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人々を包み込む、ヨウジヤマモトの優しくも力強い“軍服”【2026-27年秋冬 メンズコレクション】

  • 2026.1.23

つい昨シーズンのものも含め、近年のヨウジヤマモトYOHJI YAMAMOTO)のメンズコレクションは、メッセージを発信するプラットフォームを提供してきた。予言めいたものから詩的なものまで、あらゆるメッセージが発信されているが、重要なのはそのどれもが、ブランディングやロゴとは関係ない形で、「言葉を纏う」ことができるのを証明していることだ。

この日、披露された服はレイヤーとさまざまな色調を重ね合わせていたが、文字的な要素は見当たらない。しかし、すべてのピースが多くを物語っていた。ボリュームを最大限に出すために入れられた袖や裾のパディングは、着る人の体型に関係なく、同じようなシルエットを描く。シルエットは艶やかな歩兵ボタンで自由に操ることができ、重厚感を中和させる軽やかさをデザインにもたらす。実用的な要素と軍服などの制服に見られるディテールが共存する、ハイブリッドピースだ。

山本が掲げるすべてのコンセプトと同様に、この実験的なデザインも無作為に着想されたものではない。「すべて、軍隊とかれらの汚れた労働環境からインスピレーションを受けたものです」と山本はバックステージで、いつも以上に快活に語った。「軍服と戦闘服は、身の安全のために非常に重要です」

相手を威嚇するようなものではなく、身を包み込むような服。打ち負かされたのではなく、着込まれたからこそ古びている服。そんな着る人を優しく守るものを、山本は今回一番に提案した。寝癖のついた髪のまま、ランウェイを彷徨うモデルたちは充分に着込んでおり、屋外でも長時間過ごせるように、キルティングやフランネル、厚手のウールピースをいくつも身につけていた。まくられた袖、裾にかけて靴ひもが通された斬新なコーデュロイパンツ、脱構築的なブラックのアンサンブルに、燃えるような赤い糸で彩られた裾のコート。スタイリングは機転を効かせた奇抜なテイストと、荒々しくも洗練されたテイストを行き来した。

山本は既存のアイデアを複雑な形で表現し、独自の方法で再解釈する。彼に“鎧”を再解釈させると、潰れた空き缶を加工して作ったベストやハットが生まれ、“迷彩柄”は複雑なレリーフ柄の生地の断片をつなぎ合わせたパッチワークデザインになる。ショーのオープニングを飾ったプリントがカムフラージュをするためにあるのだとすれば、つやつやと輝くジャンプスーツはその逆を行き、目立つためにある。

Yohji Yamamoto - Runway - Paris Fashion Week - Menswear Fall/Winter 2026-2027

ところで、天井から吊るされていたふたつの黒いパンチングボールは、何を意味していたのか? ボールに向かってジャブを打つ者、お辞儀をする者。モデルたちのリアクションはさまざまだ。中にはボールにキスをし、そのまま剥がれた塗装の跡が残る、傷んだランウェイを行くモデルもいた。だが、どう歩いても、何かしらの形で触れずにはいられない位置に、ボールは吊るされていた。感情がわずかにあらわになる、無言の一瞬。山本自身は、この物体にどう対処しただろう? 相変わらず魅惑的な彼は、笑みを浮かべながら、愛撫する手振りをした。「Make love, not war(殺し合うのでなく愛し合おう)」。つまりはそういうことだろう。

※ヨウジヤマモト 2026-27年秋冬メンズコレクションをすべて見る。

Text: Amy Verner Adaptation: Anzu Kawano

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