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災害時の「お金と法律」(第4回 大災害時の本人確認~運転免許証やマイナンバーカードがなくても大丈夫)

  • 2026.2.17

命を守る行動が最優先、モノを取りに戻らないで!

市町村の窓口や金融機関などで何らかの手続きをしようと思うと、平時であれば、運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類の提示を求められることも多いはずです。犯罪防止や人違いを避けるためにも必要なことですね。普段は財布やスマートフォンと一緒に持ち歩いていることも多いでしょうから、負担になることは少ないはずです。

しかし、災害時には、本人確認書類やスマートフォンを持ち出せないまま、避難所や遠方へと避難せざるを得ない場合もあります。そのようなときはいったいどうしたらよいのでしょうか。

危険が迫っているときには決して貴重品などを取りに戻ってはいけません。また、危険を冒して災害後の危険地帯や、倒壊の恐れのある建物に立ち入ってもいけません。災害時に命を守るための行動「お・か・し・も」(おさない、かけない、しゃべらない、もどらない)や「津波てんでんこ」などの行動指針や合言葉は、いつの時代でも、誰であっても、非常に大切です。

手元に何もない!本人確認はどうすればいいの?

金融機関のキャッシュカードや通帳、医療機関で提示すべき健康保険証(マイナ保険証)などを紛失し、かつ 手元に運転免許証もなく、マイナンバーカードもなく、スマートフォンもないような場合、金融機関、医療福祉機関、自治体、公共料金等事業などで、どうやって本人確認をしたらよいのでしょうか。

災害救助法が適用された災害など、大規模な災害においては、本人確認書類の提示が厳格に求められることはありません。手ぶらで窓口を訪問し、自らの「氏名」「住所」「生年月日」といった基本的な情報を申告する(書類に記入して提出する)ことで十分なのです。

もちろん、非常用持ち出し袋に本人確認書類のコピーなどを準備できるのであれば、それに越したことはありません。しかし、持ち出せなかったからといって焦ることはありません。ましてやリスクを冒して取りに戻るということは絶対にしないでください。

国が金融機関や医療機関に本人確認の便宜を図るよう要請

災害救助法が適用されるような大きな災害においては、国から事業者に対して、被災した契約者やサービス利用者の本人確認においても便宜を図るよう要請をします。

たとえば、金融機関に対しては、財務省(被災地を管轄する各財務局)が「金融上の特別措置」(災害等に対する金融上の措置要請)と呼ばれるお知らせを出します。この要請には、「被災者等の被災状況等を踏まえた確認方法をもって預金者本人の申出であることを確認して払戻しに応ずること」と記載されています。

国からの要請を受けて災害時の金融機関は、被災者から「氏名」「住所」「生年月日」について申告を受け、データベースから同一のものを探し出して、本人確認を行う対応をしてきました。キャッシュカードや通帳がなくとも預貯金を引き出せるのです。

また、健康保険証(マイナ保険証)を紛失したり、自宅に残したまま避難していることで健康保険証を提示したりできない場合でも、医療機関で保険診療を受けることもできます。災害時には、厚生労働省が、医療機関に対して、被災者から氏名、生年月日、住所、連絡先(電話番号等)の提示を受けて本人確認(被保険者であることの確認)をするよう要請するためです。

金融機関や医療機関による災害時の窓口対応については、次回以降でまた詳しく説明します。

罹災証明書の申請、本人確認書類がなくても大丈夫

罹災証明書とは、災害時の自宅の被害の程度を証明する書面であり、多くの手続きで参照される「生活再建への第一歩」といえるものです。では、罹災証明書の申請の際に運転免許証などを持参しなければならないのでしょうか。

結論から言えば、罹災証明書の申請の際に本人確認書類は不要です。法律上も申請時の必要資料となっているわけではありません。

2024年の能登半島地震の際、石川県珠洲市では、1月9日頃から罹災証明書の受付を開始しました。珠洲市のホームページでは、罹災証明書の受付開始のお知らせとともに、受付窓口へ持参すべき書類に関して「本人確認書類(マイナンバーカードや免許証など) ※お持ちでない方も受付可能です。受付時に申出てください」との案内をしていました。本人確認書類がなくても罹災証明書の申請ができることを明確にした、丁寧できめ細やかな被災者に寄り添う情報発信だといえます。

実は珠洲市での案内当初、本人確認書類に関して、「※お持ちでない方も受付可能です。受付時に申出てください」という記載がホームページにありませんでした。そのため、現地で支援活動をする民間支援団体などから、本人確認書類が手元にない被災者(避難者)はどうしたらよいのか、という声が上がっていたのです。幸い、早い段階でこの課題を認識することができたので、すぐに石川県や関連自治体へ、罹災証明書の申請時には、本人確認書類の持参は必須ではないという説明をさせていただくことができました。石川県や民間支援団体の方々の協力もあり、その後速やかにホームページの案内改善が実現しました。

自宅の被害の状況を保存しておくために、災害発生直後、写真を撮影することが推奨されています。政府広報ホームページでも「災害で住まいが被害を受けたとき最初にすること~被害状況を写真で記録する~」という案内があるほどです。現場保全という観点からは、可能なら写真撮影はしておくべきです。しかし、危険を冒してまで写真撮影をすることはやめましょう。

罹災証明書を申請する際にも、写真の提出や提示は必須ではありません。法令で添付書類として写真が要請されているわけでもありません。写真がなければ罹災証明書がもらえない、というのは間違いです。

過去の災害では、明らかに「全壊」(住家の損害割合50%以上)とわかるようなケースでは、写真判定により、罹災証明書の発行がスムーズになったという場合もありました。しかし、住家被害認定はあくまで市町村の任務です。申請者が写真を必ず用意しなければならないというわけではないのです。

市町村のなかには、被災者が罹災証明書を申請する際に、住家被害の写真や修繕の見積書を必要書類として添付することを要求したり、自治会長による証明書の添付を要求したりするものが、相当数存在しています。ほかにもウェブサイトを検索すると、罹災証明書の申請に、写真が必須書類であるようにしか読めないような罹災証明書交付要綱を公表している市町村も多くあります。

日本弁護士連合会は、「罹災証明書交付申請において、被害住家の写真の提出を求める等の取扱いの是正を求める意見書」(2023年9月15日)で、罹災証明書の交付申請の際に写真の添付を原則必要としない運用とすべきことなどを求めています。

市町村に対しては、将来の災害に備え、いまのうちに罹災証明書に関する手続きの総点検と、本人確認書類や写真添付に関する運用の見直しをお願いしたいと思います。

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