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The Attitude ― 美しき姿勢 ― 【Vol.4】

  • 2026.2.27

俳優として、国内だけでなく韓国、アメリカなど海外でも活躍している玄理さん。今回は、国際女性デー特別編として、映画プロデューサーの福間美由紀さんをゲストに迎え、映画業界のジェンダー平等や作品内で描かれる女性像の変化について語っていただきました。「男性社会」といわれる映像業界で第一線で活躍してきた福間さんが考えるthe Attitudeとは? YouTube動画もあるので、ぜひご覧ください。

プルオーバー ¥260,700 スカート¥286,000(すべてボッテガ・ヴェネタ/ボッテガ・ヴェネタ ジャパン) イヤリング ¥1,874,400 リング〈右手・中指〉¥913,000 〈右手・薬指〉¥292,600 〈左手・中指〉¥204,600 〈左手・薬指〉¥913,000 [すべて予定価格](すべてブシュロン/ブシュロン クライアントサービス) TAKESHI TAKAGI

玄理さん(以下、H):お会いしたきっかけが、ケリングさんが主催されている「ウーマン・イン・モーション」に福間さんが登壇されていて、お話を聞かせていただきました。その時もっとお話してみたいと思っていたので嬉しいです。本日はよろしくお願いします。

福間美由紀さん(以下、F):よろしくお願いします。

H:そこでお話されていたのが、私自身にも深く関わる映画業界における女性の活躍や創造性がテーマで、とても興味深かったです。福間さんは、そもそもどのようなきっかけで映画業界で仕事をはじめることになったのでしょうか。

F: この業界に入ったきっかけは、本当に偶然でした。大学院で比較文化や美術史を学ぶなかで、「人が何かを表現し、それを社会で共有すること」に強く惹かれていました。そのなかでも映画は、誰にでもひらかれていて、言語や文化、ときには政治さえも超えて、広く深く届いていく。その普遍性に可能性を感じていたんです。

そんな時、当時暮らしていたマンションのオーナーがあなた向きの募集を見かけたよって声をかけてくれたんです。その募集内容が、テレビ制作会社の映画事業や海外展開で。「なんかおもしろそう!」と思って受けたら最終面接で、是枝裕和監督とお会いしました。

H:そうなんですね! そんなご縁があったんですね。

F:はい。当時、映画『誰も知らない』の後で監督が次々と企画を出していた時期だったので、映画事業に専念していくようになりました。

H:福間さんが映画業界に入られた2000年代と比べると、今はいろいろなことが変わってきているのではないでしょうか?

現場から変える。本気の意識改革が沸き起こる

F:そうですね。映画業界は、伝統的に男性中心の構造なので、女性たちは働きにくさ、居づらさを感じることはありました。でも少しずつそれに対して問題意識を持つ人が増え、改善されつつあります。例えば、監督やスタッフの女性の数も増えてきましたし、出身国や地域も含めて、業界全体の風景が着実に変わってきました。そうした多様化・国際化の流れのなかで、想像力とリスペクトがチームづくりの土台になると実感しています。

H: そうですよね。私が俳優の仕事を始めて15年くらい経ちますが、“だいぶよくなった!”というのは感じます。“Me Too運動”など世界的な流れに加え、ネットフリックスやディズニープラスといった海外企業が日本の映像業界に入ってきた影響も大きいと思います。

F:おっしゃる通り、グローバル配信作品やインターナショナルな制作チームを経験したことで、「日本の現場はどうなんだろう」と客観的に考えるようになりましたね。個人的にもフランスや韓国などの労働基準を肌で感じたことで、日本の当たり前を一度疑ってみる視点を持てたのは大きかったです。

日本では、2023年に「映適(日本映画制作適正化機構)」が設立され、撮影時間やハラスメント、契約など、環境改善の動きが本格化しました。その前年に、海外で制作を経験してきた是枝監督や深田晃司監督、諏訪敦彦監督たち、そして西川美和監督、岨手由貴子監督など女性や若手の監督たちが『A4C(日本版CNC設立を求める会)』を立ち上げ、現場の声を積極的に発信したことも、大きな変革の流れのきっかけになりました。

H:確かにそうですね。

F:根本的に変えていこうという、みんなの本気の意識改革ができてきたのだと思います。

シャツ ¥359,700 スカート ¥280,500(すべてボッテガ・ヴェネタ/ボッテガ・ヴェネタ ジャパン) ピアス ¥2,164,800 リング〈右手・人さし指〉 ¥951,500 〈右手・薬指〉上 ¥250,800 下¥880,000 〈左手〉¥1,333,200[すべて予定価格](すべてブシュロン/ブシュロン クライアントサービス) TAKESHI TAKAGI

H:福間さんは、映画やドラマに登場する女性像について変化を感じますか?

F:感じています。近年は女性たちもただ「強い/弱い」「善/悪」といった単純な二項対立ではなく、より複雑な矛盾を抱えたリアルな人間として、また、自分の意思で選び、運命さえつかみにいく主体的な存在として描かれることが増えてきました。時代劇もそうですね。私自身、例えば昭和が舞台の作品でも制作の過程で、そうしたキャラクターの造形を意識しています。

H: 本当にその通りだと思います。10年前の日本のドラマでは、若い女性の役は恋愛中心だったように思います。国内で仕事をしているとあまり意識しませんが、海外のオーディションを受けるなかで違いを強く感じていました。

海外における日本人女性の役は型にはまったイメージで描かれることが多い。忍者ガール、芸者、誰かの妻……。一方、韓国人女性の役はひとりで異国からやってきた移民など、強いキャラクターが求められることが多く、ギャップを感じていましたが、最近になってようやく、海外作品で日本人女性役に求められるものが変わり始めたように思います。

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F:それは面白いですね。作品のなかで描かれる女性像が現実を拡張していくこともあると思います。観る人たちの意識や価値観も変わり、その変化がまた作品に反映されていく。そうやって、お互いに影響を与え合っているのが、今の状況なのかもしれませんね。

作品の中で描かれる女性像が現実を拡張していく

H: そうですよね。描かれる女性像によって影響されるというのはありますよね。ちなみに、福間さんは、これまでに影響を受けた女性はいますか?

F:私の母親です。母は、“ものづくり”が好きな人で、小さい頃に洋服を作ってくれました。日常の中でものづくりの喜びがあり、誰にでもクリエイティブな一面があり、それがまた誰かを幸せにしていく。そんなことを母の姿から影響を受けてきたと思います。

F:玄理さんは、影響を受けた方はいますか?

H:今、私に影響を与えているのは、演じている役ですね。関わる作品が大きくなるほどにその役を演じている時間が長くなっていく。仕事として割り切れないというか、自分の人生の一部がその役に埋まっているというか。その時の役とかその現場にいる方に影響を受けていますね。

F:素敵ですね。仕事として割り切れないって、共感します。

TAKESHI TAKAGI

迷い、もがきながら歩き続ける姿を見せていけたら

H:お母様に影響を受けた福間さんですが、これからどんな女性でありたいですか?

F:男性のように一度にたくさんの仕事はできないところもあるけれど、細い糸のように続けていく姿を見せていけたらと思います。

H:それはなぜでしょうか?

F:ある後輩と会話をしていてこんなことを言われたんです。「見ていたから、この業界でも母になって続けることができるんだと初めて思えた」と。自分が何か後輩に教えよう、ロールモデルになろうではなくて、迷いながらも、もがきながら歩き続ける姿を隠さずに、ちゃんと見せていくことで、何か受け取ってもらえるものがあるのではないかなと感じています。

H:そうなんですね。働く女性として、母として、進み続けていく福間さんですが、最後に福間美由紀さんにとってのアティチュード=品格を教えてください。

F:「越境」です。

H:その理由を伺えますでしょうか。

F:国境でもジェンダーでも世代でも、社会にはすでに境界や枠組みが存在しています。それにとらわれることなく、自分の好奇心の赴くままに、未知の領域へ飛び込んでいく気持ちは、これまでを振り返ってみても自分の中にあって、これからも胸に置いておきたい言葉ですね。

H:とても共感しました。今日は福間さんにお会いできてよかったです。

【YouTube動画】今回のインタビューを動画でもチェック

国際女性デーにちなんだお話や映画業界の変化についてまだまだお話しています! ぜひ動画でもご覧ください。

【PROFILE】

玄理

2010年に俳優としてデビュー。その後、執筆やラジオ、アートなど多彩な分野で活動。日本語、韓国語、英語を話すトリリンガルで、グローバルに活躍。’26年にはディズニープラスで『殺し屋たちの店 シーズン2』が公開予定。またNHK連続テレビ小説『風、薫る』への出演が決定している。

福間美由紀

映画プロデューサー。島根県生まれ。東京大学大学院修了後、ジュネーブ留学を経て映像制作会社に勤務。2014年、是枝裕和監督が率いる「分福」の立ち上げから参加し、映画やドラマを企画・プロデュース。主な作品に『真実』(19/仏・日/ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門)、『ベイビー・ブローカー』(22/韓国/カンヌ国際映画祭最優秀男優賞)、Netflixシリーズ『阿修羅のごとく』(25/ソウル国際ドラマアワード監督賞)。また、ピエール・ユイグ『Untitled/Human Mask』(14)、新鋭監督5人によるオムニバス『十年 Ten Years Japan』(18)、石川慶監督によるカズオ・イシグロ原作『遠い山なみの光』(25/日・英・ポーランド/カンヌ国際映画祭「ある視点」部門)など、多様な作り手と共に、さらなる国際共同製作の可能性を広げている。

Photos:TAKESHI TAKAGI
Videographer/Gaffer : KAZUNE YAHIKOZAWA[Paradrift Inc.]
Camera Assistant : NATSUKI OKUDA
Sound Recordist : SABURO SAITO[Paradrift Inc.]
Video Editor:MARIN KANII
Title Motion:MIYUKAi UCHIDA
Video Producer : YUKI SATO
Hair&Make-up:TSUBASA KASE(玄理さん)、AKI TAKAHASHI(福間美由紀さん)
Styling:SOHEI YOSHIDA[SIGNO]
Text:KYOKO TAKAHASHI

SPECIAL THANKS:KERING JAPAN

※この記事は、25ans(ヴァンサンカン)4月号掲載(2026年2月27日発売)の内容を一部加筆・修正しています。

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