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「嘘から出た真じゃ」兄を溺愛しながらも長政に嫁いだ「お市の方」、策略結婚から読み解く“戦国の愛と宿命”【NHK大河『豊臣兄弟!』10話】

  • 2026.3.19

*TOP画像/信長(小栗旬) 柴田勝家(山口馬木也) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』10話(3月15日放送)より(C)NHK

 

戦国時代のど真ん中を舞台にした『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の主人公は仲野太賀が演じる豊臣秀長。兄弟の絆で“天下統一”という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡を描いた大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の第10話が3月15日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。

 

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「天下布武」では満足しない信長

本放送を観ていると、男たちの野望は果てしなく、常に上を見続けていると感じました。そんな欲があるからこそ、自身は出世し、世には変化をもたらせるのだと思います。

 

蜂須賀正勝(高橋努)は竹中半兵衛(菅田将暉)の屋敷が自分のものより大きいことに納得できず、「解せぬ!」と小一郎(仲野太賀)に怒りをぶつけていました。半兵衛を味方に引き入れた自分たちよりも、半兵衛が織田信長(小栗旬)から高く評価されているのが気に食わないようです。地位が上がって立派な屋敷をもらっても、同僚の待遇が良いと腑に落ちない――普遍的な人間らしい嫉妬が描かれていました。

 

一方、小一郎は「わしは独り身じゃし 広すぎてもかえって手入れが面倒じゃ」と平然としていました。小一郎は熱心に仕事に励んでいましたが、直(白石聖)を亡くし、日が浅い小一郎の「わしは独り身」という何気ない言葉が、筆者は心にひっかかりました。

 

家臣間の待遇の差に無頓着な小一郎ですが、身なりも一段と立派になり、さらには馬に乗ることが認められるほど出世を果たしていました。

小一郎(仲野太賀) 大河ドラマ『豊臣兄弟』10話(3月15日放送)より(C)NHK

小一郎は莫大な褒美相応に仕事をきちんとこなしています。本作では、足軽組頭の要望を聞いたり、家来の諍いを仲裁する役割を担ったりする場面がありました。弥助(上川周作)が「お主、家来どものことを全て覚えておるのか?」とおどろくと、小一郎は「当たり前じゃ。でなければいざという時 素早く指図ができぬではないか」と返答。

 

戦国時代、主君の命令は絶対で、家来を一個人として見ない者も多かった中、小一郎は家来の尊厳を重んじているようにも見えますし、それぞれとの対話を大切にします。小一郎のように、家来に日々気配りをしていれば、将来の自分を助けることができるのです。

 

織田信長(小栗旬)は岐阜を手中に収め、「天下布武」の印を打ち出しました。しかし、現状に満足せず、さらに上を目指しています。

 

そうした中で、明智光秀(要潤)が現れ、主君・足利義昭(尾上右近)を擁して上洛するよう、信長に依頼しました。彼が「三好一族は先の将軍を亡き者にした大悪人 討ち果たし 世の乱れを正さねば」と訴えると、信長はこれを引き受けます。

 

信長が光秀の頼みを受け入れた背景には半兵衛の活躍がありました。半兵衛は光秀の従者が義昭本人であることを見抜いていたのです。正勝よりも大きな屋敷を与えられた半兵衛ですが、褒美に値する働きをしっかりしています。

藤吉郎(池松壮亮) 半兵衛(菅田将暉) 信長(小栗旬) 柴田勝家(山口馬木也)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟』10話(3月15日放送)より(C)NHK

義昭は「将軍の血を引いたばかりに命を狙われておる」と信長らの前で嘆いていましたが、信長の妹・市(宮崎あおい)もまた、織田家に生まれたばかりに運命に縛られていました。

 

「分かりました 浅井家へ嫁ぎまする」 次ページ

市にとって“婚礼=出陣”だったが、「嘘から出た真」に

市は兄・信長を深く愛し、時には大胆に助言をすることもあります。信長もまた市を大切に思っており、妹の助言を素直に受け入れることも少なくありません。

 

市は浅井家への嫁入りを信長に頼まれると、「分かりました 浅井家へ嫁ぎまする」と即答。信長は「すまぬの」と呟いていました。このそっけない一言は他人に謝罪などしない男の口から出ただけに、ひときわ重く視聴者の胸に響いたと思います。

 

浅井長政(中島歩)の人柄を市に尋ねられると、信長は「知らぬ」と短く答えていました。彼について知れば、妹の嫁入りについて迷うからこそ、あえて目を向けないでいたのです。織田家の安泰のため、市を政略の駒とする信長なりの優しさです。

 

市は「市はうれしいのです」「やっと兄上のお役に立つことができまする」と喜びを口にしていました。戦に出る兄を見送る日々の中、織田家のために、大好きな兄のために何かしたいという思いが静かに高まっていたのでしょう。

 

そんな市ですが、不安がまったくないわけではなかったようです。市は「私は織田家のために嫁ぐのじゃ 何をどう取り繕うても見透かされてしまう気がしてな」と、小一郎に本心を明かしていました。

小一郎(仲野太賀) 市(宮崎あおい) 大河ドラマ『豊臣兄弟』10話(3月15日放送)より(C)NHK

小一郎が長政を「気性が優しい」「物静かで穏やか」と想像で語ると、市は「兄上とは似ても似つかぬ…」「私の好みではないな」と返していました。信長に対する溺愛ぶりがうかがえます。

 

小一郎の戯言は真(まこと)であり、長政は優しく穏やかで、市を常に気遣ってくれる男でした。市もその思いを受け止め、「『嘘から出た真じゃ』と小一郎に」と帰り際の勝家に伝言を頼みます。

長政(中島歩) 市(宮崎あおい) 大河ドラマ『豊臣兄弟』10話(3月15日放送)より(C)NHK

勝家が市の言葉を勘違いして受け止め、怒りを露わにすると、市は「相変わらず無骨なやつじゃな 長政殿より 私に合うてるやもしれぬ」となだめていました。信長と似た気質をもつ勝家に好意を抱く市は、兄の後ろを追い続け、兄の面影を常に求めているようにも見えました。

 

「お前と一緒になるほうがマシであったな」 次ページ

市が「いっそお前と 一緒になる方がマシであったな」と続けると、勝家はあわてふためいていました。二人が相思相愛のように見えたのは筆者だけではないはず……。ちなみに、史実では、長政の死後、お市の方は勝家と結婚しています。

柴田勝家(山口馬木也) 市(宮崎あおい) 大河ドラマ『豊臣兄弟』10話(3月15日放送)より(C)NHK

市や家臣たちの活躍により、信長と義昭は京都・畿内を制圧。そして、義昭は第15代征夷大将軍に就任しました。

 

ラストでは、信長が家臣に命じて、戦で困窮した民衆に銭の雨を降らせていました。史実では、信長は義昭を将軍として利用し、“幕府を守る”という大義名分のもとで他国を攻め続けます。民はまたもや犠牲になります。この史実を知っているからこそ、銭をありがたがる民の姿を手放しで喜べませんでした。

 

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