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「雨の日だけだから…」ブレーキの“キーキー音”を放置した40代男性。点検で発覚した危険な状態と痛い出費

  • 2026.6.16
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

梅雨の時期になると、「雨の日だけブレーキがキーキー鳴る」という相談が増えます。雨で濡れたブレーキローターの表面にサビが発生し、一時的に音が出ることは珍しくありません。しかし、その異音の中にはブレーキパッドの摩耗が原因となっている危険なケースもあります。

今回は、雨の日だけ発生するブレーキ異音を軽視した結果、パッド交換だけでは済まなくなり、危うく事故につながりかけた事例をご紹介します。

雨の日だけ鳴るから大丈夫。そう思っていた

以前、私が整備工場で勤務していたときのことです。来店されたのは40代の男性のお客様・Aさんでした。

「雨の日だけなんですけど、ブレーキを踏むとキーキー鳴るんですよね」

私は詳しく症状を確認しました。

「晴れの日は鳴りませんか?」

「はい。天気が良い日は全然気にならないんです。だからそのうち直るかなと思っていました」

実際、梅雨時期はブレーキローターの表面に薄いサビが発生しやすくなります。特に一晩駐車した翌朝や雨天時には、ローター表面のサビとブレーキパッドが接触して一時的な音が出ることがあります。これは走行や数回のブレーキングで消えることが多く、異常ではない場合もあります。しかし、Aさんの場合は少し状況が違いました。

「最近、音が大きくなってきた気がするんです」

Aさんのその一言が気になりました。正常なサビによる一時的な鳴きは、湿気がなくなったり走行後にローター表面のサビが落ちたりすると消えることがほとんどです。一方で、ブレーキパッドの摩耗による異音は徐々に大きくなったり、発生頻度が増えたりする特徴があります。そこでタイヤを外して点検してみると、原因はすぐに判明しました。

パッド残量は限界寸前だった

ブレーキパッドの残量は、すでに交換推奨値を大きく下回っていました。

「これはかなり減っていますね」

私が説明すると、Aさんは驚いた表情を見せました。

「そんなに危険な状態だったんですか?」

パッドの摩擦材はブレーキを効かせるための重要な部分です。新品時には十分な厚みがありますが、摩耗が進むと徐々に薄くなっていきます。さらに限界に近づくと、金属製の警告プレートがローターに接触し、キーキーという高い音を発生させる構造になっている車種もあります。ただし、この警告音は本来、雨の日だけでなく晴れの日でも継続して発生することが一般的です。そのため、「雨の日だけ鳴る音=すべてパッドの摩耗が原因」とは限りません。

今回のケースでは、もともとパッド残量が極端に少なくなっていたところへ、梅雨時期特有のローター表面のサビが重なり、異音が発生しやすくなっていたのです。つまり、サビだけが原因ではなく、摩耗したパッドが異音を大きくしていた状態でした。

問題はここからです。

パッドの摩擦材がさらに減ると、金属部分が直接ローターに接触し始めます。すると異音だけでなく、ローターそのものが削られてしまいます。ブレーキパッドは数千円から数万円程度で交換できることが多いですが、ローターまで交換となると修理費用は大きく増えてしまいます。実際、この車両もローター表面に深い傷が入り始めていました。

停止距離が延び、事故寸前に

さらに、Aさんからこんな話を聞きました。

「実は少し前、下り坂でヒヤッとしたことがあったんです」

詳しく聞くと、雨の日の下り坂で前方車両が減速した際、いつもより停止距離が長く感じたそうです。

「止まれると思ったんですけど、思ったより前に進んでしまって」

結果的に追突は免れましたが、かなり危険な状況だったといいます。ブレーキパッドの摩耗が進むと、制動力そのものが急激になくなるわけではありません。しかし摩擦材が薄くなることで熱の影響を受けやすくなったり、ローターへの攻撃性が高まったりして、本来の性能を発揮できなくなる場合があります。特に雨天時は路面の摩擦も低下しています。

そのため、わずかな制動力低下でも停止距離の延長につながることがあります。もしさらに放置していたら、ローター損傷の拡大や制動性能の悪化によって、重大事故につながっていた可能性も否定できませんでした。

修理ではブレーキパッドだけでなく、傷んだローターも交換することになりました。Aさんは苦笑いしながら言いました。

「もっと早く見てもらえば良かったですね」

その通りです。異音は車からの重要な警告サインです。もちろん、雨の日だけ発生する軽い鳴きがすべて故障とは限りません。しかし、音が以前より大きくなった、発生頻度が増えた、長期間続いているといった場合は注意が必要です。ブレーキは命を守るための重要な装置です。

「雨の日だけだから大丈夫」「そのうち消えるだろう」

そう考えて放置せず、一度点検を受けることをおすすめします。判断に迷ったら、「音が出る=何らかの異常の可能性がある」と考えることが大切です。早期点検によって、修理費用の増加も事故のリスクも防ぐことができるのです。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り約8年間整備に従事し、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。 年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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