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保護者「なぜ本部席側ばかり向いて踊るの?」元小学校教員が明かす、学校側の“切実な裏事情”

  • 2026.5.30
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

運動会では、わが子のダンスや競技を少しでも良い位置から見たいと思う保護者も多いでしょう。せっかくなら、「子どもの表情が見える位置で見たい」「親側を向いて踊ってほしい」と感じたことがある人もいるのではないでしょうか。

実際、SNSでも「どうして本部席側ばかり向いて踊るの?」「保護者席からだと表情が見えない」といった声が話題になることがあります。一方で、学校側には運営や安全面など、さまざまな事情もあるようです。

そこで今回は、小学校教諭として10年以上の経験を持つ風間千歌さんに、運動会の“見えにくさ問題”について、学校現場での考え方や工夫を伺いました。

なぜ本部席側を向いて踊ることが多い?学校側の事情とは

---運動会のダンスなどで、「本部席側ばかり向いていて保護者席から見えづらい」と感じる声があります。学校側では、演技の向きや配置をどのように考えているのでしょうか?

風間千歌さん:

「あくまで私が経験してきた中での話ですが、ダンスなどの『表現』競技では、基本的に保護者の方に見えやすいように、トラック上に子どもたちを配置し、外側を向いて踊る構成にすることが多くありました。

運動会は子どもたちにとって大切な教育活動の一つですが、保護者の方に子どもの成長を見てもらい、終わった後にたくさん頑張りを認めてもらう場でもあります。そのため、保護者席からの見え方は、学校側もできるだけ意識していると思います。

一方で、本部席側を意識した配置になりやすい事情もあります。たとえば、放送や音響、進行の中心が本部席にあることが多く、教員が全体の動きを確認したり、必要に応じて指示を出したりしやすい位置でもあります。また、開閉会式や競技全体の流れの中で、本部席側を正面として考える慣習が残っている学校もあるかもしれません。

近年は、以前に比べて児童数や教員数、練習時間の確保などの事情から、2学年合同で表現運動を行う学校も増えている印象です。人数が多くなると、全員が保護者席から見えやすい位置に立つことは難しく、学年や立ち位置によっては見えづらくなってしまうこともあると思います。

とはいえ、演技全体を通して本部席側だけを向く構成になっていると、保護者席からは子どもの表情が見えづらく、残念に感じる方がいるのも無理はないと思います。学校側にも安全面や運営上の事情はありますが、隊形移動の中で向きを変えたり、保護者席側にも見せ場を作ったりするなど、工夫できる部分はあるのではないかと感じます。」

学校側は“見え方”にどう配慮している?

---「子どもの表情が見える位置で見たい」と感じる保護者も多いと思います。学校側では、どのような工夫や配慮を行っているのでしょうか?

風間千歌さん:

「保護者の方が『せっかくの運動会だから、子どもの表情が見える位置で見たい』『親側を向いて踊ってほしい』と感じるのは、とても自然なことだと思います。先生方も、保護者に子どもの頑張りや成長をしっかり見てもらいたいという気持ちは持っていると思います。

私が経験してきた中でも、できるだけ見え方に配慮して運動会に臨んでいました。たとえば、本番の1週間ほど前に配布する学年だよりで、子どもたちが競技をする位置を、競技ごとに図でお知らせしていました。保護者の方が事前におおよその立ち位置を把握できるだけでも、観覧や撮影のしやすさはかなり変わると思います。

また、ダンスなどの『表現』の演目では、前列と後列の2列で踊ることが多いですが、曲の前半と後半で列を入れ替え、不公平感が出ないようにすることもありました。さらに、子どもたちの通路として保護者の立ち入りを制限している場所でも、演目が始まる前にロープを外し、観覧スペースとして開放することもありました。

もちろん、グラウンドの広さや児童数、安全面の都合で、すべての保護者が希望通りの場所から見られるわけではありません。それでも、学校側としては、立ち位置の事前周知や隊形移動、観覧スペースの工夫などを通して、できるだけ多くの保護者に子どもの姿を見てもらえるよう努めていると思います。」

運動会は“昔通り”ではなくなった?現場が抱える難しさ

---近年の運動会運営について、現場ではどのような難しさがあるのでしょうか?

風間千歌さん:

「運動会の形は、平成と比べて大きく変わりました。コロナ禍をきっかけに、お弁当を用意して全校で午後まで行う形から、1・2年生、3・4年生、5・6年生のようにブロックごとに実施したり、午前中で終了したりする形に変わった学校も多い印象です。

こうした形については、『負担が減ってありがたい』と感じる保護者もいれば、『昔のような運動会に戻してほしい』という声も聞こえます。ただ、教員数、熱中症対策、練習時間の確保などを考えると、以前と同じ形に戻すのは難しい学校も多いのではないでしょうか。

観覧席についても、以前は早朝から場所取りをしたり、くじ引きで場所を決めたりすることがありましたが、近年は競技ごとの入れ替え制が増えています。入れ替え制にすることで、場所取りをめぐるトラブルや、不公平感は減ったように感じます。

一方で、観覧禁止ゾーンに入って撮影しようとする方や、お子さんの出番が終わった後も撮影エリアから移動されない方がいると、次の競技を見る保護者が前に出られなくなってしまいます。放送で注意喚起などを行いますが、全員にその場で徹底してもらうのは簡単ではありません。

また、徒競走の順位付けも、特に神経を使う場面です。近年は保護者が動画を撮影していることも多く、『動画ではこちらが先に見える』と確認を求められることもありました。もちろん、学校側もできる限り正確に判断しようとしていますが、一瞬の差を判断する難しさはあります。

子どもたちの頑張りを気持ちよく見られる運動会にするためには、学校側が見え方や公平性に配慮して運営することはもちろん大切です。一方で、保護者側にも、観覧ルールや撮影場所を守り、次に見る人へ場所を譲る意識を持ってもらえると、より良い運動会になるのではないかと思います。」

“わが子を見たい”気持ちと、学校運営のバランス

運動会は、子どもたちの成長を感じられる特別な行事です。だからこそ、「できるだけ見やすい場所で見たい」「表情が見える向きで踊ってほしい」と感じる保護者が多いのも自然なことなのかもしれません。

一方で、学校側も、安全面や進行、児童数などさまざまな条件の中で、できる限り多くの保護者に見てもらえるよう工夫を重ねているようです。

保護者側もルールや周囲への配慮を意識しながら、お互いに気持ちよく子どもたちを応援できる環境を作っていくことが、より良い運動会につながっていくのかもしれません。


監修者:風間千歌

小学校教諭として10年以上、公立小学校に勤務したのち、2人目の妊娠を機に退職。現在はフリーランスライターとして、教員経験を活かした教材作成や入試問題の解説のほか、育児・教育分野のウェブメディアで執筆を行っている。

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