1. トップ
  2. なぜ「ルメール」の店は"家"なのか? 上海の新店舗を含む、旗艦店のインテリアに迫る

なぜ「ルメール」の店は"家"なのか? 上海の新店舗を含む、旗艦店のインテリアに迫る

  • 2026.3.5
SHOTA KONO – RINO QIU

クリストフ・ルメールとサラ=リン・トランがアーティスティックディレクターを務める、フランス発のファッションブランド「ルメール」。端正で上質な雰囲気をまといながら、日常使いしやすいデザインは幅広い世代に支持されている。さらに旗艦店のインテリアデザインも特徴的で、ハウス・プロジェクトと称して各国の文化が息づく歴史的な建築と「ルメール」のエッセンスを融合してつくり上げた、一軒家スタイルの旗艦店を続々とオープン。この記事では、オープンしたばかりの上海と、恵比寿、ソウルの店舗のインテリアをたっぷりと紹介。デザインや建築好きの心に刺さる、「ルメール」の家へ出かけてみよう。

Hearst Owned

はじまりはパリ3区のフラッグシップストア

2023年3月にパリ3区のエルゼヴィ―ル通りにオープンした「ルメール」の旗艦店。 この店舗こそがブランドの価値観をインテリアデザインにまで反映した、出発点となる場所だ。デザインを外部の建築家に委ねるのではなく、ブランド内部のチームで手掛けているのが大きな特徴。その結果、「ルメール」が大切にするクラフトや素材感がダイレクトに感じられる空間となっている。

Hearst Owned

床に敷き詰めたタイルはモロッコの職人が手作業で制作したもの。そこにエンツォ・マーリが1970年代に出版した書籍『Autoprogettazione』をもとにつくり上げた、温かみのある家具が並ぶ。他にもバナナに似た植物アバカで織り上げたラグなど、今では多くの店舗デザインに使用されている要素は、この店舗で最初に姿を現した。

ここからは、アジア3都市に誕生したハウス・プロジェクトへ。独創的なインテリアデザインの全貌を紐解いていこう。

SHOTA KONO – RINO QIU

ルメール ウーカン/中国・上海

2026年1月に上海・徐匯区(じょかいく)の閑静な街並みにオープンした「ルメール ウーカン」。中国人建築家のドン・ダーヨウが1930年代に設計した住居を改修した3フロア構成の店舗。既存の家らしい佇まいを残しながら「ルメール」のコレクションが呼応する空間へと丁寧に整えられた。

SHOTA KONO – RINO QIU

オリジナルの建築要素と新たに加えたディテールの連続性を意識した緻密な修復が施され、中国的な要素とヨーロッパのモダニズムが融合した空間が広がる。

「ここを訪れる人々が、自分自身と再びつながるための、静かに漂うひとときを求めて来てくれたらと願っています。住まいとしての次元は本質的です。服を着るという行為は親密なものであり、公と私の境界がにじみ始める地点でもあります」とクリストフ・ルメールとサラ=リン・トランは語る。

SHOTA KONO – RINO QIU

<写真>階段部分。ここでも建築と「ルメール」のプロダクトが調和する。

SHOTA KONO – RINO QIU

ショップらしからぬ親密な空気をつくり出すのが、キッチンだ。家具はエンツォ・マーリやカーラ・ヴェノスタのものが選ばれ、上海のヴィンテージマーケットで見つけたアイテムやオブジェと組み合わせられた。キッチンには中国・成都を拠点とする陶芸家のリー・チンがルメールのためにデザインした陶芸作品も置かれ、日常的にお店で使われる。

SHOTA KONO – RINO QIU

<写真>緑あふれる静かなテラス。アーチ状の意匠や窓のデザインからも、西洋的な建築要素が見て取れる。

SHOTA KONO – RINO QIU

「このハウス・プロジェクトは上海へのオマージュです。私たちは中国の文化遺産への敬意を空間に織り込み、東と西が出会い、互いの影響が互いを豊かにする接点をつくりました」と語る2人。

他の店舗同様に店内で流れる音楽はファウンダーの2人がキュレーションするほか、中国拠点のクリエイティブスタジオ Huanlü(フアンリュ)によるキュレーション音源も流れる。「ルメール」のコレクションと共に、建築や家具、オブジェ、音楽、書籍といった文化的な存在にじっくりと浸れる拠点となった。

SHOTA KONO – RINO QIU

ルメール ウーカン
住所/Building 2, 40 Wukang Road, Xuhui District, Shanghai, China

MINHWA_MAENG

ルメール ハンナム/韓国・ソウル

2023年11月にオープンした韓国・ソウル初の旗艦店「ルメール ハンナム」は、1970年代に建てられた2階建ての邸宅を改修した。ディレクターの2人が「満たされた日常生活を願う『ルメール』のコレクションとのハーモニーを生み出し、家屋とブティックの境界を曖昧にするような家庭的な側面を備えています」と語るように、通常のストアとは一線を画す温かみのある雰囲気が広がる。

MINHWA_MAENG

改修プロジェクトには建築家・デザイナーのイム・テヒ(Lim Tae Hee)も参加し、いたるところに韓国の伝統的な工芸や素材が取り入れられている。 内壁はクワ科の落葉低木コウゾからつくられた韓紙(はんじ)が使用され、韓国伝統の中綿生地ヌビのカーテンが配された。そこに「ルメール」のシグネチャーでもある、エンツォ・マーリがデザインした家具やモロッコ製のタイル、絨毯で覆われたカウチが合わせられている。

MINHWA_MAENG

緑豊かな庭から自然光が差し込む空間では、「ルメール」が提案する心地よい真のラグジュアリーが体感できる。次のソウル旅の際に、訪れたいスポットだ。

ルメール ハンナム

住所/8-3 Daesagwan-ro 11-gil, Yongsan-gu, Seoul

MARIKO YASAKA

ルメール エビス/東京

2024年11月に東京・恵比寿にオープンした「ルメール エビス」は、一般の住宅かと素通りしてしまうほど静謐な一軒家。
1960年代に個人の邸宅として建てられた建築で、170㎡の面積を誇る上質な2階建て住宅だ。「私たちは、コレクションと家庭的な温もりが息づく雰囲気との自然な結びつきを浮き彫りにするためにこの家を選びました」と、クリストフ・ルメールとサラ=リン・トランは語る。

MARIKO YASAKA

この家に元々備わっていた漆喰や障子という日本的な要素が、ルメールの他店舗でも使用されているアバカマットなどの代表的な什器と共存している。窓からは四季の変化を感じさせる、静かな日本庭園が眺められる。

MARIKO YASAKA

<写真>1階奥。もともと畳だった床を趣を残しながらカーペット貼りに変更。照明は高濱和秀による"サオリ"。

MARIKO YASAKA

個人邸だった時に台所として使用されていた場所には、「ルメール」らしさを反映したキッチンを設置。ここは訪れた人々にお茶を出すなど、おもてなしの場として使用されている。

MARIKO YASAKA

「私たちにとって、場所の歴史を尊重することは非常に重要でした。キッチン、ダイニング、和室など構成はそのままに、自然な形で『ルメール』のコレクションと調和させることが必要だったのです。この場所が特別である理由は、そこにあります」と語るクリストフ。言葉通り、随所に残された建物の歴史と「ルメール」の美学が溶け合った、唯一無二の空間となっている。

MARIKO YASAKA

<写真>石畳が敷かれた庭から建物をみる。丸太の通し柱が屋外にあるのが特徴的。

MARIKO YASAKA

ルメール エビス
住所/東京都渋谷区恵比寿3-21-1



元記事で読む
の記事をもっとみる