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子どもがお風呂に入りたがらないのはSOSのサインかも?精神科医飯島先生にお伺いしました

  • 2026.3.21

子どもがちっともお風呂に入ってくれない。どうしたら入ってくれるようになるんだろう?どのくらい入らなくても問題ないの?そんな悩みについて、不登校/こどもと大人の漢方・心療内科出雲いいじまクリニック院長の飯島慶郎先生からお話をお伺いしました。

ママ広場

子どもがお風呂に入らないとき、どうすればいい?

「何度言ってもお風呂に入ってくれない」「お風呂だよ、と声をかけるだけで不機嫌になる」。お子さんの入浴をめぐって、毎晩のように頭を悩ませている保護者の方は少なくないと思います。

私は島根県出雲市で不登校を中心とした児童精神科の診療を行っていますが、「うちの子、お風呂に入らなくなりました」という相談をよく受けます。ただ、最初にお伝えしておきたいのは、子どもがお風呂を嫌がること自体は、発達の過程ではごく自然なことだということです。

この記事では、まずお風呂を嫌がる「よくある理由」と家庭でできる工夫をお話しし、そのうえで「ここからは少し注意が必要」「専門家に相談したほうがいい」というラインについてお伝えします。

お風呂を嫌がる「よくある理由」

まず安心していただきたいのは、多くの場合、子どもがお風呂を嫌がるのには発達段階に応じた自然な理由があるということです。

「自分で決めたい」時期
2〜3歳のいわゆるイヤイヤ期は、何でも「イヤ!」と言いたいお年頃です。お風呂に限らず、着替えも食事も歯磨きも嫌がる。これは自律性が芽生えている証拠であり、成長の一過程です。

今やっていることをやめたくない
お風呂よりもブロック遊びやお絵描き、テレビのほうが楽しい。大人だってドラマの途中で「お風呂入って」と言われたら嫌ですよね。子どもにとっては、楽しい活動を中断することのハードルが大人の何倍も高いのです。

そもそもお風呂は子どもにとって大変。大人には何気ない日常動作ですが、お風呂は「服を脱ぐ→体を洗う→髪を洗う→すすぐ→湯船に浸かる→体を拭く→着替える」という多くのステップを順番にこなす必要がある、かなり複雑な作業です。一般的に、自分で体を洗い始めるのは4〜5歳頃、洗髪まで一人でできるようになるのは6〜7歳頃とされています。小学校低学年くらいまでは、お風呂の自立そのものが発達途上にあるわけです。

・感覚的に苦手な要素がある。
・シャワーの水圧が痛い。
・お湯の温度が気持ち悪い。
・シャンプーが目に入るのが怖い。
・浴室の音が響いてうるさい。

こうした感覚的な苦手さは、発達特性の有無にかかわらず、多くの子どもに見られます。大人が気にならない刺激でも、子どもにとっては大きなストレスになることがあります。

「面倒くさい」
小学校高学年から中学生になると、理由はシンプルに「面倒くさい」になります。ゲームや動画に夢中になっている時間帯に声をかけると、「あとで」がエンドレスになりがちです。思春期に入ると、親に言われること自体への反発もあるでしょう。ここまでは、年齢相応の自然な反応です。

ただし、「面倒くさい」にも程度があります。何度声をかけても動けない、本人も「入らなきゃ」と思っているのに体が動かない――そうなると、単なる怠けとは違う可能性が出てきます。たとえば発達障害のある子どもは、目の前の活動から切り替えられない、手順の多い作業の段取りがうまく組めない、といった実行機能の問題を抱えていることがあります。また、うつ病の初期には意欲の低下や疲労感が前面に出るため、本人には「面倒くさい」としか自覚できないことがあります。「面倒くさがり」の裏に、脳の機能的な問題が隠れていることもあるのです。

こうした理由の多くは、日常のちょっとした工夫で状況が変わります。一方で、後半でお伝えするように、工夫だけでは対応しきれないサインが潜んでいることもありますので、そこも頭の片隅に置いていただければと思います。

家庭でできる工夫

○予告してあげる
「お風呂入りなさい」という突然の命令ではなく、「あと10分したらお風呂の時間だよ」と予告するだけで、切り替えがぐっとスムーズになります。タイマーを使って本人に管理を任せるのもよいでしょう。
○感覚面の配慮をする
シャワーの水圧が苦手ならやわらかい水流に切り替える。シャンプーが怖いならゴーグルやシャンプーハットを使う。熱いお湯が苦手なら温めに設定してあげる。こうした小さな調整で「嫌」のハードルが下がることがあります。
○「完璧」を求めない
湯船に浸からなくてもシャワーだけでOK。シャワーも無理なら体を拭くだけでもOK。「足だけお湯につけてみる?」「蒸しタオルで顔を拭くだけでもいいよ」でも十分です。100か0かではなく、できることから始めるという姿勢が大切です。
○楽しい要素を加える
入浴剤の色や香りを選ばせる、お風呂用のおもちゃを用意する、「今日はどっちが先に洗い終わるかな?」と競争にする。小さな子どもほど、「楽しい」が最大の動機づけになります。
○ルーティンに組み込む
「ごはんの前にお風呂」「おやつの後にお風呂」など、毎日同じ流れを作ると、子どもは自然とその時間になるとお風呂に向かうようになります。大規模研究でも、入浴を含む一貫した就寝前ルーティンが子どもの睡眠の質や情緒の安定に良い影響を与えることが確認されています1)2)。
○お風呂の「良い効果」を伝えてみる
就寝の1〜2時間前にお湯に浸かると、入眠が早まり睡眠の質も向上することがメタ分析で報告されています(研究では40〜42℃程度で効果が確認されていますが、温度への過敏さがあるお子さんはぬるめで構いません)3)。また浸漬入浴がシャワーに比べて不安感やストレスを軽減するというRCT(ランダム化比較試験)もあります4)。「ぐっすり眠れるよ」「疲れがとれるよ」という伝え方は、とくに睡眠リズムが乱れがちなお子さんに響くことがあります。

なお、これらの工夫はお子さんだけでなく、きょうだいや保護者自身などお風呂が苦手な家族にもそのまま応用できます。家庭内で「お風呂が苦手=だらしない」という空気を作らず、それぞれのペースを認めることが、結果的にお子さんの安心感にもつながります。

ママ広場

何日くらいお風呂に入らなくても大丈夫?

工夫をしてもすぐには改善しないこともあります。そんなとき保護者の方が気になるのは「何日くらいなら入らなくても大丈夫なのか」ではないでしょうか。

皮膚科学的には、「毎日入浴しなければ不潔」というわけではありません。過度な入浴がむしろ皮膚のバリア機能を損なう可能性が指摘されています⁵⁾。早産児では4日に1回の入浴で十分という報告もあります⁶⁾。もちろん学童期以降の活動量のある子どもは汗や汚れを落とす必要がありますが、2〜3日に1回でも医学的に大きな問題は生じません。

「毎日絶対にお風呂に入れなければ」というプレッシャーを保護者自身が手放すこと。それだけで、親子ともに少し楽になれるはずです。

ただし、1週間以上まったく入浴できない状態が続く場合は、衛生面とは別の問題として、お子さんの心の状態に目を向けてほしいと思います。

こんなときは専門家に相談を

ここまでお伝えしてきた工夫で改善するケースは多いですが、以下のような場合は、日常の工夫の範囲を超えている可能性があります。小児科や児童精神科などへの相談をお勧めします。

「怠け」ではなく「脳の問題」ー入浴困難のメカニズム。前半で「面倒くさい」の裏にある脳の問題についてお話ししましたが、ここではもう少し詳しくメカニズムを見ていきましょう。

先ほどお伝えしたように、お風呂は「服を脱ぐ→体を洗う→髪を洗う→すすぐ→湯船に浸かる→体を拭く→着替える」という多段階の複雑な作業です。この作業を遂行するには、脳の「実行機能」――計画を立てる、段取りを組む、今やっていることから切り替える、といった能力が欠かせません。健康なときは無意識にこなしている一連の流れですが、この実行機能がうまく働かないと、一つひとつのステップが途方もなく重く感じられるようになります。

そして、この実行機能の問題を引き起こす代表的な原因が、発達障害とうつ病です。脳で起きていることは似ていますが、その成り立ちは異なります。

発達障害の場合は、もともと実行機能に特性があり、小さい頃からずっと入浴に苦戦してきたというパターンが多くなります。「お風呂に入ろう」という意図はあっても、目の前の活動から注意を切り替えられない、手順の段取りがうまく組めない、感覚的な苦手さが強すぎて浴室に近づけない。これらは本人の「やる気」の問題ではなく、脳の特性に由来するものです。「何度言っても動かない」が幼い頃から日常的に続いているなら、発達特性についても一度評価を受けてみる価値があるかもしれません。

うつ病の場合は、もともとふつうにお風呂に入れていた子の実行機能が、病気によって後天的に低下します。これに加えて、うつ病の中核症状である「意欲の低下」と「疲労感」が重なる。朝ベッドから起き上がるだけで精一杯の子どもにとって、お風呂は登山に匹敵するほどのエネルギーを必要とする行為になるのです。お風呂に入れなくなるというのは、子どもだけでなく大人のうつ病でもかなり多く見られる症状です。子どものうつ病は大人のように「気分が沈む」とは限らず、イライラや怒りっぽさ、体の不調(頭痛、腹痛)として現れることも多いため、見逃されやすいのが特徴です。「最近キレやすくなった」「笑顔が少なくなった」「すぐに疲れたというようになった」、そして「お風呂に入らなくなった」――これらが揃っていたら、うつ病のサインかもしれません。

私のクリニックでは不登校のお子さんを多く診ていますが、不登校が長引くとともにお風呂に入れなくなるケースは珍しくありません。うつ状態に加えて、昼夜逆転で入浴のタイミングが生活から消えてしまう、生活全体の構造が崩れることで、入浴という行為がルーティンごと脱落してしまう、といったメカニズムも重なります。臨床的には、入浴や歯磨きといった基本的なセルフケアを維持できているかどうかは、お子さんの状態を知る一つのバロメーターだと考えています。

感覚面の苦手さが極端に強い場合

入浴だけでなく、食事や着替え、特定の音や感触を極端に嫌がるなど、日常生活全般に支障が出ているなら、発達特性の評価を受けることで、お子さんに合った支援が見えてくることがあります。

入浴に関して極端なこだわりや恐怖がある場合。何度も手を洗い続ける、あるいは逆に「浴室が汚い気がして近づけない」など、入浴をめぐる行動が極端な場合は、強迫性障害の可能性があります。小児の強迫性障害では汚染恐怖(ウイルスやバイキンが怖いなど)が最も多いテーマですが7)、それが「洗いすぎ」にも「入れない」にもなりうるのが特徴です。また、密閉された浴室で動悸や息苦しさに襲われるのを恐れて入浴を避けている場合は、パニック障害が背景にあるかもしれません。ほかにも、一人でお風呂に入ることを極端に怖がる(分離不安)、水に対する強い恐怖がある(限局性恐怖症)など、不安障害にはさまざまなタイプがあり、いずれも入浴場面で問題として表面化することがあります。お子さんの不安やこだわりが強すぎて入浴を阻んでいる場合、それも受診が必要なサインでしょう。

おわりに:「お風呂に入れない」は、子どもからのサインかもしれない

私自身、不登校の子どもを持つ父親でもあります。わが子がお風呂に入らなくなったときの不安やもどかしさは、よくわかります。

多くの場合、子どもがお風呂を嫌がるのは成長の一過程であり、ちょっとした工夫で乗り越えられます。けれど、この記事でお伝えしてきたように、「面倒くさい」や「入りたくない」の裏には、実行機能の問題―発達障害やうつ病、不安障害といった脳の機能的な問題が潜んでいることがあります。お風呂に入れないこと自体が、子どもの心や脳の状態を映し出すサインなのです。

「いつもと違う」と感じたら、「様子を見ましょう」で済ませず、専門家に相談してください。お子さんの心と体の健康を取り戻すことが先です。健康を取り戻せば、お風呂にも自然と入れるようになります。

【参考文献】
1)Mindell JA, et al. Bedtime routines for young children: a dose-dependent association with sleep outcomes. Sleep. 2015; 38(5): 717-722. PMID: 25325483
2)Mindell JA, Williamson AA. Benefits of a bedtime routine in young children: Sleep, development, and beyond. Sleep Med Rev. 2018; 40: 93-108. PMID: 29195725
3)Haghayegh S, et al. Before-bedtime passive body heating by warm shower or bath to improve sleep: A systematic review and meta-analysis. Sleep Med Rev. 2019; 46: 124-135. PMID: 31102877
4)Goto Y, et al. Physical and Mental Effects of Bathing: A Randomized Intervention Study. Evid Based Complement Alternat Med. 2018; 2018: 9521086. PMID: 29977318
5)Marrs T, et al. Bathing frequency is associated with skin barrier dysfunction and atopic dermatitis at three months of age. J Allergy Clin Immunol Pract. 2020; 8(8): 2820-2822. PMID: 32348911
6)Johnson E, Hunt R. Infant skin care: updates and recommendations. Curr Opin Pediatr. 2019; 31(4): 476-481. PMID: 31188166
7)Rajith RK, Krishnakumar P. Clinical profile of obsessive-compulsive disorder in children. J Family Med Prim Care. 2022; 11(1): 251-255. PMID: 35309610

執筆者

プロフィールイメージ
飯島慶郎
飯島慶郎

不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック 院長
精神科医・総合診療医・漢方医・臨床心理士

島根医科大学医学部医学科卒業後、同大学医学部附属病院第三内科、三重大学医学部付属病院総合診療科などを経て、2018年、不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニックを開院。
多くの不登校児童生徒を医療の面から支えている。島根大学医学部精神科教室にも所属

不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック

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