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「次の車検まで様子見で…」雨の日の“ちょっとしたパワー不足”を甘く見た結果。梅雨時に多発する車の思わぬ落とし穴

  • 2026.6.15
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

「雨の日だけアクセルの反応が悪いんです。でも晴れると普通に走るので、そのまま乗っていました」

梅雨時期になると増えるのが、湿気や雨水が関係する電装系トラブルです。症状が特定の天候でしか発生しないため、「たまたまだろう」「そのうち直るだろう」と様子見されやすいのが特徴です。しかし、電子制御化が進んだ現代の車では、小さなセンサー異常が大きな走行トラブルにつながることもあります。

今回は、雨の日だけ発生していた加速不良を放置した結果、危険な状況に発展した事例をご紹介します。

雨の日だけ起きる加速不良。だからこそ見逃されやすい

以前、40代男性のお客様が国産コンパクトカーで来店されたことがありました。相談内容は非常に曖昧なものでした。

「雨の日だけなんですが、アクセルを踏んでも加速が鈍い気がするんです」

詳しく話を聞くと、症状が出るのは雨の日や湿度の高い日だけ。晴れた日にはまったく問題なく走行できるとのことでした。

「高速道路の合流で少しパワー不足を感じる時がありますね。でも毎回じゃないんです」

このような症状は整備工場でも再現が難しく、異常の特定に時間がかかることがあります。さらに厄介なのは、症状が出たり出なかったりすることです。お客様も、「次の車検の時に見てもらえばいいかなと思っていました」と話されていました。

しかし、特定条件でのみ発生する不具合こそ注意が必要です。正常な状態の車であれば、雨の日だけ加速性能が大きく変化することはありません。特に電子制御スロットルを採用した車では、アクセル操作がセンサー信号によって管理されています。そのため、わずかな信号異常でも走行性能に影響を及ぼすことがあるのです。

原因は水の侵入だった。センサー異常でフェイルセーフ作動

その後、お客様は数か月間そのまま車を使用していました。すると徐々に症状が悪化していきます。

最近は雨の日でなくても少し加速が悪い時があり、エンジン警告灯が一瞬点灯して消えることもあるという状態になっていました。診断を進めると、スロットルポジションセンサーの信号に異常が確認されました。

原因はセンサー内部への水分侵入です。長年の使用によるシール部分の劣化などによって微量の水分が侵入し、内部で接触不良が発生していたのです。スロットルポジションセンサーは、スロットルバルブの開度をECU(コンピュータ)へ伝える重要な部品です。

本来なら、「アクセルを踏んだ量に対してスロットルが適切に開いているか」という情報が正確に伝達されます。しかし信号が不安定になると、ECUは正しいスロットル開度を認識できなくなります。するとエンジンを保護するため、フェイルセーフ制御が作動する場合があります。フェイルセーフとは、異常が発生した際に安全側へ制御を移行する仕組みです。

その結果、「アクセルを踏んでいるのに回転数が上がらない」「加速が極端に鈍くなる」といった症状が発生します。特に湿気の多い雨天時は漏電や接触不良が起きやすく、症状が表面化する大きな要因となります。

右折時の加速不足で危険な状況に…早期診断が被害を防ぐ

最終的にお客様が再来店されたのは梅雨真っ只中でした。

「昨日、交差点で右折しようとしたら全然加速しなかったんです」

状況を聞くと、信号待ちから発進した際にフェイルセーフ制御が作動し、低出力状態のままになっていたそうです。対向車との距離に余裕があったため事故には至りませんでしたが、一歩間違えれば非常に危険な状況でした。その後は警告灯も頻繁に点灯するようになり、自走可能ではあるものの通常走行が困難な状態となり、緊急入庫となりました。

診断の結果、スロットルポジションセンサー異常が確定しました。もし最初の段階で入庫していれば、センサー交換のみという比較的軽微な修理で済んでいた可能性があります。しかし長期間放置したことで、スロットルボディ内部の点検や清掃、関連配線の診断なども必要となり、結果的に修理費用も増加してしまいました。

雨の日だけ発生する加速不良やアクセル反応の遅れは、「その日だけの不調」ではありません。むしろ「特定条件で再現する明確な異常」と考えるべき症状です。

また、エンジン警告灯が一瞬だけ点灯して消える場合でも、ECU内部には故障履歴が記録されていることがあります。定期点検の際には故障コードの確認やセンサー系統の診断を受けることが予防につながります。梅雨時期は電装系トラブルが増える季節です。

「雨の日だけだから大丈夫」

そう考えている症状の中に、重大な故障の前兆が隠れているかもしれません。加速不良やアクセルに違和感を覚えたら、早めに整備工場で点検を受けることをおすすめします。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り約8年間整備に従事し、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。 年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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