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コーヒーで旅する日本/関東編|ここは“テメェ”のコーヒーが見つかる場所。おもしろさ、驚きにあふれたコーヒースタンド「テ」

  • 2026.3.25

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも関東エリアは、伝統的な喫茶店から最先端のカフェまで、さまざまなスタイルの店が共存する、まさに日本のコーヒー文化の中心地。

東京をはじめ、関東近郊にある注目店を紹介する当連載。焙煎士や店主たちが教える“今、注目すべき”ショップをつなぐ、コーヒーリレーの旅へ。

【写真】店はコワーキングコミュニティ「MIDORI.so NIHONBASHI」の1階。施設利用者も多く集まる場所
【写真】店はコワーキングコミュニティ「MIDORI.so NIHONBASHI」の1階。施設利用者も多く集まる場所

第18回は東京都中央区にある「テ」。店主・ヒロさんが展開するブランド「テメェコーヒー」の実店舗として、2025年6月にオープンしたコーヒースタンドだ。コーヒーに加え、お酒やお菓子、アートまで楽しめる同店はカフェとしてだけでなく、バーでもあり、ギャラリーでもあるという多彩な側面を持ちながら、人々が集いコミュニティを広げる場として活躍している。

“テ”や“テメェ”という一瞬「え!?」と驚くような斬新な名前だが、そこに込められた思いを知ると、コーヒーなどのおもしろさを追求するヒロさんの魅力に触れられる。

店主・バリスタのヒロさん。自身のブランドでセミナーを開催※予約制。詳細は「テメェコーヒー」のInstagramをチェック
店主・バリスタのヒロさん。自身のブランドでセミナーを開催※予約制。詳細は「テメェコーヒー」のInstagramをチェック

Profile|ヒロ

東京都足立区生まれ。都内のカフェ・バーに勤め、コーヒーやお酒の技術を学ぶ。2020年に独立し、フリーランスのバリスタに。同時に自身のブランド「テメェコーヒー」を立ち上げ、ハンドドリップのセミナーをメインに日本各地のフェスやイベントへの参加、グッズ販売などを通してコーヒーの魅力を伝える。2025年6月に実店舗「テ」を開業し、活動の幅をさらに広げている。

ロジカルに紐解くコーヒーのおいしさ

コーヒー×お酒のメニューも人気で、昼飲みや夜のバー利用にもおすすめ
コーヒー×お酒のメニューも人気で、昼飲みや夜のバー利用にもおすすめ

ヒロさんがコーヒーに携わるきっかけは、従兄弟が経営するカフェ・バーに勤務しはじめたことから。

「もともとは特にコーヒー好きではなかったんですけど、従兄弟のお店で飲んだ浅煎りのスペシャルティコーヒーのおいしさに衝撃を受けて、おもしろいと思ったんです。それでコーヒーに興味を持って、従兄弟が経営する東中野の『COFFEE BAR GALLAGE(コーヒー バー ガレッジ)』と、神保町の『GLITCH COFFEE&ROASTERS(グリッジ コーヒーアンドロースタリーズ)』に入ることに。2店を掛け持ちしながらコーヒーの基礎を学び、特に『ガレッジ』はお酒のつくり方まで知れたので、今のお店のスタイルのもとになっています。お酒やコーヒーを作るのは楽しいし、好きだし。ここから一気にのめり込んでいきましたよ」

コーヒーの味比べをすることもしばしば。運がよければ豆や淹れ方による味の違いを試せる
コーヒーの味比べをすることもしばしば。運がよければ豆や淹れ方による味の違いを試せる

最初は何気なく入ったが、日々コーヒーとお酒に触れるなかで、その奥深さに魅了されていたヒロさん。店ではコーヒーの基礎や先輩方のよいところを学びつつも、つくり方に関してはほぼ独学だったという。

「昔から“なんで”を考えるのが好き。コーヒーやお酒についても同じで、そんなロジカルな性格が幸いして、つくり方などを研究をし続けています。たとえばコーヒーだとお湯の温度、豆の種類や挽き方によって変わる味の違いを何度も試したり。細かく調整しながら、つくりあげていくのが楽しくて」

豆やグッズの販売も行う。「テ」のイラストはシンプルでもインパクト大
豆やグッズの販売も行う。「テ」のイラストはシンプルでもインパクト大

カフェ・バーに約6年間勤め、2020年に独立してフリーランスのバリスタに。自身のブランド「テメェコーヒー」を立ち上げ、現在もさまざまな活動を行っている。そのなかでメインにしているのがハンドドリップのセミナーだ。きっかけはカフェ・バー勤務時代、「どうやったら、家でおいしいコーヒーが淹れられるの?」というお客さんからの質問。

「おいしく淹れると言っても、豆からドリッパー、ペーパーなどが人それぞれ違うので一概に言えないのが事実。そこで、セミナーでは基本的にマンツーマンで、その人に最適なアドバイスをしています。味の好みから飲む時間帯にいたるまで細かく聞き、家での再現度を限りなく高められるように器具は自宅から持参してもらって。コーヒーを広めたいという思いもありますが、なにより『今日もおいしく淹れられたな』と思ってもらうための手助けをしたい、それがブランドのはじまりです」

ブランドには「テメェの(好きな)コーヒーはテメェで淹れろ」というテーマがある。一見、乱暴な印象だが、自分でおいしいコーヒーが淹れられる「幸せ」を感じてほしいという優しさが込められている。そして自身のブランドの活動を通して多くの人たちに出会ったことは、後の「テ」の開業にも通じる。

壁面に並ぶアート作品も見どころ。作品は約1カ月ごとに変わる
壁面に並ぶアート作品も見どころ。作品は約1カ月ごとに変わる

ほかにもフェスやイベントへの出店、ケータリングや店舗立ち上げ、スタッフの研修などを行い、2025年6月からは「テ」の店舗運営と「テメェコーヒー」の活動の幅はさらに拡大。

「そもそも店を持つことは考えていなかったんですが、自分の活動のなかで弟子が増えたことがきっかけ。弟子たちはコーヒーを学び、それぞれで活動をはじめるんですが、そこでうまくいかずに苦しんでいる人も多かった。そこで彼らの居場所をつくってあげられたら、と店舗を構えることにしたんですよ」

「開業するにあたって、お店をコミュニティの場にしたいという思いもありました。多くの人が交わる空間が好きで、正直なところ、そこには何があってもいい。古着でもお酒でも絵でも。そこでコーヒーやお酒ってツールとして便利だし、今までの経験もあってよいものが出せて、コミュニケーションがよりよくなると思ったんです。そしてお店は“私の”ではなく、スタッフや訪れた人たち“みんなの店”という位置付け。ちなみに『テ』は、テメェのテ、手仕事のテなどいろんな意味を込めて命名しました。これを見た人が『え?』と引っかかるのも狙いというか、そこから興味を持ってほしいです」

豆や人で異なる味わいを楽しむ

「テ」とは別に「テメェコーヒー」の豆も常時14種類ほど並ぶ。自家焙煎の豆やヒロさんおすすめのロースターの豆もそろう
「テ」とは別に「テメェコーヒー」の豆も常時14種類ほど並ぶ。自家焙煎の豆やヒロさんおすすめのロースターの豆もそろう

「テ」では6〜7種類の豆が置かれ、2週間ごとに1つずつ豆が入れ替わる。コロンビアの農園に出向くなど、豆選びからこだわり抜くのもポイントだ。そして生豆の選び方には独自の3つの基準がある。

「1つ目は発酵のさせ方がクラシック。いわゆる定番のものでコーヒーらしく、フルーティーな風味が特徴です。次は品種。クラシックな豆からさらに厳選しているので、それぞれの豆が持つ味が重なって深く、ボリュームがあるものになります。最後はイノベーティブ。簡単にいうとインパクトのある豆。たとえばフルーツジュースに漬け込んだり、乳酸菌を使っていたり、珍しいものばかりで強い甘さ、濃密な香りなどとにかく特徴が強い。よい意味でコーヒーらしくないので、コーヒー自体が苦手な人でもとっつきやすい。コーヒーの入口としておもしろい豆ですね」

3月開始予定の朝営業(8時〜)も楽しみ!モーニングコーヒー1杯400円を販売予定
3月開始予定の朝営業(8時〜)も楽しみ!モーニングコーヒー1杯400円を販売予定

「焙煎機は『aillio BULLET』で、基本的に浅煎り。心がけているのは、ちょうど“真ん中”の焼き方でバランスよく仕上げることです。豆ごとに違いますけど、華やかさ、フルーティーさを引き出しつつ、甘さやボディ感もしっかり感じられるように。そして飲んだあとに味の余韻が長く残るように焼いています。浅煎りの範囲内でも、生焼けにならないように“ちゃんと焼く”ことも大事。豆が生焼けだと苦味や渋みといった悪い部分が出て、抽出ではどうしようもなくなってしまうんですよね。仮に抽出でうまく悪い部分が隠せても、それ以上のおいしさにはつながらないので焼き方はとても重要です」

「COLOMBIA QUINDIO CAMPO HERMOSO CATURRA(コロンビア キンディオ カンポ エルモソ カトゥーラ)」(1600円)
「COLOMBIA QUINDIO CAMPO HERMOSO CATURRA(コロンビア キンディオ カンポ エルモソ カトゥーラ)」(1600円)

「ハリオV60」はヒロさんが使うドリッパーだが、店にはヒロさん含め、4人のスタッフが在籍し、それぞれが愛用のドリッパーで抽出する。これは自身のブランド「テメェコーヒー」に縛られず、スタッフ一人ひとりの色を出してほしいという思いから。“みんなの店”とする「テ」ならではの考え方であり、同じメニューでも4タイプのコーヒーが存在するという大きな魅力を生み出している。

ヒロさんが淹れるコーヒーはバランスがよく、安定感がある。細かい豆のグラム数やお湯の温度などきっちり測って、いつでも同じようにブレない味を重視。さらに長く楽しめるというのもポイントで、時間が経って冷めたり、アイスの氷が溶けても、えぐみや渋みが出ないように丁寧に仕上げられている。

「CAFE CON CERVEZA」(1,100円)。赤星ビール&フルーティーなコーヒーの、意外でおいしい組み合わせ
「CAFE CON CERVEZA」(1,100円)。赤星ビール&フルーティーなコーヒーの、意外でおいしい組み合わせ

23時まで営業するため、夜のバー利用にも最適。そこで人気なのがコーヒーカクテルだ。ビールとの組み合わせのほか、豆を漬け込んだジン、ウイスキー、焼酎などがあり、コーヒーのフルーティーさや甘さはお酒との相性も抜群。話題性もあり、語らいのお供にぴったりな一杯だ。

豆を選ぶときにも愛用のドリッパーなどからセレクトしてくれる。店内ではコーヒーに合う焼き菓子も並ぶ(チョコクッキー300円など5種類ほど)
豆を選ぶときにも愛用のドリッパーなどからセレクトしてくれる。店内ではコーヒーに合う焼き菓子も並ぶ(チョコクッキー300円など5種類ほど)

ヒロさんは最後にこう述べた。「昨今のブームでカフェやロースターが増えて、さまざまなコーヒーが出回っていますが、そのよし悪しの判断は難しいと思う。そんななかでコーヒー好きやこれからコーヒーを楽しむ人など、多くの人に本当のおいしさを伝えていきたいですね」

ヒロさんは今もセミナーの実施や各地のフェスなどに参加しながら、コーヒーのおいしさを伝える活動を続けている。おいしさを知るためには「何がおいしくないか」を知ることが重要であり、“ダメ”を省くことで、結果的に本当のおいしさにつながるのだとか。そんなヒロさんの研究から導き出したコーヒー論を聞いてみるのもおもしろいかもしれない。

ひと際目立つ水色の建物が目印。3月以降にはECサイトでの豆の販売も予定
ひと際目立つ水色の建物が目印。3月以降にはECサイトでの豆の販売も予定

【ヒロさんレコメンドのコーヒーショップは「unplugged coffee stand」】

「品川区東大井にある『unplugged coffee stand(アンプラグド コーヒー スタンド)』。お店の立ち上げやトレーニングに携わったほか、一緒にコロンビアの農園にも行くなど、オーナーの前田さんとは10年来の仲。ニューヨーク好きな前田さんがつくり出す空間で、おいしいコーヒーとスイーツを楽しんでください」(ヒロさん)

【「テ」のコーヒーデータ】

●焙煎機/aillio BULLET (アイリオブレット)1キロ(電気釜)

●抽出/ハンドドリップ(ハリオV60 01サイズ)エスプレッソ(マルゾッコ)※ドリッパーはスタッフにより異なる

●焙煎度合い/浅煎り

●テイクアウト/あり(700円〜)

●豆の販売/100グラム1400円〜

取材・文/GAKU(のららいと)

撮影/大野博之(FAKE.)

※20歳未満の者の飲酒は法律で禁じられています。

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