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不安定にならないためのハンドル入力とフォーム【特集|0.1秒のセルフコントロール】

  • 2026.2.15

サーキットでのスポーツライディングにある程度慣れてくると、ファンライド層でも多くのライダーが、こう思うことだろう。「もっとスムーズに、もっと速く走ってみたい!!」ところが、はやる気持ちのまま立ち上がりで早めにスロットルを開ければ、車速が上がってバイクは途端に曲がらなくなり、立ち上がりでロスが発生。その結果、ストレートは遅く、コーナーはリスキーになっていく。だから元MotoGPライダーの中野真矢さんは、こう話す。「スロットルを開けることを待てる者にのみ、走りの進化が訪れる」と。

PHOTO/S.MAYUMI TEXT/T.TAMIYA

取材協力/本田技研工業 ☎0120-086819 https://www.honda.co.jp/motor/

デジスパイス https://dig-spice.com/jp/

不安定にならないためにハンドル入力とフォームを意識しよう

僕のライテク企画では毎回のように取り上げている話題ですが、他のさまざまなスポーツと同じようにバイクのスポーツ走行でも、正しいライディングフォームがマスターできていることが、マシンを自在に操ることにつながります。

他のスポーツと同じくバイクのフォームにも絶対的な正解はないのですが、やっぱりセオリーというものは存在していて、これがある程度はできていないと、次のステップに挑戦することが難しくなります。

今回のテーマは、スロットル開け始めをちょっとだけガマンして旋回力を引き出すことですが、これは深いバンク角を維持した状態で車速を落とすことを意味するので、このときに適正なライディングフォームができていないと、マシンが不安定になりがちです。また、繊細なスロットルワークも求められるライディングテクニックなので、フォームが悪くて右手の動きが阻害されているようだと、同じくスムーズな走りの実現にはつながりません。0.1秒待つために、ライディングフォームにも目を向けてみましょう。

一方、ハンドルイン側に微少な入力を加えるプッシングステアは、進入時はいいのですが、旋回中に意識的な操作を加えようとすると、走りのリズムが崩れたり誤操作でむしろ不安定になったりしがち。まずは無意識で問題ありません。

(中野真矢)

①:内側からハンドルに入力し微少なプッシングステアで調整

旋回中はハンドルをフリーにしていると感じがちだ。中野さんも、自身の走りをあらためて検証すると、フルバンク中でも微妙に舵角を調整し続けていることに気付いたと言う。セルフステアには車体を起こそうとする力も働くため、イン側のハンドルを押す(支える)微少なプッシングステアで調整している。

②:後輪のグリップを安定させるためシートに荷重をかけていく

フロントブレーキをリリースした直後から、リアタイヤにシートを介して荷重。スロットルを開け始める段階になったら、ほぼ意識はリアのみに集中させていく。いずれの段階でも、ハングオフでの旋回中は、外足の内膝あたりで燃料タンクをホールドして下半身を安定させることがもっとも重要だ。

③:ハンドルから伝わる手応えで前輪のグリップを確認する

ライダーの感覚的には特定の部位で接地感を探っているイメージはなく、とにかく全身をセンサーに活用しているのだが、フロントタイヤの接地感はハンドルに伝わる極めて微少な動きや振動によるところが大きいようだ。上級者は後輪に意識を集中している瞬間でも、手のひらセンサーは稼働させ続ける。

不安定にならないためのハンドル入力とフォーム【特集|0.1秒のセルフコントロール】
【適宜左右のステップを踏んでバランスをコントロール】ステップワークと聞くと、左右どちらかのステップを瞬間的にガツンと踏み込むような操作を思い浮かべる人が多い。もちろんそういう瞬間もあるが、上級者は左右のステップに常に少しずつ荷重し続けており、その荷重量や左右の配分を微妙に調整してマシンのバンク角やバランスを調整している。

①:イン側の手の甲にアゴを近づけるように頭を下げる

マシンバランスやサスペンションの性能、タイヤのグリップが大きく向上し、さらに電子制御も高度化していることから、近年は市販車でも頭をイン側にズラすフォームが主流に。アゴをイン側の手に近づけるイメージで、上半身を低く構えよう。

②:バイクと路面の間に入るつもりで身体全体を落とす

身体を大きくイン側にズラすときに、車体の進行方向に対して真横に移動してしまうと、ライダーとマシンが離れてしまい、マスの集中につながらない。バイクと地面の間に潜り込むように、車体と近い位置でコンパクトにハングオフする。

③:地面に突き刺すイメージで肘を曲げて横に張る

イン側の肘を突っ張っていると、腕がつっかえ棒になってしまい、頭をイン側にオフセットして上半身を低く構えることができなくなる。旋回中はイン側の肘を曲げ、若干横に張るイメージを持つと、自然と現代的なハングオフのフォームになるはずだ。

【驚異の旋回力を生み出すMotoGPライダーのフォーム】マシンそのものと電子制御、タイヤの進化により、現在のMotoGPは最大バンク角が60度を超えるのも普通。マルク・マルケス選手の登場以降、肘擦りすら当然になった。市販車で同じことは無理だが、フォームの雰囲気をマネてみるのはアリ!
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二輪運動力学の視点から考察:無意識のうちにライダーは必ずプッシングステアしている

プッシングステアの延長線上にあるのが保舵力です。これはバンク角を安定させるために、ライダーは必ず行っていますし、プロはこれが適切なので車両が安定し、深いバンク角からでもスロットルを少しずつ開ける事が可能となっているのです。

車速が一定のまま立ち上がりに移行するシーンでは、保舵力を緩めることで微少なセルフステアが発生します。すると次に車体が起き上がるモーメントが生まれます。その一方で、鈴鹿の130Rなどの高速コーナーでは、セルフステアしているかどうかわからないぐらいですが、保舵力を緩めてスロットルを開けて車速を上げると、車体は遠心力で自然と起き上がっていきます。

また、S字カーブではむしろ積極的にプッシングステア、つまり逆操舵をすることで素早く、安定的に反対側へと切り返すことができるようになります。

頭や肘、上半身を大きく下げるフォームには、前輪荷重を安定させることで前輪がしっかりと仕事(グリップなど)をしてくれるメリットがあります。これは走行ラインをコントロールするための微小なプッシングステアにも大きく影響し、より前輪を信頼して操舵できるようになるのです。

また、車速に関わらずベストなタイミング、最適な加減でステップに荷重することで、ライダーの体と車両の反作用を利用してバンク角制御がしやすくなります。ただしこの加減が非常に難しいのが現実です。

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