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1日の会話量は「毎年338語」ずつ減少している

  • 2026.4.2
人々が話す「言葉の数」が減り続けている / Credit:Canva

メールやチャット、SNSによって、私たちは自分の意思を文字で伝えるようになりました。

では、そのぶん実際に「口に出して話す言葉」は減っているのでしょうか。

アメリカのアリゾナ大学(University of Arizona)の研究は、この素朴な疑問に対し、かなりはっきりした答えを示しています。

研究チームは、人々が日常的に話す言葉の量が長期的に減少しており、その低下幅は年間約338語と推定しました。

研究の詳細は、2026年3月20日付の『Perspectives on Psychological Science』に掲載されています。

目次

  • 15年間、会話量は減少し続けている
  • 失われつつあるのは「日常の小さな会話」だった

15年間、会話量は減少し続けている

この研究は、最初から「現代人は昔より話さなくなったのか」を調べようとして始まったわけではありませんでした。

出発点になったのは、2007年に発表された「男女で話す量に差はあるのか」を検討した研究です。

研究チームはその結果をあらためて確かめるため、同じ方法を使って新たなデータを分析していました。

ここで使われたのが、参加者の日常生活の音声を断片的に記録する「電子録音装置」です。

参加者は小型の録音装置を身につけて普段どおりに生活し、装置がときどき短時間だけ周囲の音声を記録します。

こうすることで、「今日はどれくらい話しましたか」と本人に後から思い出してもらうのではなく、実際の日常の中でどれだけ言葉を発しているかを、より自然な形で捉えることができます。

今回の分析では、2005年から2019年までに行われた22の独立研究、約2200人分のデータが使われました。

これらの研究は、乳がんへの対処、離婚後の適応、瞑想が人間関係に与える影響など、もともと別々の目的で行われたものです。

つまり、会話量の変化を追跡するために最初から設計された研究ではありませんでしたが、別の目的で集められた自然な会話データが、長期的な変化を読み解く材料になったのです。

そして再分析の結果、研究者たちは思いがけない変化に気づきます。

2007年の研究では、1日に話す語数の平均は約1万5900語と推定されていました。

ところが今回の新しい分析では、その平均は約1万2700語でした。

さらに各研究のデータを実施年と結びつけて調べると、話す言葉の量は年ごとにほぼ直線的に減っていることがわかりました。

研究チームは、この減少幅を年間約338語と見積もっています。

そしてこの減少傾向が少なくとも15年間続いてきたのです。

では、実際に何が減っているのでしょうか。より詳しい結果と、その原因を見ていきましょう。

失われつつあるのは「日常の小さな会話」だった

この研究で特に印象的なのは、減っているのが単に「会話全体」ではないらしい点です。

失われたのは、長い会話そのものではなく、日常のあちこちにあった短いやり取りでした。

例えば、レジで店員にひと言尋ねる場面、道を聞くやり取り、近所の人とのちょっとした雑談などです。

こうした会話は一つひとつを見るとごく短いものですが、1日の中で積み重なれば、意外と大きな量になります。

今回の研究は、そうした細かな接触が少しずつ減ってきた可能性を示しています。

年齢による違いも見られました。

研究者の解説によると、25歳未満の層では年間約452語、25歳以上では約314語の減少が示されており、若い世代でより大きな低下傾向がみられました。

ただし、減少は若者だけに限られた現象ではなく、年上の世代でも確認されています。

これは、特定の世代の問題というより、社会全体の変化を反映している可能性があります。

では、なぜこうした変化が起きているのでしょうか。

研究は原因そのものを特定したわけではありません。

ただ研究者は、スマートフォンやSNSに加え、セルフレジやタッチパネル注文、GPSナビゲーションのように、人と話さなくても用事を済ませられる仕組みが増えたことは、この変化の背景の一つかもしれないと考えています。

昔なら誰かに声をかけていた場面が、今では画面を数回触るだけで終わることも珍しくありません。

もちろん、そのぶん文字によるやり取りが増えている可能性はあります。

しかし研究者は、話し言葉と打ち込んだ言葉は同じではないと見ています。

声には調子や間合いがあり、その場で相手に返される反応があります。

短い会話であっても、文字だけのやり取りとは違ったつながりを生みます。

だからこそ、総文字数が減っていないとしても、話し言葉の減少がそのまま問題ないとは言い切れません。

もっとも、この研究にも限界はあります。

データは主にアメリカやヨーロッパの参加者から集められたもので、世界全体にそのまま当てはめることはできません。

また、分析対象は2019年までで、その後の変化はまだ十分にはわかっていません。

しかし研究者は、「この減少傾向が逆転するとは考えにくい」と述べています。

今ではさらに会話量が少なくなっている可能性が高いのです。

今後は、話す言葉の減少が孤独感や人間関係、心の健康とどう結びつくのかを詳しく調べていく必要があります。

今回の研究が示したのは、単に「人が話さなくなった」という事実だけではありません。

日常の中で人とつながる小さな瞬間が、私たちの気づかないところで少しずつ減っているのかもしれない、ということなのです。

参考文献

Are we talking less? A Q&A with psychologist Matthias Mehl
https://news.arizona.edu/news/are-we-talking-less-qa-psychologist-matthias-mehl

元論文

Sliding Into Silence? We Are Speaking 300 Daily Words Fewer Every Year
https://doi.org/10.1177/17456916261425131

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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