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ベタベタしない、でも見捨てない。脳梗塞で帰らぬ人となった義母が、最期まで貫いた『静かな優しさ』

  • 2026.4.2

家族との距離感に悩むことはありませんか? 関係を築こうとしても、どこか踏み込みきれないまま時間が過ぎていくこともありますよね。しかし、何気ないやりとりの中に、あとから気づく想いが隠れていることもあります。筆者のエピソードをご紹介します。

画像: ftnews.jp
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距離が埋まらないまま過ぎていた時間

結婚してしばらくの間、義実家へ行くときは緊張していました。
義母はクールで、口数が少ない人。

食卓にはいつもおいしい料理が並びますが、一緒に座って食べることはなく、キッチンに立ったまま忙しく動いています。

「手伝います」と声をかけても「大丈夫だよ」とやさしく、でもあっさり返されます。
まだうまく距離をつかめていない、と感じていた時期でした。

差し出されたもの

それからしばらくして、私は妊娠しました。
少し肌寒くなり、大きくなったお腹を抱え義実家へ帰省したときのことです。

義母が、声をかけてくれました。
「Rちゃん、これ、よかったら使って」

そう言って渡してくれたのは、モコモコのひざ掛けでした。お腹にくるっと巻いてボタンで留められるタイプのブランケットです。

ちょうどお腹が冷えるのが気になっていたので、ありがたく使わせてもらいました。

気づいた、色違いの意味

ふとキッチンに目をやると、忙しそうに働く義母の腰にも、似たひざ掛けが巻かれているのが見えました。それは私のと同じ形で、色違いでした。

その瞬間「おそろいなんだ」と、嬉しくなりました。それまでどこか距離を感じていた義母が、急にぐっと近くに感じられたのです。

義母はくるっと振り返り「色違い。可愛いでしょ」と優しい笑顔で言いました。

そのとき私は、なんだかとてもあたたかい気持ちになりました。

言葉にしなくても、こうして同じものを選んでくれたこと。それが、義母なりのやさしさだったのかもしれません。

今になって思うこと

それから月日が流れました。
先日、義母は脳梗塞で帰らぬ人となりました。

今でも我が家には、あのときもらったひざ掛けがあります。今年も毎日のように使っていました。

そして巻くたびに、キッチンに立っていた義母の後ろ姿を思い出します。
色違いを巻いて、忙しそうに動いていた、あの穏やかな時間を。

義母の優しさに、今になってあらためて感謝しています。

【体験者:40代・筆者、回答時期:2026年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:大空琉菜
受付職を経て、出産を機に「子どもをそばで見守りながら働ける仕事」を模索しライターに転身。 暮らしや思考の整理に関するKindle書籍を4冊出版し、Amazon新着ランキング累計21部門で1位に輝く実績を持つ。 取材や自身の経験をもとに、読者に「自分にもできそう」と前向きになれる記事を執筆。 得意分野は、片づけ、ライフスタイル、子育て、メンタルケアなど。Xでも情報発信中。

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