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「2006年ワイン」より「20年物ワイン」と表記した方が古く感じる

  • 2026.1.15
「西暦」と「年数(期間)」の表記の違いで、印象が変わる / Credit:Canva

同じことでも、「表記の仕方」で人の感じ方が変わる、なんてことはよくあるものです。

実は、同じ年数が経過した商品でも、「2006年のワイン」と書くのか、「20年物のワイン」と書くのかによって、私たちが感じる「古さ」や「価値」は、思った以上に違ってくることが分かってきました。

この現象を明らかにしたのは、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)の研究チームです。

研究では、時間を「西暦(暦年)」で表すか、「年数(期間)」で表すかという違いが、人の時間感覚や商品評価、さらには実際の購買行動にまで影響することが示されました。

この研究は、2025年11月9日付の学術誌『Journal of Marketing Research』に掲載されました。

目次

  • 「西暦」より「年数(期間)」の方がより長く感じる
  • 「1と2」の差は大きく、「2000と2001」の差は小さく感じる

「西暦」より「年数(期間)」の方がより長く感じる

これまでの心理学やマーケティング研究では、言葉の言い回しが印象に影響することは数多く示されてきましたが、「時間の表現の仕方そのもの」が時間の長さの感じ方や価値判断を体系的に変えるかどうかは、十分に検証されていませんでした。

そこで研究チームは、時間を「2016年」「2006年」といった西暦で表す場合と、「10年」「20年」といった期間で表す場合を比較し、この違いが人の認知や判断にどのような影響を及ぼすのかを調べました。

調査の方法は、大きく分けて2つあります。

1つ目は、実際のウイスキー・オークションの取引データを用いた分析です。

同じ熟成年数のウイスキーが、「◯年物」と記載されている場合と、「◯年に蒸留」と記載されている場合で、落札価格に差が生じているかが検討されました。

2つ目は、研究室内で行われた7つの実験です。

これらの実験では、時間の表現方法以外の条件をすべて同じにした上で、参加者に時間の長さの感じ方や商品の評価、さらにはどちらの商品を選ぶかといった選択行動までを判断してもらいました。

そして、こうした分析や実験の結果、同じ時間であっても、「10年」「20年」といった期間表現で示された場合のほうが、「2016年」「2006年」といった西暦表現よりも、時間が長く、遠く感じられやすいことが一貫して確認されました。

また、この時間の感じ方の違いは、商品に対する評価や、実際に支払われる価格にも反映されていました。

ただし、この効果は常に同じ方向に働くわけではなく、商品の性質によって、プラスにもマイナスにも作用します。

その詳しい内容については、次項で確認しましょう。

「1と2」の差は大きく、「2000と2001」の差は小さく感じる

研究チームは、この一連の結果を「year–length effect」と呼んでいます。

これは、時間を年数(期間)で表すと、同じ時間であっても心理的に引き延ばされて感じられ、西暦で表すと圧縮されて感じられるという現象です。

重要なのは、この違いが単なる表現の好みではなく、判断の中身そのものに影響している点です。

実験では、時間が長く感じられるほど、その時間に結びついた属性、たとえば熟成や歴史、使用年数といった要素が、評価の中でより重視されるようになることが示されました。

そのため、ウイスキーやワインのように、年数そのものが価値を高める商品では、「10年物」「20年物」といった期間表現のほうが高く評価されました。

実際のオークションデータでも、期間表現で説明されたウイスキーは、平均して約9%高い価格で取引されていました。

一方で、中古品のように古さがマイナス要因になる商品では、結果は逆になります。

「2年前に購入」と書かれた商品は、「2023年に購入」と書かれた商品よりも古く感じられ、評価が下がる傾向が確認されました。

オンラインの掲示板で行われた分析では、「購入年」を書いたときのほうが、「◯年前に購入」と書いたときよりも、平均で約17%高く売れていたことも報告されています。

では、なぜこのような違いが生じるのでしょうか。

研究では、その背景として、人の数量認知の基本的な性質が挙げられています。

私たちの心の中にある数の感覚は、1から2、2から3といった小さな数字の差を大きく感じる一方で、2020から2021のような大きな数字の差は小さく感じる傾向があります。

そのため、数字が大きくなりがちな西暦表現では時間が圧縮されて感じられ、数字が比較的小さい期間表現では時間が引き延ばされて感じられるのです。

この研究は、マーケティング分野だけでなく、老後資金の計画や医療の場での意思決定、気候変動の時間スケールの伝え方などにも応用できそうだと考えられています。

ただし、すべての状況で同じ強さの効果が現れるわけではなく、どの国やどんな商品でも同じように働くかどうかは、今後あらためて確かめる必要があります。

今後は、文化の違いや人それぞれの違い、商品ジャンルの違いなどを含め、時間の表現が人の判断をどのように形づくるのかを、より多様な状況で検証していくことが求められるでしょう。

この研究は、同じ20年でも、「2006年」と書くか「20年物」と書くかで、頭の中の受け取り方は変わることを示しました。

そんな小さな表記の違いが、私たちの「欲しい」「いらない」という判断を、思った以上に動かしているのかもしれません。

参考文献

Time warp: How marketers express time can affect what consumers buy
https://phys.org/news/2026-01-warp-affect-consumers-buy.html

元論文

When ‘Year’ Feels near: How Year versus Length Framing Alters Time Perception and Consumer Decisions
https://doi.org/10.1177/00222437251399115

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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