1. トップ
  2. スロットルを開けるのを遅らせてみよう【特集|0.1秒のセルフコントロール】

スロットルを開けるのを遅らせてみよう【特集|0.1秒のセルフコントロール】

  • 2026.2.10

サーキットでのスポーツライディングにある程度慣れてくると、ファンライド層でも多くのライダーが、こう思うことだろう。「もっとスムーズに、もっと速く走ってみたい!!」ところが、はやる気持ちのまま立ち上がりで早めにスロットルを開ければ、車速が上がってバイクは途端に曲がらなくなり、立ち上がりでロスが発生。その結果、ストレートは遅く、コーナーはリスキーになっていく。だから元MotoGPライダーの中野真矢さんは、こう話す。「スロットルを開けることを待てる者にのみ、走りの進化が訪れる」と。

PHOTO/S.MAYUMI TEXT/T.TAMIYA

取材協力/本田技研工業 ☎0120-086819 https://www.honda.co.jp/motor/

デジスパイス https://dig-spice.com/jp/

今までよりも0.1秒ガマンしてスロットル開けるのを遅らせてみよう

さて、ここが今回の本題。「スロットルを開けるのを、今までよりも0.1秒ガマンする」です。

まず、この「0.1秒」というのは、あくまでも感覚的な表現です。スロットルを開け始めるのが早すぎる人なら、1秒近く遅く、なんてこともあるかもしれません。

ただ、過去に同じコースで検証したときに、それなりのペースで走れるライダーがヘアピンカーブのボトムスピードを3km/h落としたことで、1秒近いタイムアップをあっという間に果たしたことがあり、これを考えたらコンマ数秒程度であることは間違いないでしょう。

最近の高性能なGPSロガーを使えば、自分のボトムスピードと、ストレートエンドでの最高速との関係を調べることは簡単なので、興味がある人はぜひ導入してみてください。

また、「0.1秒のガマン」は、あくまでもサーキットをより上手に走るためのテクニックであり、言うまでもなく、スロットル開け始めを待てば待つほどよいということではありません。その時間が長すぎれば車速が落ちすぎ、それこそスムーズではなくなりますし、車体が倒れようとする力が強くなりすぎて、コーナリングが不安定になってしまいます。

つまり、早すぎも遅すぎもダメ。おいしいポイントがどこなのか、ストレートエンドでの伸びも感じながら探ってください。(中野真矢)

フロントブレーキを完全にリリースしてから、スロットルを開け始めるまでの、いわゆる一次旋回を細分化したのが上の3コマ。コーナーは回り込んだヘアピンカーブだ。まずはスロットルを閉じた状態で深いバンク角を維持して、旋回力を発揮。そこからすぐにスロットルを開けるのではなく、少しだけ待つ。すると、エンジンブレーキなどの影響でさらに車速が落ち、イン側に倒れ込むようにも、ググッとさらに曲がるようにも感じる瞬間が現れるのだ
フロントブレーキを完全にリリースしてから、スロットルを開け始めるまでの、いわゆる一次旋回を細分化したのが上の3コマ。コーナーは回り込んだヘアピンカーブだ。まずはスロットルを閉じた状態で深いバンク角を維持して、旋回力を発揮。そこからすぐにスロットルを開けるのではなく、少しだけ待つ。すると、エンジンブレーキなどの影響でさらに車速が落ち、イン側に倒れ込むようにも、ググッとさらに曲がるようにも感じる瞬間が現れるのだ
車速が落ち切って“フラリ”を感じたら、ここからはスピードが上がっていく方向での操作に移行。とはいえ、いきなりガバッとスロットルを開ければ、あっという間に後輪のスピンやトラコンの介入、あるいはそれすらなく転倒につながってしまう。まずはスロットルをほんの少し開け、ドライブチェーンの緩みを取り、駆動力をほんの少し伝えることでリアタイヤのグリップをつくるのが左の段階。さらに少し開けて二次旋回を引き出し、右の立ち上がりにつなげる
車速が落ち切って“フラリ”を感じたら、ここからはスピードが上がっていく方向での操作に移行。とはいえ、いきなりガバッとスロットルを開ければ、あっという間に後輪のスピンやトラコンの介入、あるいはそれすらなく転倒につながってしまう。まずはスロットルをほんの少し開け、ドライブチェーンの緩みを取り、駆動力をほんの少し伝えることでリアタイヤのグリップをつくるのが左の段階。さらに少し開けて二次旋回を引き出し、右の立ち上がりにつなげる

なぜライダーは開けるのをガマンできないのか?

これはもう、“ライダーの性”みたいなものだ。速く走りたいのに“待つ”というのは、矛盾していると感じて当然と言える。中野さんもMotoGPでこの走りを会得するまで時間がかかったとか。また、バイクは高速で走っているほうが安定しやすいので、フラついて不安という心理も働く。

「早く加速したい」というライダー心理が動く
「早く加速したい」というライダー心理が動く
低速だと車体が不安定になって怖い
低速だと車体が不安定になって怖い

ガマンした先にある「もうひと寝かし」を活かす

スロットルを開けずに深いバンク角を維持していると、それまである程度は保たれていた力学的なバランスが崩れるように感じる瞬間が訪れる。それこそが、コーナリング中に最大の旋回力を発揮できる、本当のボトムスピードに到達した証。

上手なライダーはこのとき、車体をさらにほんの少し寝かせ、一瞬の間にさらなる旋回力を引き出している。

スロットルコントロールのやりやすさは肘の曲げ方で変わる

ハンドルグリップを手のひら全体でベタッと握ると、手首の可動域が減るだけでなく、自由に動かしづらくなり、開け始めの繊細なコントロールが難しくなってしまう。

肩から直線的に腕を伸ばすのではなく、肘を軽く曲げて斜めから包み込むような意識を持ち、手のひらの小指側を中心にグリップを握ると、微妙なスロットル操作がしやすくなるのだ。

プロが言う「よく曲がるバイク」とはフルバンクから開け始めまでの特性

一般ライダーは「車体がバンクし始めてから、立ち上がるまで」で、曲がる、曲がらないを評価しがちだ。それも間違いではないが、プロはもっとピンポイントでマシン特性を捉えている。

具体的には、ブレーキング後に最大バンク角までライダーの意思で「曲げる」、次にスロットルをほんの少し「開け始め」て探り、自信を得られたら大きく開ける。この一連の旋回操作のうち、「曲げる」から「開け始め」をマシンの旋回特性として評価しているのだ。

二輪運動力学の視点から考察

現代のワイドタイヤは実は旋回性を悪くしている

現代のスポーツバイク用のタイヤは、200mmも存在するほどワイド化が進んできました。猛烈なエンジンパワーに耐える高いグリップを実現するための進化ですが、実はタイヤ単体で考えると、バンク角が浅くなって旋回性が悪くなる傾向にあります。

このワイドタイヤのマイナス方向の特性を攻略し、鋭くタイトに曲がるためにも、スロットルを開けるのをガマンした方が理にかなっていると言えるのです。

さて、加速をはやるライダー心理について考察です。車速は少しでも高い方が車体は安定傾向になるので、安心感が高まるのは当然として、もうひとつの理由として、加速によって脳内ドーパミンが分泌されることが挙げられます。

加速は気持ちいいもんですね。バイクをやめられない理由のひとつでもあります。

元記事で読む
の記事をもっとみる