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「自分だけ取り残された」230万でランエボを買った20代男性。1シーズンで起きたタイヤの“想定外な大誤算”

  • 2026.5.17
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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

2000年代前半、自動車漫画ブームの中でスポーツカーに憧れていたAさん(43歳・男性)にお話を伺いました。

当時20代前半で社会人になったばかりの彼は、実家暮らしで、家に入れる生活費などを差し引くと手元に残るお金は12万円ほどでした。そんな中、彼は友人たちに触発され、勢いで中古の三菱・ランサーエボリューションIVを約230万円で購入します。ユーロビートを流して走る高揚感の一方で、彼を待ち受けていたのは、想定外のタイヤの偏摩耗や高額な維持費という厳しい現実でした。

それでも彼が愛車を手放さなかった理由とは何だったのでしょうか。若さと収入のすべてを注いだ、苦しくも熱い青春の記録をご紹介します。

自分だけが取り残された焦燥感。230万円で手にしたランエボIV

2000年代前半、Aさんがまだ関東の短大に通っていた頃のことです。仲の良い5人の友人グループの中で、地元を離れて関東へ進学したのはAさんただ1人でした。初めての夏休みに帰省し、いつものように友人たちと集まることを心待ちにしていたそうです。

しかし、いざ再会した友人たちの姿を見て、Aさんは大きな衝撃を受けることになります。 彼らはみな、すでに運転免許を取得し、インプレッサWRX、レガシィB4 RSK、シビックタイプR、セリカといったスポーツカーで待ち合わせ場所に現れたのです。

当時は自動車をテーマにした漫画が大きなブームとなっており、友人たちの話題も愛車のカスタムや夜のドライブのことばかりでした。自転車や電車で移動していた頃とはすっかり変わり、大人の階段を上っていく友人たちを見て、まだ免許も車も持っていなかったAさんは、自分だけが別の世界に取り残されてしまったかのような強い寂しさと焦りを覚えたといいます。

その後、短大を卒業して地元に戻ったAさんは、社会人としての生活をスタートさせます。実家で暮らしながら仕事をし、夜はガソリンスタンドでアルバイトをする日々の中で、家に入れる生活費などを諸々引いて手元に残るお金は12万円ほどでしたが、当時のあの疎外感を払拭し、自分も彼らの輪に入りたいという思いが消えることはありませんでした。

また、自分の車があれば遠くまで自由に行けるという憧れもありました。雪国という環境を踏まえ、彼が選んだのは実用的な4WDでありながら5ナンバーサイズで荷物も積める車でした。仲間と車種が被りたくないという気持ちも後押しし、三菱のランサーエボリューションIVの中古車を約230万円で購入する決断をしたそうです。

洗車やオイル交換の社員割引があり、周囲に車に詳しい人もいたため、月3万5千円のローンを組んでも何とかなると信じていたようです。しかし、その見立ては少し甘かったのかもしれません。

ユーロビートを流す最高の高揚感と、忍び寄る維持費の影

待ちに待った納車直後のAさんは、まさに有頂天だったそうです。 アニメを見た後にCDでユーロビートを流し、窓を全開にして走る時間は、まるで自分が作品の中にいるような何にも代えがたい高揚感をもたらしてくれました。 友人たちと肩を並べて車の話で盛り上がり、時間があれば隣県まで深夜のドライブに出かけることも日常的になったとのことです。

ところが、その楽しい日々の裏で、少しずつ維持費の負担が重くのしかかってきます。

最初の半年ほどは予定通りにやりくりできていたものの、ローンの支払いに加えて、初心者ゆえの高額な任意保険料や、月に1万円ほどのハイオクガソリン代がじわじわと収入を圧迫し始めました。遊びたい盛りの20代にとって、友人との交際費も必要な中で、月に5万円以上が車関連の出費として消えていくのは想像以上の負担と言えそうです。

そして、本当の恐怖は購入時の車両情報だけでは分かりにくい、足回りの状態に潜んでいました。

最大の誤算…1シーズンでワイヤーが露出したタイヤの恐怖

購入した年の11月、車検のタイミングで衝撃的な事実が発覚します。購入時には新品同様の溝があったはずのタイヤでしたが、外からは見えにくい内側が極度に偏摩耗しており、なんとワイヤーが露出していたのです。

峠を激しく走るような酷使をしていなかったにもかかわらず、1本1万5千円もするタイヤ4本がわずか1シーズンで使えなくなってしまいました。翌年の春にアライメント調整を行っても症状は完全には直らず、さらに雪国特有のスタッドレスタイヤも偏摩耗が激しいため、短いサイクルで交換を余儀なくされたそうです。

トラブルはこれだけにとどまりません。中古車ならではの悩みとして、タイヤサイズとタイヤハウスのクリアランスが合っておらず、田舎道の段差で干渉してしまう問題も発生しました。出費を抑えるために素人作業でタイヤハウスの内側を曲げようとし、塗装を割ってしまったというほろ苦い失敗もあったようです。

さらに、限定色だったため自損事故の修理費が高額になったり、駐車中にドアに傷をつけられたりと、心が折れそうになる出来事が連続しました。車を買うことと維持することは全く別物であると痛感する日々だったとのことです。それでも彼が車を手放さなかったのは、当時の趣味が車くらいしかなく、そこに自身のすべてを注いでいたからかもしれません。

しかし、そんな車中心の生活にも、やがて転機が訪れることになります。

結婚を機に知る現実。車にすべてを注いだ日々の終わりと今の思い

当時、付き合っていた方との結婚が決まったことが、Aさんの価値観を大きく変えるきっかけとなりました。

ちょうどその時、ハイオクガソリンの価格が1リットルあたり120円を超え始めた時期でもあります。結婚に向けて将来の生活を考えたとき、当時の彼には貯蓄がほとんどない状態でした。ご両親に心配をかけてしまったという申し訳なさと同時に、趣味よりも日々の生活を優先しなければならない年齢になったのだと実感したそうです。そして、彼とランサーエボリューションIVとの熱い日々は終わりを告げることになります。

現在のAさんは、ご家族のために乗りやすく維持費も現実的なホンダのフリードに乗っています。中古車の詳細情報だけではわからない、見えない維持費の怖さや車検以外にかかる細かな出費については、すべて過去の経験から学んだとのことです。

今であれば、当時と同じような選択は簡単にはできないでしょう。 それでも、若さと時間と収入のほとんどを注いでようやく維持できたあの車は、間違いなく彼にとっての青春だったと言えそうです。

子どもが自立して金銭的な余裕ができたら、また趣味として好きな車に乗りたいと語るAさんの表情からは、当時の日々を後悔していない前向きな思いが伝わってきました。



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


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