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踏み込みたいけど、踏み込めない。民生委員として母子と関わる上での葛藤【著者インタビュー】

  • 2026.3.29

【漫画】本編を読む

「お母さんと2人でお父さんから逃げてきてん」。小学生の時、複雑な環境で育つ同級生・ナルミと仲良くなったカヨコ。しかしナルミは突然いなくなってしまう。大人になり、民生委員という地域を見守るボランティアとして活動するカヨコの前に、18歳の母親・アカネが現れる。アカネはナルミに瓜二つ。カヨコはアカネにナルミを重ね、民生委員の仕事範囲以上に彼女を助けようと奮闘する――。

自身も民生委員、そして子育て世代に特化した支援を行う主任児童委員として活動するきむらかずよさんが描く『その叫びは聞こえていたのに 消えた母子をめぐる物語』(KADOKAWA)。無縁社会に落ちてしまった母と子どもを描いたセミフィクションエッセイだ。孤立した母親が育児困難に陥り、育児放棄・虐待などの事件を起こしてしまう場合もある。本作はそんなきっかけにもなり得てしまう、子育て中特有の孤独や不安に焦点を当てた一冊。本作について、民生委員として見つめてきた社会から孤立した子育てについて、著者であるきむらさんに話を伺った。

※この記事は虐待に関する内容を含みます。ご了承の上、お読みください。

――カヨコはきむら先生と同じく民生委員として活動していますが、民生委員として以上の関わりをアカネと持つようになります。これはご自身としては「カヨコと同じように関わったらやり過ぎだな」と思いながら描いたのか、本当はこれぐらい関わりたいけど実際はできないからお話の中だけでも、という想いで描いたのかどちらでしょうか?

きむらかずよさん(以下、きむら):両方ありますね。私自身、活動をしている中で、「もっと踏み込みたいけど、踏み込み過ぎたら相手に嫌な思いをさせてしまうかもしれない」と思って二の足を踏む時があります。自分と同じような悩みを抱えておられると思っても、相手がそれを言ってきた場合は答えることができるけど、こっちから「悩みがあるでしょ」と言うことはできないんですよね。本当はその一歩が必要な時もあると思うのですが、判断が難しいです。

――ボランティアだからこそ、なかなか難しいお仕事ですよね。

きむら:この本を読んだ方に「民生委員ってどういうメリットがあってやってるの?」と言われたことがありまして。そこまで踏み込む意味はあるのかと。母にも「自分の子育てもままならへんのに、なんでそんな子育て支援とかボランティアをするんや」と言われたこともあります。私自身ひとりでは子育てできなかったなと思うんです。いろんな方に助けられて子育てしてきたので、ある程度子どもたちが大きくなった今、自分がやってもらったことの恩返しができたらなという気持ちです。

――アカネが児童相談所に通報されて子どもと引き離されてしまったシーン。カヨコは「こうなる前にもっとできることがあったのでは」とすごく負い目を感じた描写になっていました。きむら先生としてはどう考えていましたか?

きむら:アカネはああいう形でしか支援と繋がることができなかったのではないかなと思います。本人は支援が必要な状態であることに気づいていなかったし、カヨコの「母子支援施設に行ってみては」という提案も受け入れられていなかったですよね。カヨコの気持ちも理解できますが、部屋がすごく散らかっていたり、子どもをお風呂にあまり入れていないからあせもだらけだったりというところを見ると、あのままではよくない。児童相談所と繋がることで、子どもを健康で安全な状態で育てるためにはどうすればいいのかアカネも理解できるようになると思っています。

取材・文=原智香

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