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「俺が教えてあげる」と気取って連れて行った店で、彼女は常連客だった

  • 2026.3.11
ハウコレ

彼女にいいところを見せたい。格上の世界を見せてやりたい。そんな思いで予約した高級レストラン。けれど扉を開けた先で待っていたのは、自分の浅はかさを突きつけられる現実でした。

リードしてるつもりだった

正直に言えば、彼女のことをどこか"わかっていない子"だと思っていました。服装もシンプルだし、ブランドの話にもあまり乗ってこない。だから高級レストランに連れて行けば目を丸くして喜ぶだろう。「メニューも読めないかもしれないけど、俺が選んであげるから大丈夫」「フォークは外側からね」彼女がなにか言いかけるたびに「いいからいいから、任せて」と遮っていたのは、自分が持っている主導権を手放したくなかったからでした。

ウェイターの一言で世界がひっくり返った

店に入って「ほら、すごいでしょ?こういう雰囲気、初めてだよね」と胸を張った直後のことでした。ウェイターが足早にこちらへ来て、俺ではなく彼女に向かって深々と頭を下げたのです。「いつもありがとうございます。本日もいつものお席をご用意いたしましょうか?」常連? この店の? しかも"いつものお席"は、夜景が一面に広がる席でした。俺が「特別な夜を見せてやる」と意気込んでいたその場所を、彼女はとっくに自分の居場所にしていたのです。

見下していたのは自分だった

食事の最中、ふと気づいたことがありました。彼女はメニューをすらすらと読み、ワインも迷いなく選び、スタッフとも自然な会話を交わしている。何も知らなかったのは俺のほうだったのです。好きな食べ物も、趣味も、休日の過ごし方も、深く聞こうとしなかったと思い出しました。「俺が教えてあげる」という姿勢の裏にあったのは、彼女を知ろうとしない傲慢さだったのだと、気がつきました。

そして...

彼女は穏やかな声で「実はこのお店、よく来るの」と教えてくれました。俺は「全然知らなかった」としか言えませんでした。落ち着いてそう言ってくれた彼女の優しさが、かえって胸に深く刺さりました。帰り道、「次はお前のおすすめの店に連れてってよ」と伝えると、彼女はそっとうなずいてくれました。格好をつけることでも、上に立つことでもなく、隣を歩くこと。あの夜、俺はようやくそのことに気づけたのだと思います。

(30代男性・会社員)

本記事は、読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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