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【ウイスキーに合うつまみ】個性豊かなラフロイグに、パンチの効いた中華風白和えが絶品

  • 2026.1.30

ウイスキーと食べ物の絶妙なペアリングを探索する「ウイスキーと食」の第13回。家庭料理の延長線上に栄養や健康に配慮した料理を考案する料理研究家の野口真紀さんと、ソムリエの若林英司さんのコラボレーション。野口さんが料理をつくり、若林さんがそれに合うウイスキーを選びます。前回は鯛のカルパッチョにイチローズモルト ホワイトの常温ソーダ割りを合わせましたが、さて、今回はどんな料理とウイスキーが登場するか。さっそく、絶妙ペアリングを紹介します。

【ウイスキーに合うつまみ】個性豊かなラフロイグに、パンチの効いた中華風白和えが絶品

■ピータンの白和え×ラフロイグ ソーダ レモンピール

ウイスキーフロート
ウイスキーフロート

まず、ピータンの白和えのつくり方から見ていこう。野口さんは、食感を活かすためにピータンとザーサイをざっくり大きめに刻み、和える豆腐には木綿豆腐を選んでいる。
木綿豆腐1丁にピータンは2個、ザーサイが大きめのを3つ、ほかにみじん切りにした長ネギと生姜、パクチーを加え、白すり胡麻を加え、胡麻油をかけ、塩、胡椒で味を調える。

白和えではあるが、和えるものがピータンとザーサイであり、パクチーも入ることから、中華テイストか。ピータンは、アヒルやニワトリなどの卵を数か月発酵させてつくる中国発祥の保存食で、みなさんご存知のとおり、独特の風味がある。ザーサイは、からし菜の一種の根の部分の漬け物で、塩漬けにした後で香辛料に漬け、1年ほど発酵させて完成する。ピータン同様、独特のインパクトがあり、筆者などは、ザーサイだけでも酒が飲めてしまうくらい、好きな食べ物だ。

角煮とウイスキー
角煮とウイスキー

これらに、胡麻油とパクチーが加わるので、木綿豆腐の白和えとはいいつつ、やはり中華の匂いが強いように思える。さて、ここに、どんなウイスキーが最適なのか。若林さんは一杯の酒を見つけるまでのプロセスを解説してくれた。

■インパクトの強いピータンにあわせるウイスキーの正解とは

ウイスキー
ウイスキー

「まず、ピータンという個性的な食べ物があり、そこにパクチーが加わるところに注目しました。パクチーは香草の中でも個性的だし、ピータンも個性が強い。となれば、個性の強いもの同士の相性のよさということで、ウイスキーにも強い個性を求め、どれにするか考えて、スコットランドのアイラ島産のシングルモルトにしました」

若林さんが選んだ銘柄は、アイラモルトの中でもファンの多い「ラグロイグ」の10年。このウイスキーにはどんな個性があるのか。

■パクチーの個性に負けないスモーキーなラフロイグ

スコットランドのアイラ島の大地には、ヒースという野草や海藻などが堆積し、炭化したピート(泥炭)の層がある。ウイスキーの原料である大麦麦芽を乾燥させるときに、このピートを炊くのだが、そのときにつく煙っぽい香りのことを“スモーキー”と表現する。また、ピートには、海辺の環境と海藻に由来するヨード香や潮の香りがつき、この風味を“ピーティー”と表現する。ラフロイグ10年には、スモーキーとピーティーというアイラ島産シングルモルトの特徴の両方がよく表れている。同時に、オイリーでバニラ香も感じられるなど、バランスがよく、貯蔵年数は10年と長期熟成ではないのだが、味わいには風格を感じさせる。

「個性的なラフロイグを、どんな飲み方にするかを考えるときには、パクチーから東南アジアや沖縄などの亜熱帯の気候を連想し、そういう環境で飲むのに適した、スカッとする飲み方ということで、ハイボールに決めました」
そう言って若林さんは、タンブラーにたっぷりのハイボールをつくってくれた。ラフロイグ10年のハイボールは、ウイスキーが好きな人の間ではよく知られた一杯。強さと爽快さと、余韻の長いスモーキーさで魅了する。これをひと口飲むと、口内と鼻腔に個性豊かな香りが残る。すかさず豆腐とピータンとザーサイとネギとパクチーを上手にとって一度に口に入れると、なんとも言えないおいしさが広がった。

[dancyu]

■新感覚!中華風の白和えがウイスキーでもっと美味しくなる

「この白和えの魅力のひとつは豆腐のやわらかさ。そして、ピータンの旨味成分とパクチーの香りがしっかり残るところですね」
なるほど、若林さんの言うとおりで、豆腐とピータンはとても相性がよく、胡麻油の風味とパクチーの爽やかな香りは、ほどよいアクセントになっている。それと、大きめに切ったピータンとザーサイの食感も心地よく、インパクトがありながら、全体はマイルドでバランスのいい料理に仕上がっている。

なぜ、この、東南アジアを思わせるところもある白和えに、アイラモルトの中でも個性の際立つラフロイグが合うのだろう。もうひと口飲み、最初のひと口と合わせて、ラフロイグのハイボールの旨さに意識を集中してみると、ひとつ、気づいたことがある。

■ハイボールのレモンは搾らない?!レモンピールという裏技

[dancyu]

最初のひと口を飲むときに、いつもと違う、フレッシュで爽快な感じがしたのだ。何が違うのか、若林さんに種明かしをお願いした。
「ウイスキーにソーダを注いだ後で、レモンピールをしているんですよ。グラスの縁の横でレモンの皮を搾って香りをつけます。グラスの上で搾ると、レモンの皮から出る霧状のしずくがお酒の中に入ってしまいますね。皮から出るしずくは苦いのですが、それが、ウイスキーの苦味を引き出してしまう。だから、そのしずくはグラスに入れず、グラスの横で搾ることで、香りだけをつけるわけです」
これが、最初のひと口を飲むべくタンブラーを口元に運んだときに感じた何か、だった。

「ハイボールは、爽やかで、気持ちのいい飲み物です。それをさらに爽快なものにするために、舌だけでなく、鼻からも脳を刺激する。レモンピールにはそんな効果があります」
レモンの皮を搾って鼻からも脳を刺激する。とても痺れる話だ。なぜなら、そのレモンの香りがもたらす爽快なフィーリングが、このとてもユニークな白和えの重要なアクセントであるパクチーの爽快感と結びついているから。

[dancyu]

ふくよかな味わい深い白和えに、レモンがかすかに香るラフロイグのハイボール。酒もつまみも、両方お代わりしたくなるはずだ。


――教える人

「若林 英司さん エスキス 総支配人兼ソムリエ 」

1964年長野県生まれ。あの、故ジャン・クロード・ヴリナ氏から、もっとも厚い信頼を得ていた日本のソムリエ。1995年より東京・恵比寿の「タイユバン・ロブション」シェフ・ソムリエ、2003年より「レストラン タテル ヨシノ」の総支配人を務める。2012年から銀座、エスキス勤務。エグゼクティブシェフ、リオネル・ベカの料理をペアリングで華やかに盛り上げる。2023年「ゴ・エ・ミヨ2023」ベストソムリエ賞、2024年「ミシュランガイド東京2025」ソムリエアワード受賞。テレビ等でも活躍し、ペアリングの醍醐味と楽しさを伝える。

「野口真紀さん 料理研究家」

1973年東京都生まれ。料理雑誌の編集者を経て、料理研究家となる。自身の子育て経験も活かし、簡単でつくりやすく、栄養や健康に配慮した家庭料理が人気。自然体なのにおしゃれなライフスタイルも注目されている。著書に、『家族でごはん12か月』(新星出版社)、『ぱらぱらきせかえべんとう』(アノニマ・スタジオ)、『毎日食べて体すっきり 野菜の酢漬けと展開レシピ』(エムディエヌコーポレーション)など多数。


文:大竹聡 撮影:池田博美 編集:木田明理

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