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蔦重が「ビジネス婚」に託した思いとは? 偏見を乗り越え“日本橋進出”を果たした蔦重のその後は…【NHK大河『べらぼう』ベスト振り返りセレクション】

  • 2026.1.2

*TOP画像/蔦重(横浜流星) てい(橋本愛)大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」25話(6月29日放送)より(C)NHK

オトナサローネでは、2025年もさまざまな記事を掲載してきました。その中から今回は特別に、「大反響だった記事」をピックアップ! 本シリーズでは大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」について解説。ドラマパートに加え、当時の文化についての記事も大人気でした。
(集計期間は2025年1月~12月まで。本記事の初公開は2025年7月1日です)

 

 

吉原で生まれ育ち、江戸のメディア王に成り上がった蔦重の人生を描いた、大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK総合)の第25話が6月29日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。

 

「吉原もん」という偏見を“らしく”乗り越えた蔦重

須原屋の主人・市兵衛(里見浩太朗)は意知(宮沢氷魚)に抜荷の絵図を差し出し、その対価として、蔦重(横浜流星)の日本橋進出を取り計らってほしいと頼みました。市中において力を持つ市兵衛が味方についている蔦重は盤石の態勢を築いています。

 

蔦重が日本橋進出にむけて準備を進めている中、浅間山の大噴火で江戸市中にも灰が降り積もる事態に。蔦重は自身の店となった丸屋の樋や瓦の隙間に灰が詰まらぬよう布を敷くため、大量の布切れを背負い、店先に現れました。

 

蔦重(横浜流星) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」25話(6月29日放送)より(C)NHK

 

てい(橋本愛) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」25話(6月29日放送)より(C)NHK

 

そして、「丸屋の女将さん申し訳ねえが 出てってもらえますか?」「もう ここは 俺の店なんで」と証書を見せながら一言。「ま 今 出てけってな 冗談でさ」「ここは 俺と一緒に 店 守りませ…」と付け加えます。ていはこの誘いを受けたのは今回が初めてではないものの、蔦重が話し終わらないうちに店の中へ…。

 

蔦重はていだけでなく、通油町の人たちから吉原の人間として嫌悪されることに悩んでいましたが、自身の流儀に従いピンチをチャンスに変えます。蔦重が樋や瓦に布を敷き詰めている姿を見て、この町の人たちもこの作業の必要性にはっと気付きました。丸屋の奉公たちは蔦重が店を守るために屋根の上でキビキビ作業する姿を見て、彼に対するイメージが少し変わったようでした。

 

蔦重 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」25話(6月29日放送)より(C)NHK

 

通油町 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」25話(6月29日放送)より(C)NHK

 

灰の片付けも「楽しく」と考えた蔦重に、あの人物も… 次ページ

また、蔦重は道に積もった灰の片付けにおいて灰捨て競争を提案しました。なんと、勝った組には10両出すという太っ腹ぶり。蔦重は「遊びじゃねえから遊びにすんじゃねえですか」「面白くねえ仕事こそ 面白くしねえと」と、村田屋の主人・治郎兵衛(松田洋治)に反論していましたが、この言葉が印象的だった視聴者は多いのではないでしょうか。積もった灰の片付けのようにやらなければならない仕事は暮らしの中に存在します。蔦重のように遊びではないものを遊びにし、面白いものにしようという考え方ができれば、退屈な日常も少しはマシになりそう。

 

蔦重(横浜流星) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」25話(6月29日放送)より(C)NHK

 

通油町の人びと 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」25話(6月29日放送)より(C)NHK

 

提案者である蔦重は誰よりも真剣、かつ率先して灰が入った桶を持って走っていました。一生懸命に走る蔦重を見ていると、“この男をいっちょ信じてみるか。な〜んか頼もしいぞ”と思えてきます。

 

競争中にハプニングも…。蔦重は灰が入った最後の桶と一緒に川に勢いよく落ちました。川からなかなか姿を現さない蔦重を鶴屋の主人・喜右衛門(風間俊介)を含む町の人びとは固唾を呑んで見守っていました。

 

鶴屋の主人・喜右衛門(風間俊介) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」25話(6月29日放送)より(C)NHK

 

蔦重が川から出てきて、「誰か助けてくれると思ったんすけどね」と笑いを誘うと、喜右衛門は蔦重のこの一言ににこやかな笑みを浮かべました。喜右衛門は地本問屋の主人の中でも蔦重に批判的で、彼を退ける企みを思い浮かべながら薄気味悪く微笑むことが何度もありました。そんな彼が蔦重に心を許し、初めて心から笑ったのです。

 

蔦重と、ていの結婚 次ページ

蔦重と、ていの結婚

蔦重の灰を掃除する姿に心を動かされたのはていも同じでした。ていは蔦重に陶朱公のような才覚を見出し、移り住んだ土地を富ませ、栄えさせる力があると認めました。蔦重こそ店を譲るにふさわしい人物だと考え、自分は出家することに…。

 

蔦重(横浜流星) てい(橋本愛)大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」25話(6月29日放送)より(C)NHK

 

蔦重はていから胸の内を聞き、「やはり 陶朱公の女房になりませんか?」と問いかけた上で、このように述べました。

 

「俺ゃ 人づきあいしか能はねえけど 女将さんみてえな学はねえし。こんな でけえ店 動かすのは初めてですけど 女将さんは生まれた時から ここにいるわけで 力を合わせりゃいい店が出来ると思うんでさ」

 

蔦重は自分の長所と短所に加えて、お互いの相違点を述べていますが、夫婦とは欠けている部分を補い合い、助け合う関係なのかもしれません。お互いの欠点を補い合えば、厳しい世の中をうまく渡り歩けることもあります。蔦重はていをビジネスパートナーとして妻にしたいと考えているようですし、ていも“商いのためだけの夫婦”になることを受け入れます。今はまだ愛し合っているとはいえない二人ですが、いずれお互いがかけがえのない存在になる日が訪れる予感がします。

 

蔦重(横浜流星) てい(橋本愛)大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」25話(6月29日放送)より(C)NHK

 

女郎屋の主人たち 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」25話(6月29日放送)より(C)NHK

 

蔦重とていの結婚の儀はあたたかな雰囲気に包まれていました。蔦重の育ての親である市右衛門(高橋克実)をはじめ、蔦重と縁の深い女郎屋の主人たちも一堂に参列しています。蔦重は血のつながった家族がいないものの、多くの人から愛されていることが伝わってくるシーンでした。

 

さらに、意外な訪問者が現れました。喜右衛門がお祝いの品として暖簾を携え、祝福に訪れたのです。

 

鶴屋の主人・喜右衛門(風間俊介) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」25話(6月29日放送)より(C)NHK

 

暖簾 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」25話(6月29日放送)より(C)NHK

 

「この度 通油町は 早く 楽しく灰を始末することができました。蔦屋さんの持つ全てを遊びに変えようという 吉原の気風のおかげにございます。江戸一の利者 いや 江戸一のお祭り男は きっとこの町を一層 盛り上げてくれよう」

 

喜右衛門の表情から察するに、蔦重と同業者として手を取り合って歩んでいくことを決めているようでした。日本橋に店を構える主人が吉原の人間にステレオタイプを抱き、彼らの気風を嫌悪するのは仕方がないのかもしれません。しかし、何事にもいえることですが、イメージと実情は一致しないもの。喜右衛門は灰が降り積もる中で困惑する人びとの緊張をほぐす蔦重を見て、吉原の気風のよい面に気付けたのです。吉原もんの“心”に蔦重を通して初めてふれたともいえるでしょう。

 

一方、蔦重は喜右衛門から贈られた暖簾の重みを受け止め、自分を認めてくれたことに感謝していました。「頂いた暖簾 決して汚さねえようにします!」と覚悟を言葉にしたときの蔦重の目は決然とした光を放っているように見えました。

 

 

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