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森をのぞむ台所。窓から見える四季の移ろいが、家事の支えに。

  • 2026.3.30
台所の大きな窓の先に森が広がる。「この緑を見ているだけで心が休まる」と田原奈緒美さん。この日は、右奥に特別天然記念物のニホンカモシカが姿を現した。
台所の手前に設えたダイニングテーブルでは、子どもたちが折り紙を折ったり絵を描いたりすることも多い。椅子は10年以上前から使っている飛驒産業〈cobrina〉シリーズ。

夏の緑、冬の銀世界。森と台所を繋ぐ大きな窓に癒やされる。

弁柄塗りの朱がうっすら残る、堂々たる古民家に住む田原奈緒美さん。パートナーの仕事で名古屋やベトナムで暮らしたあと、実家のある飛騨高山の宇津江地区に移住した。

「もともと新しい家よりも古い家が好きで、地元の大工さんが手がけた建物などを見て、こんなところに住みたいと思いました。古材など、あるものを生かすものづくりにとても共感したんです」

玄関を入ってすぐの土間に、主宰する『think』の物販スペース。小上がりを上がると、視線の先に緑を切り取ったような大きな窓がある。

「窓の外は丘で、その先は森。この家の改築をするにあたり、この裏は森だから台所仕事をしながら眺められるようにと、大きな窓を大工さんが提案してくれました」

窓の下には、シンクなど水回りを配置し、その手前には壁の真ん中をくりぬくような形で大きなテーブルが設えられている。

「食卓とキッチンを近くにしたかった。ひとりで料理を作るのは寂しいから、子どもたちが遊んでいる気配を感じ取れたり、料理に参加しやすい台所がいいなと思っていました」

野菜をたっぷり食べる食生活を送る田原さん。自家栽培の茄子に近隣の農家が自然農法で育てたミニトマト。
テーブルの下のスペースに棚を付けて器などを収納。オープンラックで取り出しやすい。収納もすべて大工の渡邊覚さんの手によるもの。手ぼうきにはりみ(ちりとり)を愛用。
鍋に野菜を重ねて入れたら、咲那ちゃんも一緒に仕上げの塩をぱらり。
昼食は、栗ご飯に野菜の重ね蒸しの味噌汁。醤油麹で味付けしたひよこ豆とじゃがいものトマト煮。味噌は冬に1年分を仕込むという。

そのほか田原さんが希望したのは、掃除がしやすいように凹凸をなくすことと、プラスチックはなるべく使わないということ。収納については、「物を多く持ちたくない。それは自分が管理できないとわかっているから(笑)。だから、ぱっと見てどこに何があるかすぐわかるようにオープンなつくりにしてもらいました」。

今日は6歳の咲那ちゃんが台所仕事のお手伝い。野菜の重ね蒸しに自家製味噌を入れた味噌汁と栗ご飯が献立だ。シンクの前にベンチをセットして膝立ちになり、小さな手で包丁を握って野菜をトントン切っていく。そのそばで、窓の外を眺めながら田原さんは言う。

「この景色だけでほかに飾りも何もいりません。これからこの緑は紅葉して、冬になったら子どものソリの跡と動物の足跡だけが残る、辺りいちめん真っ白な世界。薪ストーブの炎が反射して映るのもきれいなんです。こんな贅沢なことはないなと思って台所に立っています」

土中の微生物を利用したコンポスト、キエーロを愛用。ポットの生ゴミはキエーロに入れて有機物豊富な土に再生する。
野田琺瑯の小さな蓋付きポットを生ゴミ入れに。水気をきって入れれば臭うこともなく、容量もたっぷりで使いやすい。
食器洗いはびわこふきんと石鹸を使用。シンクに張り付かないよう石鹸の裏に瓶の蓋を仕込んで浮くように工夫している。
台所と食卓が近接して料理する人を孤立させない間取り。正面からは見えないスペースに冷蔵庫とパントリーが設置されている。
出典 andpremium.jp
田原奈緒美『think』店主

2024年、自宅の土間スペースに暮らしを豊かにする日用品と量り売りの店『think』をオープン。ゴミや無駄を減らすゼロ・ウェイスト活動も実践中。

photo : Yoichi Nagano text : Yuko Ota

 

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