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「新しい解釈」今までの映像化作品とは違う“ドラマ特有”の演出 初回放送から“衝撃のセリフ”が尾を引く【新・春ドラマ】

  • 2026.4.15
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(C)「惡の華」製作委員会 2026 (C)押見修造/講談社

「うっせえ、クソムシが」。やはり、あのが放つこのセリフの威力は絶大だった。テレビ東京にて放送中のドラマ『惡の華』は、押見修造による同名漫画が原作の作品だ。2013年にはテレビアニメ、2019年には映画と、たびたび映像化されてきた本作が、2026年ついにテレビドラマ化。春日高男を鈴木福が、本作の特徴の1つである唯一無二のヒロイン・仲村佐和をあのが演じている。

※以下本文には放送内容が含まれます。

鬱屈とした田舎で生きる男子中学生の窮地

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(C)「惡の華」製作委員会 2026 (C)押見修造/講談社

舞台は、群馬県桐生市。中学生の高男(鈴木福)は、山に囲まれた活気のない街に息苦しさを感じていた。そんな高男の心の拠り所は文学。シャルル・ボードレールの詩集『惡の華』がとくにお気に入りだった。

高尚な趣味を持っているという自負がある高男だが、中身は等身大の男子中学生だ。本を読む一方で、クラスのマドンナ的存在・佐伯奈々子(井頭愛海)に目を奪われる。体育の時間には、ブルマ姿に見惚れてしまう始末。

そんな理性で本能を押さえつけている高男は、窮地に立たされる。誰もいない教室で、佐伯の体操服に顔を埋めて、思い切り匂いを吸った姿と体操服を持ち去った姿を、仲村(あの)に見られてしまったのだ。

仲村から脅され、謎の契約を結ぶことに。高男にとってそれは悲劇の始まりだった。高男は仲村に翻弄される日々の中で、不本意ながら自己に向き合っていくことになる。

目が離せなくなる、あのの圧倒的な存在感

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(C)「惡の華」製作委員会 2026 (C)押見修造/講談社

第1話はなんといってもあのの魅力が爆発した回だった。仲村を正面から映す最初のカットで、下から舐めるように担任を睨む視線と、大きな抑揚を付けずに放たれた「うっせえ、クソムシが」というセリフ。あのの存在感と声が、場を掌握しているのが伝わってきた。

『惡の華』の仲村佐和は、前述した通り異質なヒロインだ。第1話終盤の高男を脅す場面では、急に声を荒げたり、笑みの混じった声色を出したりする様子が、実に不気味だった。セリフのインパクトに負けないオーラを放つあのが、なんとも魅力的だった。

原作や映画ではもっと淡々とした芝居で表現されていたが、ドラマではあえて仲村のおかしさを際立てているように見える。あのが演じるからこその、仲村佐和が出来上がっていると言えるだろう。むしろ、仲村を通してあのの演技力を世に放ちたいという意図すら感じられる。

SNSでは、「あのちゃんの魅力を撮るためにカメラが動いているみたい」「新しい解釈の仲村さんだと思う」など、ドラマならではの仲村像が好意的に受け止められているようだ。

本作は高男が自分の内面と向き合っていく物語でもある。第1話の時点で、高男は文学を愛し、好きな女の子を女神と評して崇める理性、好きな女の子への欲求を抑えきれない本能との間で揺れていた。そんな高男のアンビバレントな葛藤が、劇伴をピタッと止める演出による緊張と緩和で表現されていた。とくに、高男が体操服を嗅ぐ瞬間や仲村に差し出した詩集をはたき落とされるシーンでは、どこかコメディのような雰囲気が漂っており、高男の葛藤が何も特別なものではないことを、演出で皮肉っていたように見える。

仲村が引きずり出す自分の変態性と自己矛盾に、高男がどんな反応を見せるのか楽しみだ。


テレビ東京系 ドラマ『惡の華』2026年4月9日 毎週木曜深夜24時〜

ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
X(旧Twitter):@k_ar0202