1. トップ
  2. グルメ
  3. 19世紀の邸宅で二つ星の美食とワイン。優雅なアールドゥヴィーヴルをル・クラレンスで。

19世紀の邸宅で二つ星の美食とワイン。優雅なアールドゥヴィーヴルをル・クラレンスで。

  • 2026.2.8

グラン・パレの裏手を走るフランクラン・D・ルーズヴェルト大通り。その31番地に窓から張り出した緑色のテントが印象的な建物がある。一瞬ホテル?と思うかもしれないけれど、この19世紀に建築された4階建ての個人邸宅を占めているのは、2017年からの二つ星を守るレストランLe Clarence(ル・クラレンス)だ。100年前にボルドーに設けられたファミリー企業で、シャトー・オー・ブリヨンで知られるドメーヌ・クラレンス・ディロンのレストランである。

19世紀の豪奢な個人邸宅が秘めるレストランLe Clarence。日本では味わえない素晴らしいアールドゥヴィーヴル体験が待っている。photography: 左 Valerio Geraci、右 Clemence Losfeld

このドメーヌを1935年に創設したのは、アメリカ人銀行家クラレンス・ディロン(1882~1979年)。2024年に改装オープンしたグラン・パレのウィンストン・チャーチル大通りとセーヌ川のコーナーにある入り口には、大通りに面したメイン・エントランスがガブリエル・シャネルという入り口であるようにクラレンス・ディロンの名前が付けられている。というのもドメーヌ・クラレンス・ディロンはグラン・パレの改装のメセナ。この支援のおかげで建物のファサードを飾る芸術と科学をテーマにした10の彫刻の修復が可能となったので感謝したい。

レストランのル・クラレンスは2015年11月にオープン。パリにシャトー・オー・ブリオンを!というオーナーのルクセンブルグ大公国ロベール公の意図を反映して、大勢のアルチザン・ダールが参加して邸宅の大改装が行われた。そして絵画、彫刻、家具などが運び込まれ、ファミリーシャトーを彷彿させる温かみをたたえつつ洗練された18世紀的な内装が仕上げられたのだ。建物の1階にレセプションがあり、食事のための3つの部屋は2階に。ボワズリーと木の書棚のある部屋はポンタック・ルーム、狩女ディアンヌがテーマというトワル・ドゥ・ジュイのカーテンと壁紙がエレガントなレストナック・ルーム、そしてキッチン内の活気を眺められるタレイラン・ルームとそれぞれ雰囲気が異なっている。

どこの部屋で食事したいか、希望があれば予約時に告げるのがいいだろう。叶うか否かは、もちろん当日の可能性次第ではあるけれど。トータルで40席あるかないかというような、ゆったりとした空間の使い方が贅沢でありエレガントな空間。どこのテーブルで食事をしても良い時間が過ごせることは間違いない。

木の素材と書棚が落ち着きを演出するポンタック・ルーム。photography: Valerio Geraci

左:レストナック・ルーム。ジャン=バティスト・ユエによるネオ・クラシックのデッサン「ミューズとライオン」がモチーフのブラクニエのファブリックと壁紙がエレガントだ。右:タレイラン・ルーム。photography: Valerio Geraci

オープンから10年が経過した昨年の9月、開店時からシェフを務めていたクリストフ・プレが去り、アンドレア・カパソが後を継いだ。プレのセカンドを6年務めていた彼はイタリア人で、現在30歳とまだ若い。その彼の肩に二つ星をキープし、さらに先へ進む使命が託されたのだ。シェフとなってまだまもない彼の料理にはイタリアとアジアの影響が取り入られ、伝統を守りながら大胆に未来へと向かっている。クリエイティビティに富む彼が特に愛するのは海の幸。地中海ものも扱うが、とりわけクオリティも味も良いブルターニュ産だそうだ。また彼の料理の特徴のひとつとして、素材をメインに、その派生のサブ料理を組合わせていることが挙げられる。自然の恵みである素材を最大に活用するシェフ。食卓に並ぶいくつもの小さなボリュームの料理。それぞれの味覚の驚きに、心と胃が喜びで弾んでしまう。快適な後味を残す酸味のあしらいは小憎いほどだ。最近、水曜から金曜のランチタイムのみ、季節の素材にアクセントを置いた月替りのア・ラ・カルトでの食事もできるようになった。ちなみにランチタイムのおまかせメニューは150ユーロ、250ユーロ、380ユーロ。ディナータイムは280ユーロ、430ユーロ。

左:レストラン上階のグランドサロンにてシェフのアンドレア・カパソ(中央)、ソムリエのシリル・ボサール(左)、メートル・ドテルのシャルル・ウエイランド。右:食事の始まりは、海と陸のアミューズ・ブーシュ。photography: 左©Maki Monokian、右 Mariko Omura

卓上に同じテーマの複数皿が並ぶシェフの料理。左はヒメジのグリル、豚の耳、イカスミ。右はオマール海老とその衛星料理。photography: Maki Manoukian

シャフ・パティシエはマキシム・コール。左はプレ・デザートの底にマドレーヌ・ビスケットを隠したシトロン・ジブレ。繊細で程よい酸味が食欲を刺激し、メインのデザートへと。右はそば粉のチュイルとチョコレート。photography: Mariko Omura

ル・クラレンスで食事をするからには、世界有数と評価されるワインセラーからのワインも味わってみなければ。500近いメゾンからの約1,500種を揃えているが、せっかくなのでドメーヌ・クラレンス・ディロンが擁するシャトー・オー・ブリオン、シャトー・クインタスなど、どうだろうか? ソムリエにセレクションを任せよう。レストランの向かいにはワイン・ブティックがあるので、食前あるいは食後にぜひ訪問を。

左:ワインシャトーが経営するレストランである。料理とのマリアージュを楽しみたい。右:レストランの見事なワインセラー。なおレストランの入り口の向かい側には、ワインのブティックがある(火曜から土曜の営業|10:30〜19:30)。photography: 左 ©Clemence Losfeld、右 Valerio Geraci

シェフが生み出す繊細な料理に用いられるのは、1747年創業のドイツの名窯ニンフェンブルグのフレームにかすかにグリーンをあしらった白い食器。洗練の二乗で卓上に優美が薫る。またデザート、あるいはカフェを3階のグランド・サロンでとることによってその食事をさらに優雅に締めくくることができるのはル・クラレンスならでは。パリにいながら、どこかのシャトーに紛れ込んだような室内装飾が実に見事なグランド・サロンだ。ルイ15世やルイ16世時代の椅子を始め、シャンデリアも壁の絵画も18世紀後半でまとめられている。この時代こそがフランスのアールドゥヴィーヴルの素晴らしい見本であるというオーナーのロベール公の思いが反映された内装。予約時間より早くついて、それを口実にこのグランド・サロンでアペリティフ!というのも、ル・クラレンスのおもてなし心をグランド・サロンで味わうチャンスだろう。食事をするだけの場所ではなく、フランスが誇るアール・ドゥ・ターブル、アール・ドゥ・ヴィーヴルを類稀なる環境で体験することを提案するレストランなのだ。少しオメカシして行く方が、より気分が盛り上がるに違いない。

パリのレストランで珍しいドイツの名窯ニンフェンブルグの食器での食事。本物との出会いに食事時間の感動が増す。photography: 左 ©Maki Manoukian、右 Mariko Omura

3階のグランド・サロンは18世紀の内装。上質な家具調度品のセレクションに気品が薫る。photography: 左 Valerio Geraci、右 Clemence Losfeld

左:レストランのエントランスホール。右:食事のフロアは2階。エレベーターもあるけれど、優美な階段で上がりたい。photography: Mariko Omura

Le Clarence31, avenue Franklin D. Roosevelt75008 Paris営)ランチ 12:30〜、ディナー 19:30〜休)日、月、5月8日、7月14日https://www.le-clarence.paris/@leclarenceparis

元記事で読む
の記事をもっとみる