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【インタビュー】「オシムさんの考え方を、もっといろいろな人に知ってほしい」羽生直剛さんがAmbition22から描く未来「サッカーも人生も一緒」

  • 2026.1.30

プロサッカー選手としての経験は、ビジネスの世界でも生かせる。

現役時代はジェフユナイテッド千葉やFC東京、ヴァンフォーレ甲府で活躍し、2017年に千葉で引退した元日本代表の羽生直剛さん。特に千葉時代は、2022年5月に亡くなったイビチャ・オシム監督らの指導を受け、2005年と2006年にJリーグヤマザキナビスコカップ(現・JリーグYBCルヴァンカップ)を連覇した。

その後、FC東京で強化部スカウト担当を2年間経験し、2020年2月1日に『株式会社Ambition22』(以下:Ambition22)を立ち上げた。

サッカー界からビジネスの世界に飛び込んだ羽生さんは、「オシムさんの考え方を、もっといろいろな人に知ってほしい」と様々な活動に力を注いでいる。

画像: ジェフユナイテッド千葉で勝利を喜ぶ羽生さん(ⓒGettyImages)
ジェフユナイテッド千葉で勝利を喜ぶ羽生さん(ⓒGettyImages)

引退後に自問自答して消去法で起業

――羽生さんは現在、Ambition22で代表取締役、最高経営責任者を務めています。どのような事業を手がけているのでしょうか。

「主に一般企業を対象に、組織構築や人材育成の研修・コンサルティングを行っています。オシムさんが実践していた組織構築の思想は、サッカーという枠を超えて、企業経営やチームマネジメントにも生かせるものだと考えていて、その考え方を企業向けに落とし込むことを主な事業としています」

ーーどのような経緯で起業したのですか。

「ある意味、消去法で起業したみたいな感じですかね…」

画像1: (写真:本人提供)
(写真:本人提供)

――といいますと。

「僕は現役引退後の2019年にオシムさんに会いに行っているんですけど、そこで『もっと上を見ろ。空は果てしない』と言ってもらいました。当時の僕はFC東京でスカウトをやっていて、それが僕としては初めての社会人というか、会社やビジネスを理解できた機会でした。でもその中でオシムさんが日ごろから言っていたチャレンジとか、野心のことを考えたときに、『はたしてこの働き方って自分の中で一番チャレンジしているのかな』と疑問に思いました。

そして自問自答を繰り返していく中で、正直『こんなビジネスがしたい!』というのはなかったけど、個人的に結んでもらっていた業務委託みたいなものを、そのまま会社との契約にして、自分で独立してやり始めた感じですね」

ーーサッカーの世界からビジネスの世界に行くことはチャレンジだっと思います。

「2017年にジェフで引退したときに、そのままジェフのフロントに入るお話もありました。でも、その年にジェフへ戻って来た自分は2年契約だったんですけど、1年目からケガでほとんどサッカーができなかった。

だから、まともに練習もできない自分がチームに残っても迷惑をかけるだけだと思って、引退を決めましたが、愛着のあるジェフに対して『フロントに入るために帰ってきた』みたいになるのは嫌でした。そこでスカウトの話をいただいていたFC東京に行かせていただきました」

現役引退のきっかけになったケガと、オシム元監督の言葉

ーー現役引退を決断するきっかけにもなったケガについて教えてください。

「右ひざがもうダメだったんですよね。高校生のときに半月板の手術をしたんですけど、それが最後の最後は骨同士がぶつかって水が溜まるようになってしまい、毎週その水を抜かなければいけなかった。

それでも練習に参加できないなりに、ベテランとしてチームの雰囲気を調整できる自信はあった。でもクラブからお金をもらっている中で、何も表現できるところがないのは無責任だと思いました。ドクターからは『このひざでよくやっていたね』と言われたくらいでしたから」

ーー限界に近い状態だったんですね。

「オシムさんからも『できない』と言うのもプロだとを言われていました。クラブからは、もう一年プレーするご提案をいただきましたが、オシムさんに教わったことも含めての美学というか、あの状態で続けるのはプロフェッショナルではないと思ったので、引退を決めましたね」

画像: 千葉でプレーした羽生さん(ⓒGettyImages)
千葉でプレーした羽生さん(ⓒGettyImages)

ーーとはいえ、現役時代の献身的なプレーからは、ひざの痛みを抱えているようには見えませんでした。

「僕は背も小さい(身長167センチ)し、『お前なんか』という評価もあったと思うんですよ。実際に、僕と同い年の選手には小野伸二や稲本潤一、遠藤保仁みたいなミッドフィルダーがいて、彼らのような司令塔的な人たちが、一番いいミッドフィルダーだと言われていましたから。

どこかで彼らと比べていたし、手が届かないと思っていた中で、オシムさんが現れた。そこで『お前は、お前の強みを伸ばせ』と言ってくれて、“考えて走る”プレースタイルが生まれたと思っています」

ーー羽生さんは千葉でナビスコカップ優勝を経験しています。オシムさんの存在も大きかったのではないでしょうか。

「あのときのジェフって、Jリーグの中で見てもタレントがそろっているわけではなかった。それでもオシムさんが、一人ひとりの強みを生かして勝てるチームにしてくれた。

これは一般社会の人たちにも当てはまることだと思っています。みんなが働きがいを持って、自分の自己肯定感を高めながら、組織としても『俺たちでもやれるんだ』という考えを持ってもらうことは、社会貢献につながると思いました」

サッカー選手としての経験をビジネスの世界でも

ーーオシムさんの言葉や考え方は、世のビジネスパーソンにも当てはまることなんですね。

「サッカーだって、一人の選手がボールを持っている時間なんて2分くらい。じゃあ残りの88分間でどうやってチームに貢献できるかを常に考えるべきだと、僕はオシムさんから教わりました。

それは攻撃でも守備でも当事者意識を持って取り組むということだと思うし、その考え方が大事なのはサッカーも人生も一緒だと、言われました」

ーーオシムさんから学んだことを、少しでも多くの人に伝えたいという想いなんですね。

「そうですね。だから『こういうビジネスだったら儲かる』みたいな考えの人が一定数いると思うんですけど、Ambition22でそれはまったくなくて(笑)。 とにかく自分にできることと、オシムさんの考え方をもっといろいろな人に知ってほしいという想いで、模索しながら進めてきました」

画像: ジェフユナイテッド千葉を指揮したイビチャ・オシム氏(ⓒGettyImages)
ジェフユナイテッド千葉を指揮したイビチャ・オシム氏(ⓒGettyImages)

ーー羽生さんが描く、今後のビジョンを教えてください。

「実はジェフのスタッフと連携を取りながら始めている千葉を活性化させる事業として、『AMBITION for CHIBA』をやっています。僕は千葉県出身者として、地元を盛り上げたいと思っている中で、やっぱりジェフって千葉をリードしている存在の一つであり、アイコンだと思っています。

だけど、もっとリードしていけるような存在になるべきだと思うし、地域の方や企業さんと一緒に千葉県を活性化できる力をジェフは持っている。OBとして、ジェフと協力しながら地域を盛り上げていきたいというのが、いまの目標ですね」

ーー今季の千葉はJ1で戦いますし、より一層の期待がかかりますね。

「僕が2017年にジェフへ戻ったときは、それまでの自分の経験を少しでも還元できると思ったし、ジェフをJ1に戻すことが最後のチャレンジだと思っていました。

だからその目標が達成できなかった責任感を感じていた中で、今回(J1に)上げてくれたので、本当に『すごいな』という気持ちですね」

ーー羽生さんがジェフと一緒に千葉県を盛り上げていくのか楽しみです。

「そうですね。だけどこれはジェフだけの話ではなくて、千葉県の企業さんに対しても思っていることです。それこそオシムさんがビッグクラブのオファーを断ってジェフに来てくれて、クラブを一気に強くして、新しくできたフクアリ(フクダ電子アリーナ)を満員にしたみたいに、そういう夢をもっといろいろな方に持ってほしい。

そのために、オシムさんやジェフでの経験を持つ僕が価値を提供できたり、ジェフや各スポーツクラブと連携して、千葉県をもっと活性化できれば一番いいと思っています」

画像2: (写真:本人提供)
(写真:本人提供)

現役時代から自分自身と向き合いながら、様々な決断をしてきた羽生さん。オシム元監督の言葉を自分の中でかみ砕きながら、最良の選択を模索してきた経験は、ビジネスの世界でも生きている。

そして今度は、自身がサッカー選手として培ったものを、地元の千葉県やビジネスパーソンにも還元していく。羽生さんと、Ambition22の今後の活動から目が離せない。

(取材・文・構成:浅野凜太郎)

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