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駅員「手を引いて乗り場までご案内しましょうか」ホームの場所を聞く人が多発する駅で“思いついた対応策”に「今では反省しています」

  • 2026.3.28
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。

今回は、私の駅員時代の失敗談をご紹介します。振り返ってみると「バカだなあ」と呆れてしまう、ある駅員の笑い話です。

「乗り場はどこですか?」

駅員として働くなかでお客さまとの感覚の違いを認識させられることのひとつは、駅構内の案内の複雑さです。ピクトグラムや案内標識、電光掲示板のデザインは統一されているので、駅員は自身の勤務している駅でなくともすぐに理解できます。

しかしお客さまにとっては案内標識も電光掲示板も難解極まるようで、

「あそこに書いてある〇〇行きはどこに行けばいいんですか?」

とよく質問されました。

「3番乗り場ですよ」
と言って右手を改札口奥の「→3」と大きく書かれているほうへ伸ばすと、お客さまは「なるほど」と進みます。

その当時私は、毎日同じ質問を受け、当時の私は未熟にも心の余裕をなくしていました。

毎日同じ質問の嵐

どうやら、原因は電光掲示板のデザインにあるのではないかと感じていました。電光掲示板には列車の種別、行き先、発車時刻とあわせて、乗り場と両数が隣同士で表示されていました。

このせいで3番乗り場に2両編成で来るのか、2番乗り場に3両編成で来るのか一目でわかりにくいのです。

「7番乗り場はどこですか?」
と5番乗り場までしかない駅でも尋ねられる、ということもよくありました。

また

「乗り場は向こうです」

と指し示した先にすぐホームが見えるわけではなく、階段の上り下りや右左折が必要な構造だと

「でも…」

と不安そうにこちらを見つめる方もいました。

編み出した「完璧な」作戦

もちろん、初めて来るお客さまがこの駅に何番乗り場まであるかわかるはずはありませんし、私の説明がわかりにくい場合もあります。

お客さまに伝わらないのなら、伝わるまで手を変え品を変え説明するのが駅員の仕事です。

とは言うものの私は弱い人間なので、ときには「いま忙しいのに…」とか「そんなにわかりにくい?」と思ってしまうこともありました。やがて「どうにかして対応を減らせないものか」と考えはじめます。その結果”人間の心理を利用した完璧な作戦”を思いつきました。今思えば、駅の構造に不慣れなお客様の不安にまったく寄り添えていませんでした。

その作戦とは、電光掲示板と案内標識に書いてある乗り場への簡単な行き方を説明してもフリーズしてしまっているお客さまに

「どうしてもご不安なら、私が手を引いて乗り場までご案内しましょうか?

と提案する、というものです。

対応して感じたこと

子供でもない限り「手を引いて連れて行ってもらう」という経験はないはずです。大げさな提案をこちらからすると

「いえ、そこまではしなくていいです。自分で行けますから」

と自ら通路の奥へ進んでくれます。

「これでかなり楽になるぞ」と思いました。同時に「やっぱり行き方はわかっていたんじゃないか。何をためらっていたんだ?」とも感じました。ところが、心理学者でもない私のこの作戦はほどなくして大きな穴が見つかります。

この先の展開が読めていた読者の方も多いと思いますが、あるお客さまに

「私が手を引いて乗り場までご案内しましょうか?」

と提案し、

「ああ、ぜひお願いします」と。

当然の結末

自分で「ご案内します」と言い出した手前、そのままお見送りするわけにもいかず、お客様の手を引いて乗り場までエスコートすることにしました。

改札口で言葉を尽くすよりもずっと時間がかかりますし、自分が持ち場を離れることで他のスタッフに負担をかけてしまう……そんな申し訳なさや焦りが、当時の私にはありました。

「ここが乗り場です。次に来る列車に乗れば大丈夫ですよ」とお伝えしながらも、心のどこかで「言葉だけでも十分伝わったはずなのに」と、効率ばかりを考えてしまっていたのです。

そんな風に、親切心を損得勘定で測ろうとした自分の未熟さを、今ではとても反省しています。

駅で困ったことがあれば、どうか遠慮せずに駅員たちを頼ってください。もっと真っ直ぐな気持ちで、お手伝いしてくれるはずです。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


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