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NHKドラマで“気づいた人だけ”が震えた遊び心「クレジットに名前が」「もしかして」主人公のTシャツに隠された“豪華な仕掛け”

  • 2026.4.7
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NHK特集ドラマ『片想い』(C)NHK

NHK特集ドラマ『片想い』は、“想うこと”そのものをやさしく肯定する物語だ。芦田愛菜と岡山天音が紡ぐ、近くて遠い距離の感情。その繊細な関係性に甘酸っぱさを感じる一方で、視聴者の間ではある“違和感”も話題になった。クレジットに名前があった「細野不二彦」。そして、ヒロインが着ている“あのTシャツ”。一見ささやかな要素に見えるそれは、実は物語の核心に触れる仕掛けかもしれない。

※以下本文には放送内容が含まれます。

“片想い”を肯定する物語

芦田が演じる優衣は、長年片想いしてきた幼なじみ・健二(岡山天音)の帰郷によって、ふたたび感情を揺さぶられることになる。

舞台は盛岡。健二は東京へは戻らず、実家の豆腐店で働くことを選び、優衣もまたその店で働いていた。距離は近い。しかし、関係性は曖昧。「これって、まるでお嫁みたい!」と思わず勘違いしてもおかしくない状況である。実際のところ、優衣の言葉や態度には、期待と戸惑いが同居している。

岡田惠和の脚本は、恋愛の成就やドラマチックな展開を急がない。むしろ、言葉にしきれない感情や、宙吊りのまま漂う想いを丁寧にすくい上げる。片想いは報われないものではなく、すでに“成立している感情”なのだと、本作は静かに語りかけてくる。

芦田はその揺れを、過剰な表現に頼らず演じる。ほんのわずかな表情の変化や、視線の揺らぎによって、優衣の内面をにじませる。一方の岡山もまた、踏み込まない優しさを体現することで、関係の“進まなさ”に説得力を持たせている。ふたりの距離感が、この物語の温度を決定づけている。

矛盾を抱えたヒロイン?

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NHK特集ドラマ『片想い』(C)NHK

さらに優衣という人物を語るうえで欠かせないのが、本編で出てくる「ガンモちゃん」というあだ名だ。

豆腐店で働く彼女にとって、「がんもどき」から派生したこの愛称は、どこか子ども扱いされているような、くすぐったさと恥ずかしさを伴うものだろう。劇中でも彼女は、卸先の男性スタッフからこの呼び名を使われ、嫌がる素振りを見せる。

しかし、ここで興味深いのは、その一方で彼女が『GU-GUガンモ』のTシャツを着ているという点である。

平成や令和生まれの視聴者は、もしかしたら知らないかもしれない『GU-GUガンモ』。拒絶しているはずの名前と、それに紐づくキャラクターを身にまとうというアンバランスさこそが、優衣の感情の複雑さを物語っているようだ。

表向きには否定しながらも、どこかで受け入れてしまっている自分。この演出は、セリフではなく小道具によって心情を語る、極めて繊細な表現であるとも受け取れる。視聴者がふとした瞬間に「あれ?」と引っかかる遊び心だ。

クレジットが仕掛けた、もうひとつの物語

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NHK特集ドラマ『片想い』(C)NHK

その違和感の正体は、エンドロールに記された「細野不二彦」というクレジットである。SNS上でも「クレジットに名前が」「豪華ですね」「もしかして書き下ろし?」といった声が上がっていたが、このクレジットは単なる遊びではない。

細野不二彦は、『GU-GUガンモ』や『ギャラリーフェイク』などの作品で知られる漫画家であり、幅広いジャンルで人間の営みを描いてきた作家だ。その細野が関わっているという事実は、劇中に登場する“ガンモ”のモチーフに確かな裏付けを与える。

とくに注目すべきは、もちろん優衣のTシャツに描かれたイラスト。既存の流用ではなく、おそらくは本作のために用意されたビジュアルである可能性も考えられる。

さらに興味深いのは、細野作品に通底する“職人の仕事”へのまなざしだ。『ギャラリーフェイク』における美術の世界と同様に、本作でも豆腐作りという営みが丁寧に描かれる。日常にある技術と誇り。その積み重ねが、人の想いを支えている。

『片想い』は、恋の行方や登場人物たちの関係性だけを追っても、十分に心を動かされる作品だ。しかし、あらためて細部に目を向けたとき、この作品は別の顔を見せる。何気なく映るTシャツ。エンドロールに流れる名前。その一つひとつが、登場人物の感情や物語のテーマと結びついていることに気づいた瞬間、ドラマはもう一段階、深くなる。


NHK特集ドラマ『片想い』前編 3月26日(木)後編 3月27日(金)よる10時~
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_