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いなもあきこが『たしかに熊だが』を上梓。安藤夏樹、小木基史とともに木彫り熊の価値を捉え直す

  • 2026.2.9
左から、安藤夏樹、いなもあきこ、小木基史(POGGY)

すでに世の中にあるものを集め、体系化することの尊さ

小木基史

北海道出身の僕にとって、木彫り熊って実家や友人の家に必ず置いてある身近なもの。もともと、アートというイメージはありませんでした。

いなもあきこ

2016年にリサーチで初めて八雲町を訪ねた時、現地の方々も同じことをおっしゃっていました。

小木

でも、4〜5年前に現代アーティストのHaroshiさんから「木彫り熊は実はすごく面白い」と薦められて、気になり始めたんです。その後、24年に安藤さんが企画された展示で初めて木彫り熊を購入しました。作品の系譜をきちんと学びたいと思っていたので『たしかに熊だが』を拝読しました。

小説『たしかに熊だが』
大正期、尾張徳川家第19代当主・徳川義親がスイスから持ち帰った木彫り熊が、北海道・八雲で農民美術として発展していく。綿密な取材と想像力、史実に基づき、柴崎重行、根本勲ら木彫り熊作家たちの軌跡を描く歴史小説。プレコグ・スタヂオ/3,960円。

安藤夏樹

もともと木彫り熊は、大正期に八雲町の農場主だった徳川義親が「農閑期の副業と趣味のために」とスイスから持ち込み、ペザントアート(農民美術)として発展させた歴史があるんです。北海道の木彫り熊ってすごくメジャーなのに僕らが興味を持った当時、その歴史すらほとんど知られてなかったんです。

いなも

そのことが、小説を書きたいと思った動機の一つでした。

小木

特に良かったのは、史料を丹念に調べ、関係者へのインタビューを重ねたうえで、ノンフィクションをフィクションでつなぎ、エンターテインメントとして成立させている点です。楽しく読み進めるうちに、自然とその歴史や重要人物について理解できました。

いなも

ありがとうございます。取材・執筆に7年もかかったので、実は途中で何度も挫折しかけたんです。

小木

以前、ヒップホップを学びたいと思った時期に『HIP HOP AMERICA』という本で勉強したんです。その時、情報を体系的にまとめた本の重要性を実感しました。この本は、それと同様に参考書になると思っています。

いなも

柴崎重行や根本勲といった、黎明期に活躍した実在の木彫り熊作家の皆さんが、とても魅力的なんですよね。ご遺族にインタビューしてみると、その思いが増していったんです。例えば根本さんは、作品からはシャープな印象を受けますが、家族から見るとかわいい人だったそう。話を聞くうちに、「この場面ではこう言うだろうな」と、その人たちの姿が自然と思い浮かぶようになっていました。

小木

NHKの朝の連続テレビ小説にもできそうなストーリーですよね。

安藤

僕のイメージでは、徳川義親役は俳優の鈴木亮平さんです(笑)。

いなも

いいですね〜。飄々(ひょうひょう)とした感じで演じてほしいな。

安藤

僕が木彫り熊を蒐集し、SNSや展示を通じて発信しているのは、その価値が再発見されたらいいなと思っているからなんです。だから、この小説がドラマになったり、木彫り熊を見直すきっかけになったりしたら本当に嬉しい。小木さんは、小説を読んだ後にイメージはどう変わりましたか?

小木

はい。素朴だけれど、上質な木材が使われ、繊細に彫り込まれている。クワイエットラグジュアリーに通じるものがあると、今は感じています。

左から、安藤夏樹、いなもあきこ、小木基史(POGGY)
左から、安藤夏樹、いなもあきこ、小木基史(POGGY)。

profile

安藤夏樹

あんどう・なつき/1975年愛知県生まれ。〈プレコグ・スタヂオ〉代表。木彫り熊を蒐集・研究する〈東京903会〉主宰。ウェブ、書籍の編集、ギャラリーの運営を手がける。

profile

いなもあきこ

1973年香川県生まれ。出版社で編集者として勤務後、2009年よりフリーランスのライターに。得意分野は人物ルポ。共著に東京903会による『熊彫図鑑』がある。

profile

小木基史(POGGY)

こぎ・もとふみ(ぽぎー)/1976年北海道生まれ。ファッションキュレーターとして、国内外のブランドとイベントなどを企画。著書に愛用品等を紹介する『POGGY STYLE』。

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