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【齋藤飛鳥】10代で出会った貫井徳郎『乱反射』。あしゅの感性を揺さぶった衝撃作の正体を紐解く

  • 2025.12.31

読書好きで知られる、齋藤飛鳥ちゃんがオススメの本を1冊ピックアップし、その本の世界観をファッションやメイクなどときめく感性で表現する連載企画。飛鳥ちゃんが魅せる、この物語の空気感や演出とともに、本が写し出す世界観に浸ってみて♡

光があらゆる方向へ反射するように個々の行動が連鎖的に悲劇を生む

ジャケット ¥71,500、ワンピース ¥42,900(共にティート トウキョウ/ザ・PR)

作中での、幼い男のコがある事故に巻き込まれて亡くなるという悲劇は、不慮の事故と思いきや一人ひとりの身勝手さや「このくらいなら大丈夫だろう」というアンモラルな行動や考えの連鎖が引き起こしたものだった。ひとりひとり、誰もが抱きかねない些細な不道徳の積み重ねがやがて歪みを生んでいく―。そんな、“乱反射”の作品景像を、反射を無限に繰り返していくように、回廊がずっと続いていくような描写で表現。


過去を振り返り軽微な罪に向き合うその“気づき”が光の向きに変化を生む

肩に掛けたチュールビスチェ※参考商品、チュールロングワンピース ¥44,000(共にマイクロウェーブ)

あからさまな悪意ではないものの、登場人物の誰もが「自分は悪くない」「仕方がない」という想いや小さな無関心の連鎖によって少しずつ加担し、結果としてひとつの大きな悲劇を生んでしまう。起こった悲劇は自分の小さな過ちや軽率な行動によるものだったと気づいたとき、苦痛を伴いながらも、自分の中の弱さや脆さに向き合い認識する。その視点の変化こそ、光の向きがほんの少し変わる瞬間に―。


社会の“歪み”を目の当たりにしながらも世の中はこうして繰り返されていく

ワンピース ¥21,780(ゴスペル/THE WALL SHOWROOM)、つけ襟 ¥99,000(tanakadaisuke)、バングル ¥28,600、左手につけた4連ボールリング ¥15,400、右手につけた3連ボールリング ¥14,300(全てSoierie)

「この作品と出会ったのは、私が10代のころ。今まで読んだ本の中で心に残る作品がいくつかありますが、そのなかでも印象的だったのがこの本です。

表紙のインパクトで手に取り巻末の内容紹介を見て、読んでみたいと思ったのがきっかけ。登場人物の描かれ方が具体的で、読んでいて色んな感情が芽生えて作品の中に引き込まれました。悲劇は起こるけれど、でもそれは“みんなにとっての悲劇ではない”から、難しいですよね……。

読み終わったあとは絶望感が強かったり、全然すっきりとしなくてかなり後味が残る作品という印象でしたが、何度か読み返すたびに、起きた現実は変わらないけれど、そのなかでも新しい形にほんの少し向かっていっているような、うっすらと光が差すような結末を感じることができました。世の中や社会って、こういう形の繰り返しで進んでいるよね、って。『この本を読んだから、明日から自分の行動に気をつけよう』というのはあまりに短絡的過ぎるけど、「風が吹けば桶屋が儲かる」ように、一見無関係のことでもそれは社会の中で無自覚に連鎖しているんだろうな、と……。

ひとつひとつの行動に正誤判定をつけるのは難しいけど、なんとなくこれってモラルに反するよね、と気づけるだけでも常識はあるのかなと安心するような気がします。若い人にも年齢を重ねた人にも、この本は気づきがありそう。色々、考えさせられる作品です。

今回も、この作品にぴったりのイメージで撮っていただきました。物語の内容的にもダークなトーンで表現することもできたけど、あえて衣装はきらびやかだったり、メイクもペールトーンを基調にポイントで強い色を差したり。残像感や背景に歪みを加えたりと、一筋縄じゃいかないこの物語に合うように、写真も複雑にしていただき、素敵に撮影できたと思います」


今月の1冊!『乱反射』貫井徳郎 著/朝日文庫

地方都市に住む幼児が、ある事故に巻き込まれる。原因の真相を追う新聞記者の父親が突き止めたのは、誰にでも心当たりのある、小さな罪の連鎖だった。決して法では裁けない「殺人」に、残された家族が起こした行動とは? この悲劇に至るまでの小さな出来事から描かれ、この作品では「1章」ではなく「−44章」から始まる。

model : ASUKA SAITO

photo : TAKEMI YABUKI[W]

styling : AI SUGANUMA[TRON]

hair : SATOMI SUZUKI[S-14]

make-up : SHINO ARIIZUMI[TRON]

edit & text : MAIKO WATANABE

web edit : KIMIE WACHI

※記事の内容はsweet2025年12月号のものになります。
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください。

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