1. トップ
  2. 恋愛
  3. 3年経っても終わらない「産後うつ」。妊活を諦め仕事へ全振りを決意した矢先に妊娠した女性。母親としての葛藤を描いたヒューマンドラマ【書評】

3年経っても終わらない「産後うつ」。妊活を諦め仕事へ全振りを決意した矢先に妊娠した女性。母親としての葛藤を描いたヒューマンドラマ【書評】

  • 2026.4.16

【漫画】本編を読む

『もう3年、産後うつ。 消えたい衝動から抜け出せない』(青柳ちか/KADOKAWA)は、産後うつに苦しむ母親の葛藤を、本人の視点で赤裸々に描いたヒューマンドラマだ。産後の喜びと不安、そこから抜け出せない心の闇が紡がれていく。

主人公は、5年続けた不妊治療に終止符を打ち、仕事に邁進しようと決めたちはる。大きな仕事のプロジェクトリーダーを任され、これからという時に妊娠が発覚。嬉しい気持ちのなかに「なぜ、今……」という小さな罪悪感が入り混じり困惑する。出産後は育児と仕事の両立を目指したものの、思ったようにうまくいかない日々に苦しむ。娘が生まれてから3年経っても「産後うつ」に苦しんでいた。

物語は、出産前に生き生きと働く自分を回想し、生まれたばかりの子どもに「ごめんね」と謝る彼女の姿から始まる。育児の不安、仕事に復帰できない焦り、そして自分の感情が以前と同じではないという戸惑い——。わが子を愛おしく思えない自分への怒りや罪悪感など、すべての感情が詰め込まれた「ごめんね」だ。「普通なら」喜びに満ちているはずの瞬間に不安や虚無感が入り混じり、「普通なら」ということへの葛藤もまた、彼女を苦しませる。産休中に夫が働きに出る姿をうらやましく感じたり、実家の居心地の悪さから里帰り出産を拒絶したりと、母親になることに伴う孤独や葛藤がリアルに描写される。

また、周囲の無理解も物語に影を落とす。「育児は幸せなもの」「子どもをかわいいと思えないなんておかしい」といった社会の圧力が、産後うつの苦しみをさらに増長させてしまうのだ。ちはるが「光」を見出し、再び自分の人生を取り戻していけるのか。最後まで見届けてほしい。

本作は「産後うつ」という心の状態を当事者の目線から理解させてくれる貴重な作品だ。ワンオペ育児の実態を暴く作品は数あるなか、産後うつに対して周囲の理解と支援が重要であることを伝えるものは多くない。本書が問いかけるテーマは、多くの母親たちに勇気を与えてくれるはずだ。

文=富野安彦

元記事で読む
の記事をもっとみる