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「もう何を食べればいいの?」過熱する妊活SNSに医師が警鐘。レバー摂取やマニキュア禁止…その努力、実は意味がないかも?

  • 2026.3.17
Maria Korneeva / Getty Images

妊娠は誰でもできるものと語られがちであるものの、実際には不妊や不妊治療と向き合う人も少なくない。最近ではSNSを中心に、「トリメスター・ゼロ」と呼ばれる“妊娠前3カ月の準備期間”が注目を集めている。しかし専門家の中には、この考え方は行き過ぎていると警鐘を鳴らす声も。

「トリメスター・ゼロ」とは?

女性のウェルビーイングについて発信している『Womensync』によると、「トリメスター・ゼロ」とは、妊娠前の3カ月間を指し、将来の妊娠に向けて体を整える準備期間とされているとのこと。

具体的には、排卵機能や体全体の健康状態を高め、妊娠に備えて体にとって最適な環境をつくることを意味しているのだとか。また、トリメスター・ゼロという考え方は、女性だけに向けられたものではなく、男性にとっても精子の質を高めることが重要だとされているという。

Iuliia Bondar / Getty Images

妊娠期間は、3カ月ごとの3つの時期(1〜3カ月、4〜6カ月、7〜9カ月)に分けられており、その“0番目”とされるのが、妊娠前の3カ月間なのだそう。卵子が成熟するまでには約3カ月かかるとされ、その間の食事や睡眠、ストレスなどの生活習慣が、卵子の質や排卵に影響を及ぼす可能性があるということから、妊娠前の体づくりを重視する考え方が広がっているよう。

トリメスター・ゼロに懸念を抱く医師も

トリメスター・ゼロという考え方は、妊娠を望む女性たちの間で話題となっているものの、一部の専門家は、この考え方は大きな誤解を招きかねないと指摘。不妊治療クリニック「CCRM Fertility New York」で妊孕性温存部門を率いているジェイミー・ノップマン医師は、『New York Post』に対しこのように述べている。

「トリメスター・ゼロとは、産婦人科や不妊治療の分野で最近話題になっているもので、受胎前の3カ月間に食事やサプリ、生活習慣を徹底的に整えることで、卵子の質や妊娠の成功率を高められるとする考え方です」
「しかし、妊娠を目指す3カ月前の行動が、妊娠の結果に直接つながると示す決定的な研究は、現時点ではありません。残念ながら、卵子の質は多くの場合、遺伝や持病などの医学的要因に大きく左右されるのです」
Fiordaliso / Getty Images

トリメスター・ゼロは、特に妊娠に悩む高齢の女性たちの間で広がっているというが、ノップマン医師は、こうした取り組みが決定的な効果をもたらすとは考えにくいと指摘している。

「卵子の質を劇的に改善できる“魔法の解決策”はありません。残念ですが、多くの場合、グルテンを控えたり、サプリを飲んだり、砂糖を控えたりするだけで、卵巣の健康が大きく変わると期待するのは現実的ではありません」

また、ノップマン医師は妊娠を目指す患者には、日頃から健康的な生活を心がけるよう勧めているという一方で、トリメスター・ゼロという考え方には懸念も抱いていると語った。

「『トリメスター・ゼロさえ徹底すれば成功につながる』と強調することは、誤った期待を生みかねません。数カ月頑張れば卵巣の状態を変えられるという誤解を広めてしまうのです。それは結果的に女性に責任や負担を押しつけ、『うまくいかなかったのはあなたのせい』という風潮を助長しかねません」
d3sign / Getty Images

医学的根拠のない情報が広がるSNS

特定の食品を避けたり、マニキュアの使用まで控えたりするなど、かなり厳格な生活改善を勧めるケースもあるトリメスター・ゼロ。しかし、TikTokで拡散している妊娠や健康に関する情報の多くは、必ずしも医療資格を持つ専門家によるものではない。

トリメスター・ゼロへの過度な執着が、女性やそのメンタルヘルスに悪影響を及ぼしかねないという懸念は、専門家だけでなく女性たちの間でも広がりつつあるよう。

『9Honey』によると、フィットネス起業家で、2児の母でもあるインフルエンサーのステフ・クレア・スミスは、共同ホストを務めるポッドキャスト番組『KICPOD』でトリメスター・ゼロのトレンドに疑問を投げかけたとのこと。彼女は、専門資格も確かな根拠もない人たちによる妊娠前アドバイスが、SNS上にあふれていることに危機感を抱いたと明かした。

「もはや『赤ちゃんを考えているなら、タバコは控えたほうがいいよ』といったシンプルな話ではありません。『いつか妊娠するかもしれないなら、何年も前からこれもあれも準備しておくべき』というレベルにまでエスカレートしている。“すべてを完璧に整えなければならない”というようなメッセージになっているんです」

妊娠前プログラムに数百〜数千ドルもの費用を請求する人々を批判したステフは、妊娠を望む女性たちの間で“信じるべきこと”として広まっている内容の具体例を挙げ、そのなかには、マニキュアの使用をやめたり、冷たい飲み物を避けたり、さらには毎週レバーを食べ続けたりするケースもあるという。

さらに、血糖値の急上昇が流産リスクを高めるのではないかと不安を抱き、血糖測定器を使用し始め、オレンジジュースやバナナを控えるようになった女性や、香水の使用を控えた女性、さらに「激しい運動をすると受精卵が着床しにくくなると聞いた」という理由でパーソナルトレーナーをやめた女性もいると明かした。

ステフは、トリメスター・ゼロについて語っている動画のキャプションに自身の考えをこうつづっている。

「妊娠や出産に向けて、心も体も整えたいと思う気持ちは本当によくわかります。でも、オンラインで広がる『トリメスター・ゼロ』というトレンドは、正直ちょっと行き過ぎだと感じています。誤解を招きやすく、女性に不必要なプレッシャーを与えてしまっているのではないでしょうか。こうした情報は、SNSではなく専門家から得てほしいと思います。妊娠を望んで努力しているすべての人へ、心からの愛を送ります」

妊娠や出産に限らず、健康に関する情報がSNSやネットにあふれている現代。しかし、そのすべてが医学的根拠に基づいているとは限らないからこそ、不安を覚えたときにはそういった情報に頼るのではなく、医師などの専門家に相談したい。

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