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創業者のスピリットが再び芽吹く新生「マルニ」 回帰ではなく“拡張”で新章へ

  • 2026.3.3
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刷新か、継承か、それとも転換か。新クリエイティブ ディレクターによるデビューコレクションは、メゾンの方向性を示す意思表明に他ならない。新たに「マルニ」の舵を取るベルギー出身のデザイナー、メリル・ロッゲが示したのは、「創業者のスピリットの拡張」という明確なスタンスだった。ブランド初期のルーツを尊重しながら、より削ぎ落とされた“風変わりなエキセントリシティ”へと舵を切っている。ショー後のバックステージで彼女は、「私にとって重要だったのは、スピリットを保つこと。ただし、直接的になりすぎないことでした」と語っている。

ロッゲは創業者コンスエロ・カスティリオーニに続く、「マルニ」初の女性クリエイティブ・ディレクター。「マーク ジェイコブス」や「ドリス ヴァン ノッテン」でキャリアを積んだ彼女は、2020年に自身の名を冠したブランドを設立し、パリ・ファッションウィークでコレクションを発表している。「マルニ」は1994年にブランドを設立したカスティリオーニの後、2017年にはフランチェスコ・リッソが就任し、約10年にわたり新世代へとブランドを広げてきた。リッソがアーティスティックなアプローチで前衛的な方向へと導いたのに対し、ロッゲはその原点へと再び接続し、ブランドを日常に根差した存在へと取り戻す試みのようだ。

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イタリア人デザインデュオFORMAFANTASMAと共に手がけた会場は、アーティストが日常のオブジェクトを手描きした鏡と、ソファが配置され温かみのある邸宅のような空間を作り込んだ。

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ショーは、創業初期のシグネチャーでもあった膝丈コートに、巨大なスパンコールを全面にあしらったペンシルスカートを合わせたルックで幕を開けた。続いて登場したシースルーのスカートやポルカドットのトップスは、2000年代初頭の「マルニ」を想起させる。ボタンやステッチを機能的でありながら装飾的な要素として際立たせる姿勢にも、創業者のスピリットが息づいている。 「(2012年に発売された)『H&M×マルニ』のコラボレーションで登場した、黒とグレーのドット柄のアイテムは今も私のクローゼットにあります。ボタンをドットに思わせるブランドの象徴的なデザインは今回、マザーオブパールや巨大なパイエットなどさまざまな手法で再解釈しました」とロッゲ。

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アーカイブから引用した水平・垂直・斜めのストライプがパンツやニットに交錯し、柄とテクスチャーは衝突し合い、ルックごとに意外性を生み出す。「いくつかのプリントは踏襲していますが、色を変えるなど再解釈を加えています。アーカイブの気配は感じられますが、文字通りの復刻ではありません」。テーラードのベーシックアイテムに、多方向のチェック柄プルオーバーやドレス丈シャツ、チャンキーニット、ストライプのセットアップといったエキセントリックなピースを重ねる。前任者のマキシマルなアプローチに比べれば抑制が効いているが、決して控えめではない。カラーパレットも一言では言い表せないほど多層的で、鮮烈な色と繊細なパステルが共存する。

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メゾンを象徴する二つのアクセサリーもランウェイに復活した。再解釈されたフスベットサンダルとトランクバッグである。ロッゲは、「デザインチームの私たち自身が着たい、長く大切にしたい、そして自分なりに組み合わせたいと思えるピースを作ることが意図だった」と明かした。加えて、ベルト、ネックレス、イヤリング、襟といったアクセサリーはボリュームと躍動感を強調し、コレクションにさらなる触覚的魅力を与えている。

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「マルニ」のコードで構成されていながら、その着地点は極めてオルタナティブで、遊び心に満ちたコンテンポラリーな自身のブランド「メリル ロッゲ」に近いように感じられた。どこか反逆的なスタイリング、意表をつく色彩実験には自身の美意識が刻まれている。とりわけ、テクスチャーもモチーフもバリエーション豊かなニットウェアは、彼女の真骨頂である。自身のブランドと同時に、メゾンのクリエイティブ ディレクターを務める二重構造は、多くのデザイナーにとってその棲み分けが常に課題となる。しかしロッゲには、「マルニ」に対する明確なヴィジョンがあるようだ。

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「『マルニ』の人物像には、大胆なエレガンスがあり、強い自己意識がある。それは、いわゆる“ファッション・ヴィクティム”的な人々に響く部分もありますが、より広い層にも開かれています。つまり、ファッションに関心がある人だけでなく、カルチャーやアートに関心を持つ人々にも訴えかける。ファッションの枠を超え、より文化的な領域との結びつきが大切だと考えています」。ブランドを再び文化的で、風変わりでありながら日常に根差したラグジュアリーへと引き寄せる試みは、好発進といえる滑り出しで幕を開けた。

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