛い生い立ちがあり、ロンドン塔に幽閉されたこともあり、それで突然「あなたは女王です」と言われて連れてこられて……。おそらく彼女には、子どもの頃の血塗られた記憶がトラウマのようにあるんですね。家族のこと、父のこと、母のこと、そして母が処刑されたことによって自分の王位継承権がメアリーよりも劣っているというコンプレックス。そういう内的なものと、なんとかこの国を無事に治めていかなければいけないという覚悟、個人としての自分の思いに従うことができないという苦悩を、エリザベスはずっと抱えているんです。

やっぱり一国を治めるとなると、カトリックとプロテスタントの戦いというのもあり諸外国とのバランス、誰を信用して誰を信用してはいけないのかという外交的なところもエリザベスに懸かってくる。栗山さんも「16世紀の物語としてではなく」とはっきりおっしゃっているので、まさに現代が透かし見えてくるような、現代社会にも突きつけられるようなものが入っている作品だなと稽古をしていると強く感じます。

――そんなエリザベス1世をどのように演じたいと思われますか?

若村:栗山さんがこの作品はとにかく言葉の力によって描ききるとおっしゃっていて、美術セットもほぼ何もない、生身の体が晒されるという恐ろしい舞台になっていまして(笑)。その中で、エリザベスに関して言うと、ものすごく制約された、王冠に縛られているというか、国王であるという牢獄に閉じ込められている人で、演出でストイックな動きをつけていただいているので、ものすごく抑圧されて、心的にも縛られています。見た目の動きが派手ではない分、この抑圧された内的なエネルギーがどれくらい充満するかということが重要になってくると感じています。

女王はとにかく前を向いていることが多くて、誰かを見るということにものすごく意味が出てくるんですね。そういう意味でも、実際の体力も必要だし、心的な体力も必要という感じで稽古に臨んでいます。

◆2人の女王の姿を通して「人間の幸せはどこにある?」と考えずにいられない


――意外だったのですが、メアリーを演じられる宮沢りえさんとは初共演とのこと。一緒にお芝居をしてみて宮沢さんの印象はいかがですか?

若村:演劇人としても人を魅了する方なので、メアリー・ステュアートにぴったりですね。

――実際には同じ場所にいないシーンでも、メアリーもエリザベスも絶えず相手の存在を意識しながら進んでいくような物語です。

若村:エリザベスには常にメアリーの存在が脅威としてあるんですね。いろんな人がどんどん自分を裏切ってメアリーについていくという中で、自分が王ではあるけれども牢獄にいるメアリーが実権を握っているというようなセリフもあるくらい。国民に対しては自分が国王なので責任を果たさなければいけないという思いと、内部的にはメアリーに侵食されてきているという恐怖の両方がエリザベスの中にあると思います。

――若村さんの目から見ると、メアリー・ステュアートという女性はどのように映りますか?

若村:この2人の女王はとても似ているという言葉がたくさん出てきますが、明と暗なんですね。見た目には牢獄に閉じ込められているメアリーの方が暗ですが、内実はその逆かもしれない。逆と言っても、じゃあメアリーは幸せなのかって言ったらそうではなくて、2人とも幸せでもない。「人間の幸せってどこにあるんだろう?」と考えずにはいられません。

エリザベスのセリフで「真の王者になる道は1つしかない。自分の意思に従う自由を得ること」という言葉があって。おそらくその自由を得ることができないエリザベスが1番求めていたことかなと。これは生きていく私たちみんなに投げかけられているようなセリフだなと感じました。

――若村さんにとって新しいチャレンジがたくさんある作品になりそうですが、乗り越えるのに一番大きな山だと思われるのはどんなところでしょうか?

若村:とにかく膨大なセリフ量(笑)。言葉以外にほかに頼るものがない、まさに言葉による演劇なんですね。お客様には存分に言葉のシャワーを浴びていただく作品になると思います。

◆仲代達矢・宮崎恭子夫妻の“演劇DNA”が自分の中にはあると信じて


――これまでさまざまな役どころを演じられてきた若村さんですが、ターニングポイントを挙げるとするとどんな作品になりますか?

若村:最初は、やっぱりPARCO劇場で無名塾が公演した『シラノ・ド・ベルジュラック』。もともと私はPARCO劇場で無名塾のお芝居『ハロルドとモード』を観たことで、今ここにいるんですね。なのでPARCO劇場というのは私にとっては聖地であり、演劇人としてのふるさとというか、本当に特別な思い出のある劇場なんです。そういう意味でも、大抜擢していただいた『シラノ・ド・ベルジュラック』で、仲代(達矢)さんの相手役、ロクサーヌをやらせていただいたというのが1つの演劇人としてのスタートでした。

次は、TPTでデヴィッド・ルヴォー演出の『テレーズ・ラカン』という作品。ベニサン・ピットという小さな劇空間で、とても緊密なお芝居をさせていただきました。

そのあとは幅広くいろんな作品に出会わせてもらいましたが、特にこの1年はバラエティー豊かなものが集約された年という感じで心に残っていますね。昨年の今頃に稽古をしていた『陽気な幽霊』では、文字通り陽気な幽霊役でしたけど、ちょっと人間離れした存在として華やかに楽しく動き回るみたいな感じで。そのあと、昨年から今年にかけては『飛び立つ前に』で、フロリアン・ゼレール作×ラディスラス・ショラー演出という組み合わせに4作連続して出させていただけた。しかも今回はおばあちゃんの役で、日常生活の中にある人間の心理の深いところを描く作品と出会えたことが、自分の中ではとても大きかったですね。

そしてここに来ての“女王”。この続けての3作があまりにも違いすぎて、稽古に入るたびに周波数を合わせていくのに時間がかかるんですけど、この1年全く違う役をさせていただいたことで、役者っていう仕事は面白いなって改めて思えるようになってきました。

――本作の後には『頭痛肩こり樋口一葉』でまた幽霊になられますね。

若村:そうですね(笑)。栗山さんの演出で、4回目になりますが今回は私の花螢の集大成だと思っています。

――これまでのキャリアの中で、追いかけたい、こうなりたいと思われた背中はどなたになりますでしょうか?

若村:憧れたというと、やっぱり最初に『ハロルドとモード』で観た宮崎(恭子)さんですね。初めて観た時の衝撃というのが強くって。ただ宮崎さんは、役者としてはその『ハロルドとモード』からなさっていないので、“追いかけ続けた背中”というと仲代さん。背中が大きすぎて“追う”というところまでいけないですけど、でも、仲代さん・宮崎さんご夫妻の“演劇DNA”みたいなものが自分の中にはあると、自分が弱くなった時にはそのことを信じて頑張ろうと思っています。

――先ほど役の振れ幅が大きい1年だったというお話がありましたが、今後“俳優・若村麻由美”をどういう形で伝えていきたいと考えられていますか?

若村:昔から目標というものがないんです(苦笑)。あまり計画性がなくって。

――意外です。すごくきっちりといろいろなことを考えられている方かと…。

若村:いや、ないんです、計画性が。なので、「あなたにこれを…」と言っていただいたら、ありがたくやらせていただくということでここまで来たんですよね。早くおばあちゃんの役がやりたいって周りにずっと言っていたのですが、『飛び立つ前に』で叶ったので、この道も開かれたなという感じですし。

「この人にあれをやらせてみよう」と思っていただけるなら、それにチャレンジしていく、そういう役者でいたいと思っています。

――では最後に、今回の作品を楽しみにされているファンの皆様へメッセージをいただいてもよろしいでしょうか。

若村:大きなことになりますが、「人間とは」というところがあらゆるシーンから見えてくる。野心、策略、信頼、裏切り、愛。そういう人間のさまざまなものが見えてくる作品になると思います。

(取材・文:渡那拳 写真:米玉利朋子[G.P.FLAG inc])

パルコ・プロデュース 2026『メアリー・ステュアート』は、東京・PARCO劇場にて4月8日〜5月1日、福岡・J:COM 北九州芸術劇場 大ホールにて5月9日~10日、兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて5月14日~17日、愛知・穂の国とよはし芸術劇場 PLAT 主ホールにて5月21日~23日、北海道・カナモトホール(札幌市民ホール)にて5月30日~31日上演。

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