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「愛の不時着」を経て『しあわせな選択』で7年ぶりに映画復帰! “国民の初恋”から深化し続けるソン・イェジンの軌跡

  • 2026.3.20

涙の似合うラブストーリーのヒロインとしてキャリアをスタートし、ほどなくしてトップスターとしての地位を確立したソン・イェジン。ドラマ「愛の不時着」での成功後、2022年にヒョンビンとの結婚、出産を経て活動を休止していた彼女が、名匠パク・チャヌク監督が手掛けた『しあわせな選択』(公開中)で、7年ぶりに映画に戻ってきた。多彩なジャンルの映画とドラマを行き来しながら活躍してきた彼女の歩みを振り返っていきたい。

【写真を見る】『私の頭の中の消しゴム』「愛の不時着」など幅広い作品で活躍するソン・イェジンの代表作を振り返り!

“国民の初恋”として愛されながら、様々なジャンルの作品に挑戦

【写真を見る】『私の頭の中の消しゴム』「愛の不時着」など幅広い作品で活躍するソン・イェジンの代表作を振り返り! [c]Everett Collection/AFLO
【写真を見る】『私の頭の中の消しゴム』「愛の不時着」など幅広い作品で活躍するソン・イェジンの代表作を振り返り! [c]Everett Collection/AFLO

『猟奇的な彼女』(01)で一世を風靡したクァク・ジェヨン監督による『ラブストーリー』(03)で、初恋のアイコンとなったイェジン。日本での人気を決定づけたのは、幸せな新婚生活を送るなかでアルツハイマー病となり、記憶を失っていく女性を演じた『私の頭の中の消しゴム』(04)だ。2001年に永作博美、緒形直人主演で放送された「Pure Soul~君が僕を忘れても~」をアレンジした美しくも悲しいラブストーリーで、トップ俳優のチョン・ウソンと共演した。彼女の役は偶然立ち寄ったコンビニで出会った肉体労働者の男と恋に落ちる社長令嬢スジン。本作では妻のいる不倫相手に裏切られた冒頭のシーンで自暴自棄になる演技を見せるなど、それまでとは違った可能性を感じさせた。もちろん、おなじみの愛くるしい笑顔とせつない涙目は健在で、後半に進むにつれ観客の涙を誘った。作品は日本でも大ヒットし、日本国内における韓国映画の興行収入30億円は『パラサイト 半地下の家族』(19)の登場まで破られない記録を打ち立てた。

実在した李朝最後の皇女、徳恵翁主に扮した『ラスト・プリンセス −大韓帝国最後の皇女−』 [c]Everett Collection/AFLO
実在した李朝最後の皇女、徳恵翁主に扮した『ラスト・プリンセス −大韓帝国最後の皇女−』 [c]Everett Collection/AFLO

『私の頭の中の消しゴム』の成功に続く『四月の雪』(05)の相手役は、韓流ブームを牽引したペ・ヨンジュン。恋愛映画の名手ホ・ジノ監督による同作で、既婚者同士の恋をしっとりと演じた。2005年には、「悲恋の主人公のイメージを変えてくれた」と振り返るコメディ『ナンパの定石』に出演。その後も役柄の幅を広げ、アクション・コメディ『パイレーツ』(14)では“韓国のアカデミー賞”と呼ばれる大鐘賞にて主演女優賞を受賞した。2016年には娘を必死で探す母親に扮したミステリー『荊棘(ばら)の秘密』と、過酷な運命に翻弄された徳恵翁主の生涯をダイナミックに描く大作『ラスト・プリンセス −大韓帝国最後の皇女−』という2作が公開。ホ・ジノ監督と再び組んだ『ラスト・プリンセス』では、波乱の人生を送った実在の人物を力強く演じ、百想芸術大賞映画部門女子最優秀演技賞ほか、多くの賞を手にした。

『ザ・ネゴシエーション』では、トラウマに苛まれながら誘拐犯との交渉に臨むチェユンに扮した [c]Everett Collection/AFLO
『ザ・ネゴシエーション』では、トラウマに苛まれながら誘拐犯との交渉に臨むチェユンに扮した [c]Everett Collection/AFLO

どんな役柄でも自在に演じられることを証明したイェジンは、『ザ・ネゴシエーション』(18)で腕利きの交渉人チェユンに扮した。正体不明の誘拐犯に対峙し、人質を救出するため犯行現場へ向かう特殊部隊が到着するまでの時間を稼ぐことを命じられるチェユン。何度も危機を乗り切ってきた経験を感じさせるプロフェッショナルな人物をシャープに見せた。犯人役はのちに結婚相手となるヒョンビンだったが、画面越しのシーンが多く、撮影時はほとんど顔を合わせることがなかったという。

年下男性と恋に落ちる等身大の30代女性や禁断の相手を愛してしまう孤独な財閥令嬢を好演

年下の幼なじみと恋に落ちる、等身大の女性を表現した「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」 [c]Everett Collection/AFLO
年下の幼なじみと恋に落ちる、等身大の女性を表現した「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」 [c]Everett Collection/AFLO

2018年に放送されたドラマ「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」では、数々のラブストーリーのヒロインを務めてきた真価を発揮。若手トップ俳優チョン・ヘインとの共演で、年の差カップルの恋愛をリアルに見せた。イェジンが演じたのは、仕事も恋もうまくいかない日々を送っていた女性ジナ。職場ではパワハラ上司との関係に悩み、家では母親から早く結婚しろと責められている等身大の女性を好演した。幼い頃から親しくしてきた親友の弟を恋愛対象として意識し、本気で愛するようになっていきながら感じる戸惑いと喜びを繊細に演じているのに加え、親友や会社の同僚たちなど、いまを生きる様々な女性たちとの関係も丁寧に見せている。

韓国の財閥令嬢と北朝鮮の軍人が織り成す恋愛模様を描き、世界的に大ヒットを記録した「愛の不時着」 Netflixシリーズ「愛の不時着」は独占配信中
韓国の財閥令嬢と北朝鮮の軍人が織り成す恋愛模様を描き、世界的に大ヒットを記録した「愛の不時着」 Netflixシリーズ「愛の不時着」は独占配信中

コロナ禍の不安のなかで放送&配信され、韓国ドラマの力を改めて感じさせた「愛の不時着」は、イェジンにとってもキャリアの集大成ともいえる作品となった。演じたのは、財閥家に生まれ、自身のファッションブランドを率いる女性ユン・セリ。南北の境界近くをパラグライダーで飛行中に突風に巻き込まれた彼女は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に不時着して通りがかった軍人リ・ジョンヒョクに助けられ、韓国に戻るまで彼の家で過ごすことになる。ドラマ全体のほぼ半分が北朝鮮で展開するラブストーリーという斬新な設定のなか、経済的には恵まれていたものの、人の優しさを知らずに生きてきたセリが、ジョンヒョクだけでなく、彼の部下や村の人々と温かく交流していく。前半ではまったく違う環境にやってきて戸惑うセリをコミカルに演じて笑わせ、ジョンヒョクとの愛が深まるにつれせつない演技で涙を誘うイェジンがいたからこそ、このドラマが成功したことがよくわかる。寡黙ながらもさりげない優しさを見せるジョンヒョク役のヒョンビンも完璧だった。2人は2022年に結婚し、一児の両親となっている。

最新作『しあわせな選択』では失業した夫を支える妻役に!

結婚、出産で現場を離れていたイェジンが7年ぶりの映画出演作として選んだのが、ハリウッドでも活躍するパク・チャヌク監督の新作『しあわせな選択』。突然のリストラによって崖っぷちに追い詰められた夫マンスが家庭を守るため連続殺人を目論むという驚きの物語のなかで、家族を支える妻ミリに扮している。シングルマザーだったミリは、幼い息子を抱えてマンスと結婚。2人の間には娘も生まれ、一家4人で幸せに暮らしていたが、夫が失業。ミリは家計を切り詰めるため、テニスやダンスといった趣味を諦め、歯科医院での仕事を再開する。自分に隠れて不審な行動をしている夫を見守り、落ち着いて事態に対応する姿が印象的だ。チャヌク監督独特のユーモラスなセリフも軽々とこなしている。

一児の母でもあるソン・イェジンが2人の子どもと夫をサポートするミリを自然体で演じる [c]2025 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM ALL RIGHTS RESERVED
一児の母でもあるソン・イェジンが2人の子どもと夫をサポートするミリを自然体で演じる [c]2025 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM ALL RIGHTS RESERVED

昨年、ワールドプレミア上映された釜山国際映画祭では「ミリは現実的なキャラクター。自然な姿を見てもらえたら」とキャラクターを説明。実際に母親となったことで、2人の子を持つ母親役も「ぎこちなくは見えないだろう」と信じながら演じたと振り返った。初共演ながら抜群のコンビネーションを見せたマンス役のイ・ビョンホンについては「カメラの前で力を抜いて演技していたのが印象的。私もそうなりたい」と絶賛。一方、日本公開に合わせて来日したビョンホンもイェジンについて「出来上がった作品を見て、すごく細かい感情まで逃さず演技していたことに気付き、本当にすばらしい俳優だと感じた」と語っていた。

前向きなミリは明るい笑顔で失業した夫を支えようとするが…(『しあわせな選択』) [c]2025 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM ALL RIGHTS RESERVED
前向きなミリは明るい笑顔で失業した夫を支えようとするが…(『しあわせな選択』) [c]2025 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM ALL RIGHTS RESERVED

釜山国際映画祭で行われたトークイベントで「20代の時は早く歳をとって成熟した演技がしたかった。当時は演技しかなかったし、人生を楽しんだこともなかった。でも、その時期があったから、いま、ここで話せている」と、自身の歩みについて語ったイェジン。スターのオーラを常にまといながらも、果敢に新しい役柄を開拓してきた彼女のこれからが、一層、楽しみだ。

文/佐藤結

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