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【救急集中治療医は見た!食いしん坊の思わぬ落とし穴】知っておきたい食中毒のこと② 今年こそ回避したい!「ノロウイルス」対策の極意

  • 2026.1.31

食いしん坊倶楽部メンバーで医師の平松玄太郎さんが、食いしん坊ゆえに気をつけたい健康について指南してくれるこの連載。前回に続き、テーマは「食中毒」。今回は間接感染にも注意が必要な「ノロウイルス」についてです。

【救急集中治療医は見た!食いしん坊の思わぬ落とし穴】知っておきたい食中毒のこと② 今年こそ回避したい!「ノロウイルス」対策の極意

■生牡蠣にあたるかどうかは「運」の要素が大きい

前回解説した「アニサキス」「カンピロバクター」に続き、食中毒発生数3位の「ノロウイルス」についてお話ししましょう。

ノロウイルス感染症例の約7割は原因食品が不明とされていますが、主に二枚貝に入り込むウイルスで、従来は日本人が生で食べるのが大好きな牡蠣が最多要因とカウントされていました。牡蠣は1時間あたり10Lもの海水を取り込むため、自身がろ過した結果、ウイルスが蓄積してしまうという理屈です。

食中毒は一般に気温や湿度が高くなる夏に増えますが、ノロウイルスは高温多湿に弱いので冬に流行ります。予防する方法としては焼き牡蠣や蒸し牡蠣など加熱して食べることくらいで、正直“運”の要素が大きいです。

生食用の牡蠣は紫外線で殺菌した海水で浄化処理がなされており、加熱用よりもウイルス量は少ないですが、完全になくすことはできません。パックに入っている塩水にもウイルスがいる可能性を考えて取り扱う必要があります。

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■感染力が強いノロウイルス

感染すると1~2日後から下痢と嘔吐と発熱が生じ、数日間続きます。やっかいなのは感染力が非常に強く、医学的には糞口感染といってその字のごとく感染者の便や嘔吐物が間接的に他人の口に入ることで次の人に移ってしまいます。

他人の便を食べるなんてあるのかいと思うかもしれませんが、有効な拡大予防をしないと、共用の物などを経て、子供がよくやる“ばい菌タッチゲーム”のごとく広がってしまいます。生牡蠣を食べたことによる直接感染よりも人から人へと移った間接感染の方が圧倒的に多く、直近のデータでは生牡蠣ではなく、飲食店や旅館などで提供された料理や仕出し弁当による感染が最多になっています。これは要するに調理や配膳の過程で食品取扱者が媒介しているということになります。

■ノロは二次感染を防ぐことが重要!

つまりおいしい生牡蠣を我慢するよりは、二次感染を予防する方が優先度は高いということが言えます。かつてはアルコール消毒が無効と言われていましたが、最近の研究では、ある程度効果があることがわかってきました。手指には石鹸手洗いによる物理的除去とアルコールによる薬理的除去を、そしてドアノブ・スイッチ・水道周り・食器といった共用物品には塩素系漂白剤などの次亜塩素酸ナトリウムによる消毒を行いましょう。最近は添加剤を入れることでよりノロウイルスへの消毒作用が強いアルコールも市販されています。

■下痢止めや吐き気止めは治療にならない

カンピロバクターもそうですが、ノロウイルスも特効薬はなく、下痢や嘔吐による脱水に対する補液くらいしかできることがありません。どうしても口から水分が取れない場合は医療機関で点滴をしてもらってもいいですが、所詮1時間で100ml程度しか投与できないので、家でチビチビ飲んでいるのと大して差はありません。また下痢や嘔吐といった症状は、人体が病原体を外に出そうとしている反応のため、いわゆる下痢止めや吐き気止めは必ずしも治療になるとは言えないということは一般の方々にもご理解いただきたい点です。

ノロに続いて多い自然毒(キノコやフグなどの動植物がもともと持っている有毒成分)ですが、ここまでくると数は少なく、原因食品の数も多いのでニーズがあればまた別の機会に解説したいと思います。刺身もレア肉も生牡蠣も大好きな私としては非常に心苦しい回となりましたが、「きれいな花にはトゲがある」という教訓は、グルメの世界にも存在するということを改めて認識しました。ちょっとした雑学から守れる命も少しはあると思います。ぜひご活用ください。


――教える人

「平松 玄太郎 先生」

埼玉医科大学卒業、同大学総合医療センター 高度救命救急センター所属、同センターにて災害医長を担当。救急・集中治療専門医としてER・ICU・災害医療を生業とする傍ら、訪問診療・産業医・レースドクターなどにも従事。


編集:出口雅美(maegamiroom) 文:久保木 薫 写真:Shutterstock

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