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通説「泣くとスッキリする」は本当か、検証した結果

  • 2026.3.31
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

つらいことがあったとき、「思いきり泣けばスッキリする」と言われることがあります。

映画を見て涙を流したあと、どこか気持ちが軽くなったように感じた経験がある人も多いでしょう。

しかし、この“泣くと気分がよくなる”という通説は、本当にどんな場面でも当てはまるのでしょうか。

この疑問に正面から挑んだのが、オーストリアのカール・ランドシュタイナー大学の研究チームです。

調査の結果、「泣けば必ずスッキリする」わけではなく、その効果は涙を流す理由によって大きく左右されることが明らかになりました。

研究の詳細は2026年2月25日付で心理学誌『Collabra: Psychology』に掲載されています。

目次

  • 日常の中で「涙」と「気分」を追跡する
  • 「泣けばスッキリ」は半分正しく、半分間違い

日常の中で「涙」と「気分」を追跡する

これまでの研究では、実験室で涙を誘発したり、過去の体験を思い出してもらうアンケートが主流でした。

しかしこうした方法では、実験という特殊な環境が影響したり、記憶の曖昧さによって正確な感情が再現できなかったりする問題があります。

そこでチームは、より現実に近い方法として「経験サンプリング法」を採用しました。

これは日常生活の中でリアルタイムに出来事や感情を記録していく手法です。

具体的には、106人の成人(主にオーストリアとドイツ在住の女性、平均年齢約29歳)に専用のスマートフォンアプリを使ってもらい、4週間にわたって涙と感情の変化を記録しました。

参加者は泣いた直後に、涙のきっかけ、強さ、持続時間、そしてその時点でのポジティブ感情とネガティブ感情を入力します。

さらに15分後、30分後、60分後にも通知が届き、同様の感情評価を行いました。

また、記録漏れを防ぐために毎晩のアンケートも実施され、その日の涙と全体的な気分が補足的に記録されています。

この結果、涙は非常に一般的な行動であることが改めて確認されました。

参加者の約87%が少なくとも一度は泣いており、4週間で平均約5回の涙が報告されています。

女性は男性よりも頻繁に、かつ強く長く泣く傾向がありました。

涙の原因として最も多かったのは映画や映像などのメディアでしたが、孤独感や精神的な圧迫感による涙はより強く、平均11〜13分と長く続く傾向が見られました。

「泣けばスッキリ」は半分正しく、半分間違い

では肝心の「泣いた後の気分」はどう変化したのでしょうか。

研究の結果、最も重要なポイントは「涙の原因によって結果がまったく異なる」という点でした。

まず、孤独や圧倒されるようなストレスといった“自分自身の苦しみ”から生じた涙は、意外にも気分を改善させるどころか、ポジティブ感情を大きく下げ、ネガティブ感情を強める傾向がありました。

しかもその影響は短時間では消えず、1時間後でもポジティブ感情は通常より低いままでした。

さらに、その日の気分全体にも悪影響を及ぼすことが確認されています。

一方で、映画やドラマといったメディアによる涙は、異なるパターンを示しました。

泣いた直後にはポジティブ・ネガティブ双方の感情がいったん低下しますが、その後ネガティブ感情が徐々に減少していきます。

これは、いわゆる「感動して泣く」体験が、時間をかけて心を落ち着かせる可能性を示唆しています。

また、誰かの親切に触れて涙するような「心が通い合う瞬間の涙」は、直後には変化がないものの、約15分後にはネガティブ感情が大きく減少するという特徴がありました。

さらに、無力感からの涙は一時的にポジティブ感情を下げるものの、15分程度で元の状態に回復することがわかりました。

このように、涙は一括りに「ストレス解消になる」とは言えず、むしろその背景にある心理状態が結果を決定づけているのです。

「泣くこと」よりも「なぜ泣いたか」が重要

今回の研究は、「泣くことそのもの」が感情を改善する万能な手段ではないことを示しています。

むしろ重要なのは、どのような状況で、どのような感情から涙が生じたのかという点です。

私たちはつい、「泣けばスッキリする」と単純に考えがちです。

しかし実際には、涙は万能の解決策ではなく、ときに気分をさらに落ち込ませることもあります。

泣いてスッキリしたいときは、感動的な映画やドラマを見ることがいいようです。

参考文献

Does crying actually make you feel better? New psychology research shows it depends on a key factor
https://www.psypost.org/does-crying-actually-make-you-feel-better-new-psychology-research-shows-it-depends-on-a-key-factor/

元論文

Effects of Crying on Affect: An Event-based Experience Sampling Study of Adult Emotional Crying
https://doi.org/10.1525/collabra.157541

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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