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ロッキーとの友情、カラオケシーン誕生秘話も。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』奇跡の舞台裏をライアン・ゴズリングらクルーが明かす

  • 2026.3.22

SF映画『オデッセイ』(15)の原作者として知られる作家アンディ・ウィアーの同名ベストセラー小説を映画化した『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が公開中だ。『LEGOムービー』(14)や『スパイダーマン:スパイダーバース』シリーズの脚本・製作でも知られるフィル・ロード&クリストファー・ミラーが監督を、主人公のグレース役、そして製作には『ラ・ラ・ランド』(16)、『バービー』(23)のライアン・ゴズリング、共演には『落下の解剖学』(23)でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたザンドラ・ヒュラーを迎えた。

【写真を見る】まさかの選曲!ザンドラ・ヒュラーがカラオケシーンの誕生エピソードを語る

宇宙船の中で昏睡から目覚めた中学の科学教師のグレース(ライアン・ゴズリング)は、記憶を取り戻すにつれ、太陽のエネルギーが奪われ滅亡の危機に瀕した地球を救うために宇宙へと送り込まれた自身の使命を知る。もう一人の主役とも言えるのが、異星人“ロッキー”。地球を救う使命以外全く共通点のない者同士が、科学を共通の言語にして難題に立ち向かい、かけがえのない友情を育んでいく。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の主要スタッフ&キャストが勢ぞろいした会見をロングレポート [c]Everett Collection / AFLO
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の主要スタッフ&キャストが勢ぞろいした会見をロングレポート [c]Everett Collection / AFLO

“ヘイル・メアリー”とは、アメフト用語で「絶体絶命の局面に、奇跡を信じて投げる最後のパス」を意味する。その名を冠した本作の公開直前、主演のゴズリングをはじめ、ザンドラ・ヒュラー、フィル・ロード&クリス・ミラー、アンディ・ウィアー、プロデューサーのエイミー・パスカルら豪華なキャストとスタッフが集結したグローバル記者会見を現地取材。その模様をロングレポートでお届けする。

※本記事は、ネタバレ(ストーリーの核心に触れる記述)を含みます。未見の方はご注意ください。

「ある映画を観た時、どんな時代の自分だったかと結びつく作品がある。この作品にはその可能性がすべて備わっていました」(ゴズリング)

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は公開中。グレースの劇中ファッションにも注目してほしい [c] 2025 CTMG. All Rights Reserved.
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は公開中。グレースの劇中ファッションにも注目してほしい [c] 2025 CTMG. All Rights Reserved.

―― 今作に出演を決めた理由を聞かせてください。

ライアン・ゴズリング(以下、ゴズリング)「原作を読んだ時、アンディが瓶の中に雷を閉じ込めたような作品を書いてくれた、と瞬間的にわかりました。読んだのは、映画館も製作現場も閉まっていた時期でした。そんななかに、信じられないほど胸に迫る、楽観的な感覚が舞い降りる感じがしたんです。未来を恐れるものとしてではなく、解決すべき問題として捉える視点が非常に斬新で、『これしかない』と思いました。誰しも、ある映画を観た時、その時自分がどこにいて、どんな時代の自分だったかと結びつく作品がある。この作品にはその可能性がすべて備わっていました。あとは自分が台無しにしないようにするだけ。そのためには、考えうる限り最高のチームが必要でした。いま、ここにいるドリームチームが集まったのはそういうわけです」

――そこから、フィル・ロードとクリス・ミラーが監督として参加したのはどのような経緯だったのでしょうか。

エイミー・パスカル(以下、パスカル)「ライアンとこの企画について最初に話した時、彼はヒソヒソ声でこう言ったんです。『クリスとフィルを口説けると思う?』って(笑)。あの2人のすごいところは、スリリングな冒険の旅に観客を連れていきながら、常に映画を人間の物語として成立させる力があることです。この映画は笑えて、かつエンターテインメントとして機能しなければならない。でも同時に、世界をより良い場所にしようとする映画でもなければならない。そのどちらも実現できる監督は、この2人以外にいなかった。私はクリスとフィルと20年間一緒に映画を作ってきて、2人の尽きることない好奇心と持久力がわかっているから、この3人こそが共にこの映画を作るために存在していたのだと思っています」

ライアン・ゴズリングがスタジオに働きかけ、ロード&ミラーを監督に起用した [c]Everett Collection / AFLO
ライアン・ゴズリングがスタジオに働きかけ、ロード&ミラーを監督に起用した [c]Everett Collection / AFLO

「私たちの仕事の原動力は“対話”」(ロード)「どんな相手とでも、ライアンには人とつながる力がある」(ミラー)

――監督お2人にお聞きします。グレースとロッキーの友情をどう描きましたか?

フィル・ロード(以下、ロード)「私たちの仕事の原動力は対話だと思っています。昨日、ジェット推進研究所(JPL、NASAの研究機関)に伺ったのですが、彼らが生み出しているのは衛星ではなく、クリエイティブな人々と科学者たちの間で交わされる対話なんです。映画の撮影現場も同じです。このすばらしいプロデューサー陣がいるのは、アーティストや俳優、各部門のトップたちの対話を生み出すためであって、それが全員の創造性を高め合っているのです。スクリーンに映しだされるのは、多くの才能ある人々が一緒になにかを考えた成果です。この映画がすばらしいのは、2人の人間がとても困難な問題に向き合い、地球上では多くの人々が力を合わせ、その力がいかに大きなものをもたらすかを描いているところにあります」

クリス・ミラー(以下、ミラー)「ライアンがすばらしい俳優である理由の一つは、どのシーンでも共演する相手とのつながりを求めているからだと思います。ザンドラとのシーンでは、2人がお互いから刺激を受けてなにか新しいものを生みだしているのが感じられました。撮影現場でロッキーの主要パペッティアであり声を担当したジェームズ・オルティスと共演した時も、ライアンとジェームズは互いに刺激し合っていました。この岩のような生き物とのつながりを常に探し続けて、どんな相手とでも、ライアンには人とつながる力がある。その相手を敬意と愛情をもって引き寄せる。それがスクリーンに映しだされています」

研究職を退き、中学校の科学教師として生活していたグレース。計画への参加も躊躇するが… [c] 2025 CTMG. All Rights Reserved.
研究職を退き、中学校の科学教師として生活していたグレース。計画への参加も躊躇するが… [c] 2025 CTMG. All Rights Reserved.

――主人公を「ごく普通の人」として設定しながら、人類を救う使命に就かせようとした理由を教えていただけますか?

アンディ・ウィアー(以下、ウィアー)「ほとんどの人は自分を特別な存在だとは思っていないからです。本を書く時、読者に主人公と同一化してもらいたい。だから『(グレースは)自分と同じような普通の人間だ』と思える主人公を作りたかったんです。『こんな状況は絶対に嫌だ。どうしたらいいかわからない。すごくぎこちなくて居心地が悪い』と感じてくれる人物を作りたかった。映画でも同じ体験をしてほしいんです。ぎこちなく、居心地が悪く、怖いと感じてほしかった」

原作者のアンディ・ウィアーも製作を務めており、撮影現場も訪れている [c]Everett Collection / AFLO
原作者のアンディ・ウィアーも製作を務めており、撮影現場も訪れている [c]Everett Collection / AFLO

――ストラットのカラオケシーンはどのように生まれたのですか?

ザンドラ・ヒュラー(以下、ヒュラー)「出演を決めた時にカラオケシーンがあるとは知りませんでしたが(笑)」

ゴズリング「空母での撮影中、廊下の向こうから天使の歌声が聞こえてきたんです。まるで天国から蜜を注ぎ込まれているような音で。音をたどって行ったら、ザンドラが歌っていた。『そんなに歌えるの?』と言ったら、『うん、まあね』という感じで(笑)。『この映画の中で歌っていただけませんか』とお願いしたんです。ザンドラがハリー・スタイルズの曲を選んでくれて、それが映画のマーケティングキャンペーン全体の核になりました。あの曲がこの映画の精神とエネルギーと魂そのものを体現していました」

ヒュラー「私はずっと、携わるすべての映画にカラオケシーンを入れるのが隠れた計画だったんです。あんなにぴったりはまる曲を見つけられたことも含めて、本当に楽しかったです」

【写真を見る】まさかの選曲!ザンドラ・ヒュラーがカラオケシーンの誕生エピソードを語る [c] 2025 CTMG. All Rights Reserved.
【写真を見る】まさかの選曲!ザンドラ・ヒュラーがカラオケシーンの誕生エピソードを語る [c] 2025 CTMG. All Rights Reserved.

「私たちの共通認識は、ロッキーの表現次第でこの映画が成功するか否かが決まる、ということでした」(ウィアー)

“恐怖を好奇心に変える”という考え方を、若い世代にも受け取ってほしいと熱弁した [c] 2025 CTMG. All Rights Reserved.
“恐怖を好奇心に変える”という考え方を、若い世代にも受け取ってほしいと熱弁した [c] 2025 CTMG. All Rights Reserved.

――この映画を通じて、若い世代にどんなメッセージを届けたいですか?

ゴズリング「アンディの声は、いまこの時代にとって非常に大切なことを述べていると思います。別の銀河に行って、宇宙人の親友ができて、世界を救う。(この映画を観に行くのは)金曜の夜の過ごし方としては悪くないと思いますよ(笑)。家族との映画鑑賞体験を考えると、いまは家族全員で観られる作品を見つけるのは難しい。映画館で家族全員の心に刻まれるような、子どもの頃に誰しも経験した大切な思い出になる瞬間を探しているのだけれど。そういう作品を一つ作れたらと思っていました。人生最大の冒険でありながら、現実逃避にはなっていない。私たちが人間としてなにを成し遂げられるかという、力強い提示です。アンディが持っている“恐怖を好奇心に変える”という考え方は、実際に試みる価値のある考え方です。若い世代がその精神と希望を映画から受け取ってくれたらうれしいです」

――アニメーションでの映画制作経験、特にその分野での革新という背景のもと、アニメーション映画から『プロジェクト・ヘイル・メアリー』制作に活かした最大の教訓はなんですか?

ロード「この質問はよく聞かれるのですが、2つの映画制作スタイルの違いについて、実はあまり違いを感じていないんです。どちらも大きなチームスポーツで、物語をビジュアルで語っています。アニメーションでおもしろいのは、動きで物語を語るということ。多くの場合、セリフは副次的なものです。それはロッキーを描く時にも、ライアンと作業する時にも非常に役に立ちました。両方のキャラクターが、時に言葉なく自分を表現しなければならないから。ロッキーの場合、動き方そのものが長い間、自己表現の手段でした。ライアンはなんでもできますが、特に優れた身体的表現者です。体の動かし方、シルエットそのものに注目が集まる。それは言葉がない世界で物語を語ろうとする時に非常に価値が生まれます。この映画の核心には、身体表現が豊かな2人のキャラクターがいるわけです。そういう意味で、アニメーションの経験は大きかったと思います」

大学時代からの名コンビ、フィル・ロード(写真左)とクリストファー・ミラー(同右) [c]Everett Collection / AFLO
大学時代からの名コンビ、フィル・ロード(写真左)とクリストファー・ミラー(同右) [c]Everett Collection / AFLO

ゴズリング「ここは割り込んで話さずにはいられないのですが(笑)、エイミーと私が2人の名前をヒソヒソ声で言ったのは、他に選択肢がなかったからです。この映画を作れるのは彼らしかいない。彼らなしにはこの映画は存在しなかった。その恐れを知らない姿勢について、私も身をもって知っています。私が一人で撮影していたことについていろいろ語られていますが、確かにある意味ではそうでした。でも、いつも2人がいてくれました。ある日、非常に孤独を感じて、完全に行き詰まった気がして、自分の創造性が底をついてしまったような気分になって、『共演相手が欲しい』と思ったことがありました。『友達が必要だ、今日はちょっと無理かもしれない』と思っていたら、フィルがどこからかガムテープを取り出して…なぜかいつも持っているんですが(笑)。

別のセットにいたクリスと2人で、モップに手を付けて“モッピー・リングウォルド”と名付けてくれました。そのモッピーと踊って、笑って、モッピーとのすばらしい一日を過ごしました。しかもそれが映画の中に残っているんです。2人は計画していたことを全部止めて、私がなにを必要としているか、映画がその瞬間になにを求めているかに耳を傾け、モップ人形を作って一日中撮影してくれた。それが彼らのような映画クリエイターです。こういう魔法のような瞬間が、彼らの恐れを知らない探究心によってこの映画のいたるところに宿っています」

ウィアー「私も割り込ませてください。一つ言いたいのは、私たちの共通認識は、ロッキーの表現次第でこの映画が成功するか否かが決まる、ということでした。そしてこの2人はアニメーションを知っている。それが、顔も目もない一見感情を持たなそうな岩をキャラクターへと昇華させることに直結したと思います。誰もができることではありません」

「一つ忘れないでほしいのですが、これはとにかく超絶スリリングな冒険映画なんですよ」(ヒュラー)

―― この映画が伝える最大のメッセージはなんでしょうか?

ロード「地球でも宇宙でも、すべてのシーンで存在たちが問題解決のために力を合わせています。それが映画をあれほど希望に満ちた楽観的なものにしている理由です。技術的に見れば終末的な出来事を描いているのに、暗くも冷たくも無機質でもなく、温かく、希望に満ちている。人間の精神の本質が映し出されています」

北米公開から3日間でのオープニング興収は約7710万ドルとヒット [c] 2025 CTMG. All Rights Reserved.
北米公開から3日間でのオープニング興収は約7710万ドルとヒット [c] 2025 CTMG. All Rights Reserved.

ミラー「私が映画を好きなのは、多くの人間が、多くのアーティストがなにかに向かって力を合わせる、その魔法を目の当たりにできるからです。私たちはいつも、人々が善を想像できるような映画を作ろうとしています。自分たちにはなにができるのかを見て、可能性を思い出してもらいたいんです」

パスカル「この映画は単に人々が協力するだけの話ではありません。お互いを恐れながらも、見た目も話し方も出自もまったく異なる存在が、相手のことを理解しなければ終わりだと気づく話なんです。これは今とても重要なメッセージだと思います。もう一つ、この映画は最初から最後まですべての会話で、科学と信仰の交差を描いています。それが深い形で共存している。家族で、または大人として、どんな立場でこの映画を見ても、そのことを感じ取ってほしいと思っています」

 [c]Everett Collection / AFLO
[c]Everett Collection / AFLO

ロード「ザンドラが演じるキャラクター(エヴァ・ストラット)は、ライアンが演じたキャラクターが自分を信じるずっと前から、彼のことを信じています。それがこの映画の核心的な部分です。エイミーが昔クリスと私を信じてくれたのと同じように。18年前に彼女は私たちをオフィスに呼んで、『この2人をクビにすべきか迷っている』という感じだったんですが(笑)。その面談を終えて、『この子たちには好意を持てる』と思ってくれた。そして一緒に最初の映画を作りました。信じる理由もないうちから信じてくれていました。ライランド・グレースを信じる理由がまだない状況で信じるストラットの姿と重なります。お互いのことを信じることは、とても力になります。肘でそっと背中を押してもらうことで、相手の可能性を想像できるようになるのです」

ザンドラ「一つ忘れないでほしいのですが、これはとにかく超絶スリリングな冒険映画なんですよ。初めて映画を見た時、席から浮き上がるくらい興奮して、スクリーンに向かって叫んでいました。こういうことも全部事実ですが、同時にものすごくおもしろい。それも大事なことです」

取材・文/平井伊都子

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