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デザイナー栗原たおが語る、タオらしさとは?【女性デザイナーの現在 vol.2】

  • 2026.3.4

「タオらしさを追求することが自ずと強さになる、と考えています」

TAO KURIHARA/栗原たお
TAO KURIHARA/栗原たお

セントラル・セント・マーチンズの学生だったロンドン時代には、服の構造や質感などを確かめたくてコム デ ギャルソンの店によく通いました。特に「ボディ・ミーツ・ドレス、ドレス・ミーツ・ボディ」(1997年春夏)のときは、どうなっているのか本当に知りたくて。新聞で最初に写真を見たときは、感動して涙が出たのを覚えています。

──その頃すでに入社を決意?

そうです。コム デ ギャルソンしか受けないって。母が好きだったので、クローゼットのなかに「なんか不思議な服があるな」と、幼いときから何かを感じていたのだと思います。母は「自立した女性でありたい」とよく言っていて、コム デ ギャルソンから刺激をもらっていたのでしょう。でも、入社試験のときは、絶対受からないと思いました。シャツを一から作る実技で、優秀な人々のなか、私だけ最後まで仕上げられなくて。結局、私も含めてほぼ全員入社しましたが、他の皆はパタンナーで、私だけ企画担当として渡辺淳弥のチームに配属されました。アイデアの提案や渡辺が求めるものを探す、といった仕事です。

──2002年に入社4年目でトリコ コム デ ギャルソンを渡辺さんから引き継ぎました。

川久保から話がきたときは驚きました。即答できなくて、数日経ったとき渡辺から、「1週間もかけて悩むことですか」って言われ、背中を押してもらった感じです。

──2022年にトリコのブランド名がtao(タオ)に変わって、変化したことは?

自分のなかの変化を強いて言うならば、「栗原の好きなもの、いいと思うもの」をもっと前面に押し出したクリエイションにしなければいけない、ということを意識しています。

──2026年春夏は、特に「タオ本来のスタイルをより強く出したかった」ということで。

自分が作るものは「スイート」と表現されることが多いのですが、自分では無意識なので、どういうアプローチをしてもそういう印象になるところがタオなのかな、と感じます。

そよ風に揺れる、自由を愛する赤い花々 <br /> 穏やかな海の波音が心地よく響く、葉山の高台にある写真家・上田義彦の邸宅で行われた今回の撮影。清らかな朝日に照らされた庭で4人のモデルがまとったのは、2026年春夏コレクションの中でも特別な存在感を放ったアーティスト・今村文の作品をプリントに用いたルック。植物をモチーフにした独自の世界観で知られる今村が描くたおやかな「花々」を通し、栗原たおが追求し続ける「強さ」と「優しさ」が開花する。「今村文さんの絵は、花だけでなく根っこを描くのが特徴で、生命の根幹、生命力の強さを感じます。それを身にまとうことで、ポジティブでハッピーな気持ちになれたらと思いました」(栗原)〈左〉ワンピース ¥107,800 中に着たTシャツ ¥8,800 ジャンパースカート ¥77,000 ソックス ¥3,960 シューズ ¥68,200 〈中央左〉ジャケット ¥126,500 スカート ¥121,000 ソックス ¥3,960 シューズ ¥68,200 〈中央右〉ブラウス ¥118,800 中に着たTシャツ¥8,800 ジャンパースカート ¥77,000 ソックス ¥3,960 シューズ ¥68,200 〈右〉コート ¥170,500 中に着たTシャツ ¥8,800 パンツ 参考商品 ソックス ¥3,960 シューズ ¥68,200╱すべてTAO(コム デ ギャルソン)
穏やかな海の波音が心地よく響く、葉山の高台にある写真家・上田義彦の邸宅で行われた今回の撮影。清らかな朝日に照らされた庭で4人のモデルがまとったのは、2026年春夏コレクションの中でも特別な存在感を放ったアーティスト・今村文の作品をプリントに用いたルック。植物をモチーフにした独自の世界観で知られる今村が描くたおやかな「花々」を通し、栗原たおが追求し続ける「強さ」と「優しさ」が開花する。「今村文さんの絵は、花だけでなく根っこを描くのが特徴で、生命の根幹、生命力の強さを感じます。それを身にまとうことで、ポジティブでハッピーな気持ちになれたらと思いました」(栗原)〈左〉ワンピース ¥107,800 中に着たTシャツ ¥8,800 ジャンパースカート ¥77,000 ソックス ¥3,960 シューズ ¥68,200 〈中央左〉ジャケット ¥126,500 スカート ¥121,000 ソックス ¥3,960 シューズ ¥68,200 〈中央右〉ブラウス ¥118,800 中に着たTシャツ¥8,800 ジャンパースカート ¥77,000 ソックス ¥3,960 シューズ ¥68,200 〈右〉コート ¥170,500 中に着たTシャツ ¥8,800 パンツ 参考商品 ソックス ¥3,960 シューズ ¥68,200╱すべてTAO(コム デ ギャルソン)

──「“かわいい”よりも“美しい”と言われたい」と以前おっしゃっていましたが、たおさんにとっての「美しさ」の定義とは?

「美しさ」は憧れですね。言語化できない、有無を言わさず心に突き刺さる強いもの。その一方で、「美しさ」の価値観自体を問いかけるものでもあると思います。特に川久保が作るものは、エネルギーがあふれていて、いつも問いを含んだ美しさを感じます。(美とは)「重なり合うもの」──自分のなかではそういう定義がある気がします。

──川久保さんからショー後にコメントは?

ないです(笑)。よっぽどのときはあると思うので……。

──今シーズンはアーティストの今村文さんとのコラボレーションがありました。

コレクションリサーチのなかで作品を知って、すぐ会いに行きました。文さんの絵は、花だけでなく根っこを描くのが特徴で、生命の根幹、生命力の強さを感じます。それを身にまとうことで、ポジティブでハッピーな気持ちになれたらと思いました。ショーの音楽はそんな気分を表現するのにブラジルのショーロをインスピレーションにしました。ここ何年かは特に「前向き」でありたい、と強く感じています。要因はさまざまですが、いろいろな世界情勢から感じることも多い日々なので、それも少しあるかもしれませんね。

──「企画」の仕事が今にも通じていますね。

直感で動くタイプですね。いつも必死になってさまざまな角度から考えているので、自分でもリサーチ力や行動力はあると思います。何より自分の口から相手に気持ちをお伝えしたいので、外にもよく出かけます。でも、川久保のほうがもっとすごいと思います。

──川久保さんとの信頼関係を感じますか。

あると思います。今まで続けて仕事をやらせてもらっていること自体が、そうなのだと。時々不思議になるのですが、コム デ ギャルソンという会社で仕事ができているということがすごいな、と。今でも本当に感じています。

──今号は「シスターフッド」がテーマですがタオを着る方たちに感じてほしいことは?

服を「着たいな」と純粋に感じる気持ち、着たら気持ちが高揚するな、と思っていただけるだけでうれしいです。自分の表現を貫くことが自分の仕事だと思うので、それをちゃんと見せることで何か伝わると信じています。

──タオの服には「優しさと強さ」があります。栗原たおの「たおやか」さは強さでもある。

タオらしさを追求することが自ずと強さになる、と考えています。優しさを貫くには強さが必要。そのためには日々何かを感じることが大事で、すべての人にとって無関心がいちばん怖いこと。好きとか嫌いとか、全部をひっくるめて感じることが大切。それのみです。

「ただそこに在る」かのような、自然体の美しさ <br /> 「今回はタオ本来のスタイル──そして私自身に忠実なコレクションを作ることに集中しました」とコレクションについて語った栗原。意外な場所にギャザーを寄せたグレイのウールコートや、花びらを思わせるシワ加工が有機的なボリュームを生み出すエステルスカート。即興のようなラフさも漂う甘すぎないディテールが、ベーシックなデザインの中にタオらしい独自のリズムを吹き込む。コート ¥214,500 Tシャツ ¥8,800 スカート¥129,800╱すべてTAO(コム デ ギャルソン)
「今回はタオ本来のスタイル──そして私自身に忠実なコレクションを作ることに集中しました」とコレクションについて語った栗原。意外な場所にギャザーを寄せたグレイのウールコートや、花びらを思わせるシワ加工が有機的なボリュームを生み出すエステルスカート。即興のようなラフさも漂う甘すぎないディテールが、ベーシックなデザインの中にタオらしい独自のリズムを吹き込む。コート ¥214,500 Tシャツ ¥8,800 スカート¥129,800╱すべてTAO(コム デ ギャルソン)

Photos: Yoshihiko Ueda Styling: Mana Yamamoto Hair: Jun Goto at Ota Office Makeup: Yuka Washizu at Beauty Direction Models: Serena Motola, Lala Takahashi, Mayo Ikeda, Bebe Text: Mitsuko Watanabe Editor: Gen Arai, Reona Kondo

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