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「ライトが暗いんです」配線を追って絶句…ヒューズが切れる車を襲った“一歩間違えれば大惨事”

  • 2026.5.17
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

「ヒューズがすぐ飛ぶから、容量を上げておきました」

一見、合理的な対処のように聞こえるかもしれません。しかしそれは、本来回路を守るはずのものを自ら壊している状態です。

今回ご紹介するのは、ヒューズ容量の変更によって重大トラブル寸前まで進行していた事例。現場でのやりとりを通して、その危険性と正しい対処について解説します。

「ライトが変なんです」その裏で起きていた異常

50代男性のお客様が「最近ライトの調子がおかしくて、たまに暗くなったりチラついたりするんです」と来店されました。仕事で夜間走行も多く、不安を感じてのご相談でした。点検を始めると、ふと目に入ったのがヒューズの容量の大きさ。規定容量よりも大きなアンペア数のヒューズが装着されていました。

「このヒューズ、交換されましたか?」

「ええ、前に『すぐ切れるから大きいのにしておきました』って言われて」

その時点で嫌な予感がしました。さらに配線を追っていくと、ライト系統のハーネスに明らかな異常が見つかりました。配線の被覆が一部溶け、変色している箇所が確認できました。本来であればヒューズが飛んで回路を遮断するはずの異常電流が、容量アップによって流れ続けていたのです。

原因を直さない“ごまかし”が被害を拡大させる

ヒューズが飛ぶのは「壊れた」わけではなく、「異常がある」というサインです。本来であれば、その原因、たとえば配線のショートや機器の不具合を特定し、修理する必要があります。今回のケースでも、初期段階で原因調査を行い、問題箇所の配線修理をしていれば、比較的軽微な費用で済んだ可能性が高いものでした。

しかし容量を上げたことで、異常電流が止まることなく流れ続ける状態に。電流が増え続けると、配線は発熱し、被覆が徐々に劣化していきます。やがて絶縁が失われ、隣接する配線同士が接触。ショートが連鎖的に広がり、被害は一気に拡大します。

結果として、部分的な補修では済まず、広範囲のハーネス交換が必要となり、修理費用は数万〜数十万円規模に膨れ上がってしまいました。

ヒューズは“切れて正解”それが安全を守る仕組み

この事例で最も重要なのは、「ヒューズが飛ぶ=正常な保護動作」であるという認識です。ヒューズは異常電流が流れると回路を守るためにあえて切れる設計になっています。それを容量アップで無効化することは、安全装置を意図的に外すのと同じです。

もしヒューズが繰り返し飛ぶ場合は、絶対にそのまま容量を上げてはいけません。まずは原因の特定を最優先に行うべきです。配線の損傷、機器の故障、水分侵入など、電装トラブルの原因はさまざまですが、いずれも適切な診断と修理が必要です。

また、整備を依頼する際には「なぜヒューズが飛んだのか」をしっかり説明してもらうことも重要です。原因が曖昧なまま対処されている場合は、今回のように後々大きなリスクへと発展する可能性があります。電気系統のトラブルは目に見えにくい分、気づいたときには深刻化していることも少なくありません。

しかし、ヒューズという小さな部品が発する“警告”を正しく受け止めれば、大きな事故は防げます。安易な対処ではなく、確実な修理をする。それが安全への最短ルートです。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り約8年間整備に従事し、メーカーで現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。 年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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