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花柄はなぜ、時代を超えて愛され続けるのか?その軌跡を辿る

  • 2026.3.6

ロマンティックにも、グラフィカルにも、あるいはドラマティックにも表現される花々。その鮮やかな色彩と安心感を感じさせるポジティブなエネルギーは、ルック全体を包み込む。セリーヌ(CELINE)では、1970年代の解放的なムードを感じさせる、小花柄に覆われたミニドレスが登場。クロエ(CHLOÉ)では、シェミナ・カマリが50年代のオートクチュールに着想を得た、ふくらみのあるドレープドレスに、パステルカラーの花柄があしらわれていた。またミュウミュウ(MIU MIU)では、エプロンを思わせるドレスにリバティ風の小花柄が散りばめられ、日常着が詩的な存在へと昇華されていた。

セリーヌ 2026年春夏コレクションより。
セリーヌ 2026年春夏コレクションより。
ミュウミュウ 2026年春夏コレクションより。
ミュウミュウ 2026年春夏コレクションより。

歴史から現代まで、花が映す時代のムード

花のモチーフは、時代を超えて咲き続けながら、絶えず再解釈されてきた。古代エジプト、ギリシャ、ローマの織物に早くから見られる花柄は、19世紀の産業革命と新たなテキスタイル印刷技術の発展によって広く普及した。とりわけフランスやイギリスでは、ヴィクトリア様式が隆盛を迎えるなかで花柄が広く親しまれた。

1960年代には、王室からザ・ビートルズデヴィッド・ボウイに至るまで愛された、繊細で密度の高いリバティプリントがワードローブに新鮮な空気をもたらした。やがて花柄はヒッピーファッションの象徴へと転じ、平和、愛、自由を体現するモチーフとなっていった。

花といえば、クリスチャン・ディオールの存在は欠かせない。彼は花を自身の美学の礎としていた。スズランをこよなく愛した彼は「花は神がこの世に与えた、女性の次にもっとも美しいもの」と語っていた。そして彼の1947年のファーストコレクションでは、「ニュールック」がファッションに革命を起こした。なだらかな肩、強調されたウエスト、ヒップを際立たせるペプラムジャケット、ボリューム豊かなプリーツスカートによって描かれたそのシルエットは、花びらが形づくる花冠にちなみ「コロールライン(花冠ライン)」と名付けられた。幼少期を過ごしたノルマンディーに着想を得た、数々の花柄プリントを生み出した彼は、それだけにとどまらず、花を服そのものの構造へと昇華。フェミニニティとタイムレスなエレガンスの象徴にまで高めていった。

またドリス・ヴァン・ノッテンにとっても、花は自身の創作と切っても切り離せない存在だった。それはベルギー郊外に広がる彼の壮麗な庭園にも表れている。そこを訪れることができたのは、ごく限られた幸運な人々のみだ。現在メゾンを率いるジュリアン・クラウスナーも、この花への美学を受け継いでいる。

花柄がこれほどまでに愛されるのは、それ自体が普遍的な感情の言語だからだ。赤いバラは愛と情熱を、ヤグルマギクは繊細さとしなやかな強さを、ポピーは安らぎと慰めを、スイセンは欲望を象徴する。

花を贈る行為は、今もなお想いを託す手段であり続けている。そしてその行為は、もはや他者のためだけのものではない。マイリー・サイラスがヒット曲「Flowers」で歌うように、自分自身に花を買うことはセルフラブの表れでもある。「あなたよりも上手に自分を愛せる」と歌うそのフレーズは、そのささやかな行為を、自分の心をいたわるひとつのかたちへと変えた。俳優のジェレミー・アレン・ホワイトもまた、ロサンゼルスの街で豪華な花束を抱える姿がたびたび目撃されている。その写真はSNSで瞬く間に拡散され、ときに幸福は一束の花から生まれるのだと、あらためて感じさせた。

花束を抱えるジェレミー・アレン・ホワイト
花束を抱えるジェレミー・アレン・ホワイト

花はまた、季節のムードを映し出し、ときの流れを物語る存在でもある。そうしたありかたは、優先順位を見つめ直し、今この瞬間と向き合うことを促すスローライフの精神とも共鳴する。スローライフとは、現代社会の喧騒に抗い、本質への回帰、簡素さ、そして生きている世界への回帰を提唱する考え方だ。市場で理想のブーケを探すというささやかな日常の行為も、そこでは特別な意味を帯びる。

植物愛好家としても知られるデザイナーのクリス ヴァン アッシュは、花に囲まれたセルフィーを日々投稿している。「私にとって花とラグジュアリーはとても似ています。どちらも生きるために不可欠ではないけれど、人生をより美しくしてくれるもの。世界には多くの暴力性や過酷さがあります。だからこそ私は、日常にほんの少しの美しさを添えたいのです」と語る。アート活動にも取り組む彼は、昨年アートディーラーのフランソワ・ラファヌールと協業し、ブロンズ製の彫刻的な花器を制作。花々の美しさを永続的なオブジェに変容させた。

ボッテガ・ヴェネタ 2025年春夏コレクションより。
ボッテガ・ヴェネタ 2025年春夏コレクションより。
ボッテガ・ヴェネタ 2025年春夏コレクションより。
ボッテガ・ヴェネタ 2025年春夏コレクションより。

花柄を単なるプリントにとどめず、彫刻的な装飾へと押し広げているメゾンもある。ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)は2025年春夏コレクションで、レザーやハンドニットを用いて再構築したブーケをランウェイで披露した。こうしたフラワーモチーフの装飾を身につけることは、いまや季節を問わず、クールの最前線にある。絶えず姿を変えながら咲き続けること──それこそが、花柄が持つ不変の強さと時代を超えた魅力なのだ。

Text: Alexandre Marain Adaptation: Kie Uchino

From VOGUE.FR

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