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南極の「血の滝」のメカニズムを解明

  • 2026.3.27
血の滝 / Credit:Wikipedia Commons

南極大陸のヴィクトリアランドには、氷河から血が流れているような現象が見られます。

この「血の滝」のメカニズムは長年謎のままでした。

今回、アメリカ・ルイジアナ州立大学(LSU)などの研究チームは、氷河の動き、血の滝の流出、近くの湖の変化を同時に観測することで、この奇妙な現象の仕組みに迫りました。

研究の結果、血の滝は氷河の下にある高圧の塩水が外へ放出される現象だと考えられることが示されました。

この研究は2026年1月13日付の学術誌『Antarctic Science』に掲載されました。

目次

  • 南極の「血の滝」とは?研究者たちが重要な変化を観察
  • 血の滝は氷河下の圧力変化を示すサインだった

南極の「血の滝」とは?研究者たちが重要な変化を観察

「血の滝」とは何でしょうか。

この現象は南極のテイラー氷河の末端で見られ、氷の白い表面に赤い液体が流れ出るというものです。

しかしこれは本当の血ではなく、鉄を多く含む塩水が空気に触れて酸化し、赤く見えている現象です。

ここで最大の謎だったのは、「なぜこの液体が流れるのか」という点でした。

南極のような極寒の環境では、水は普通なら凍ってしまいます。

ところが血の滝では、液体がときどき外へ流れ出てきます。

しかも、いつも流れているのではなく、ある時期にまとまって現れるため、その仕組みやタイミングは長くはっきりしていませんでした。

これまでの研究では、テイラー氷河の下に非常に塩分の高い塩水があり、それが流れる地下の通り道もあると示されていました。

塩分が高い水は凍りにくいため、極寒の南極でも液体として残ることができます。

ただ、それだけでは「なぜ急に流れ出すのか」は説明しきれませんでした。

そこで今回の研究では、複数の観測方法を組み合わせて、血の滝が現れる瞬間に何が起きているかを調べました。

研究チームはまず、氷河の表面に設置したGPSで、氷河の高さや移動速度の変化を測定。

次に、定点カメラで血の滝の流出がいつ起きたのかを記録しました。

さらに、氷河の前にあるボニー湖では、水深ごとの水温を温度センサーで連続測定しました。

こうして、氷河の動き、血の滝の流出、湖への影響を同時に見られるようにしたのです。

そして2018年、これらの観測が重要な出来事をとらえました。

血の滝の流出が始まった時期に合わせて、氷河の表面が約15ミリ低くなり、氷河の移動速度もおよそ10%下がっていました。

さらに、湖の深い場所では急に水温が下がる異常も記録され、冷たい塩水が流れ込んだことが示されました。

つまり、血の滝の流出、氷河の沈下、氷河の減速、湖の変化が同じ時期に起きていたのです。

では、なぜこうしたことが同時に起きたのでしょうか。

血の滝は氷河下の圧力変化を示すサインだった

今回の研究から見えてきたのは、血の滝が単なる表面の不思議な現象ではないということです。

むしろ、氷河の下で起きている塩水の動きと圧力変化が、地表に現れたサインだと考えられます。

テイラー氷河の下には、非常に塩分の高い塩水がたまっており、それが地下の通り道を通って移動していると考えられています。

氷河は非常に重いため、その下にある塩水には強い圧力がかかります。

氷河がゆっくりと前進するにつれて圧力が高まると、地下の通り道が一時的に開き、塩水が外へ流れ出すことがあります。

血の滝は、その放出が地表に現れた現象だと解釈できます。

このとき氷河そのものにも変化が起きます。

塩水が外へ出ると、氷河の下でそれまで働いていた水圧が弱くなります。

すると、下から支えられる力が少し弱まり、氷河の表面がわずかに沈みます。

今回記録された約15ミリの沈下は、その変化をとらえたものと考えられます。

さらに、氷河の底にある水は、氷河が滑るのを助ける役割も持っています。

底に水があると摩擦が減って滑りやすくなりますが、水が減ると摩擦が増え、氷河の動きは遅くなります。

実際、今回の観測では氷河の速度がそれまでよりも遅くなっていました。

これも、地下の塩水が抜けたこととつながっていると考えられます。

また、湖の深い場所で水温が下がったことも重要です。

研究者らは、この変化が地下の塩水の流入と対応していると考えています。

つまり、血の滝として表面に出てきた分だけでなく、氷河の前の湖にも塩水が流れ込んでいた可能性が高いのです。

こうして見ると、血の滝は氷河だけの現象ではなく、周囲の湖の環境ともつながった出来事だと分かります。

この研究の意義は、極寒の南極でも、氷河の下に動く液体と圧力変化の仕組みがあることを、複数の観測でそろって示した点にあります。

論文でも、今回の同期した記録は、氷河下の塩水排出イベントをとらえた珍しい証拠だと位置づけられています。

ただし、観測は主に2018年の1回の出来事を中心としており、こうした放出がどれくらいの頻度で起きるのかまではまだ分かっていません。

今後は、より多くの地点で長期的な観測を続ける必要があります。

参考文献

New Study Finally Reveals the Mystery of Antarctica’s Bleeding Glacier
https://www.zmescience.com/science/news-science/new-study-finally-reveals-the-mystery-of-antarcticas-bleeding-glacier/

元論文

Glacier surface lowering and subglacial outflow coincide with Blood Falls discharge in the McMurdo Dry Valleys
https://doi.org/10.1017/S0954102025100527

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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