1. トップ
  2. 口座解約を希望する女性「もう使わないので…」→よくある理由だけど…銀行員が“違和感を感じた”ワケ

口座解約を希望する女性「もう使わないので…」→よくある理由だけど…銀行員が“違和感を感じた”ワケ

  • 2026.5.3
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。くまえり銀行員です。
今日は、窓口業務の中でも今でも強く印象に残っている、「一見すると普通の手続き」の裏側で起きていた出来事についてお話ししたいと思います。

銀行の窓口には、毎日さまざまなお客様が来店されます。

入金、振込、住所変更、口座解約。どれも日常的な手続きです。だからこそ、“違和感”はとても小さな形で現れます。

その日も、始まりはごく普通でした。

「急いで口座を解約したい」──違和感の始まり

平日の午後、一人の女性が窓口を訪れました。

「この口座、今日中に解約したいんです。急いでいます」と。焦った様子ではありましたが、決して怒っているわけではありません。

手続き自体は、特段珍しいものではありません。私はいつも通り、ご本人確認書類を拝見し、解約の理由を軽くお伺いしました。

返ってきたのは「もう使わないので……」という、少し曖昧な答え。ここまでは、よくあるやり取りです。

しかし、次の瞬間にいくつかの小さな違和感が重なりました。

銀行員が気づく“危険サイン”

窓口では、お客様の様子からいくつかのポイントを自然に観察しています。

解約理由が具体的でないことや、手続きを異様に急いでいる様子。また、スマートフォンを頻繁に確認し、誰かと熱心にメッセージをやり取りしている姿や、大金の移動予定がある場合などは注意が必要です。

その女性は、手続き中も何度もスマホを見ていました。まるで「指示を待っている」かのようなその仕草に、私の頭には投資詐欺やロマンス詐欺の可能性が浮かびました。

銀行員が引き止めた「たった一つの質問」

銀行ではお客様の意思を尊重するのが原則であり、正当な手続きを止める権限はありません

それでも私は、最後に一つだけ質問をしました。「今回のお金のご利用先は、ご自身で直接会ったことのある方ですか?」

女性の手が止まりました。少しの沈黙のあと、彼女は「……実は、海外にいる方で。まだ会ったことはなくて」と答えたのです。その瞬間、私は確信に近いものを感じました。

ロマンス詐欺では、SNSで知り合って投資話を持ちかけられ、信頼関係を築いたあとに送金を促されるという流れが非常に多いからです。

私は事実だけを、静かにお伝えしました。 「最近、同じようなケースで被害が増えています。もしよければ、一度だけ確認してみませんか」

“理不尽”に見える確認作業の本当の意味

銀行の確認は、ときにお客様から「疑われている」「手続きが面倒」「早くしてほしい」と思われてしまうことがあります。しかし、私たちの目的はただ一つ、お客様の資産を守ることです。

詐欺被害の多くは、送金したあとに連絡が途絶えたり、出金できないと言われたり、あるいは新たな手数料を要求されたりして初めて気づくものです。

そして被害に気づいて窓口に戻ってこられたとき、私たちができることはほとんど残っていません。だからこそ、“送る前”の数分が何よりも重要なのです。

その後、女性が選んだ行動

私は無理に止めることはせず、情報提供だけを行いました。女性はその場で家族に電話をかけ、しばらく話したあと、静かに「今日は解約をやめます」とおっしゃいました。

後日、その方が再来店され、「あのとき聞いてくれてよかったです。詐欺でした」と教えてくださいました。

窓口業務の中では派手な出来事ではありませんが、私にとって忘れられない瞬間となりました。

読者の方へ:詐欺を避けるためのチェックポイント

もし次の特徴に当てはまる場合、一度立ち止まってください。

要注意サイン

・会ったことのない相手から投資を勧められる
・「今だけ」「急いで」と判断を急がされる
・家族や銀行に相談しないよう言われる
・海外口座・暗号資産への送金を求められる
・利益保証のような説明がある

一つでも当てはまれば、第三者に相談することが重要です。銀行員の質問は、手続きを妨げるためではありません。
経験上、「危険かもしれない」と感じたサインがあるからです。

銀行窓口の裏側で、私たちが見ているもの

窓口は単なる事務手続きの場所ではありません。そこには不安を抱えた人、焦りの中で判断している人、そして誰にも相談できず来店する人がいます。

私たちは書類だけでなく、その“状況”を見ています。たった一つの質問が、人生の大きな損失を防ぐこともある。それが銀行窓口のもう一つの役割だと私は思っています。

もし銀行で少し踏み込んだ質問をされたときは、「止められている」のではなく「守られている」可能性があることを思い出していただけたら嬉しいです。


ライター:くまえり銀行員
金融機関の窓口業務に携わり、日々さまざまなお客様対応を経験。忙しい日常の中で起こりがちな銀行手続きの行き違いやトラブルを、窓口の内側から見た視点で、読者に寄り添いながら伝えています。「知らなかった」が「なるほど」に変わる瞬間を大切に執筆中。  


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】