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【あの】「新たな思考や環境が生まれる可能性、そういうちっちゃな可能性があるならうれしい」【sweet web独占】

  • 2025.12.24

アーティスト、タレント、俳優と多彩な顔を持つあのちゃんが、全編書下ろしの『哲学なんていらない哲学』を刊行。
自由で唯一無二の言葉を紡ぐあのちゃんの撮りおろしインタビューをお届けします!

――“哲学書”を書こうと思ったきっかけはなんですか?

あの「きっかけは書きたいって思ったから。その理由はあんまりなくて……うん。じつは今まで本を書きたいって思ったことはないんですが、ふつふつと初めて本を書きたいっていう感情が出てきちゃったんです。この感情がずっと続くものかわからないですし、この本でも書いてるように、感情って一定じゃなくて、どんどん変わってくものだから、今書いておかないと、という感じでした」

――ある意味、哲学的なタイトルですよね。

あの「哲学、あんまり知らなくて。否定的な言葉を言われることがぼくは多いし、ぼくも言っちゃってるときあると思うし。ぶっちゃけ、哲学なんてなくても生きてけるでしょとか思っていたけど、そういう考えで生きていても、やっぱり哲学って気づかないうちにあって生きている。だから、『哲学なんて』って思ってる人が読んでもらえるタイトルにしたかったし、そういう否定をするところにもうすでに哲学があると思っているから、このタイトルにしました」

――どんなペースで書いたんでしょうか。

あの「バーっと書けるところは時間があるときに書いて、仕事から帰った夜中、ちょこちょこ書き進めたりとか。ぼくは歌詞を書く時も書き始めたら一気に書くタイプなので、本も似た感じでした。ただ、書き方が難しくて……。自分の感情や経験を書きつつ、どういうことを自分は吸収してきたのかっていうところを中心にしていたので、たまに考え込むことはありました」

――読者のイメージはありました?

あの「本を読まない人や、哲学とか難しいことをあんまり理解しない人とか。ぼくがそうなんですけど、そういう人が読むきっかけになるといいなみたいな感じで書いていました。自分自身、書き方もわかんないし、本も数えられるくらいしか読んだことないので」

――本ができあがってみて、改めてどう思ってますか?

あの「書き終えて……うん、あんま読んでほしくない、思っちゃいます。
書く前は書きたいって思ったけど、書き終わってみると読まれたくなくな、って。でも、それも予感はしてたというか、大事なこともかけたのかなって思いました。自伝ではないし、もちろん書いてないこともたくさんあるんですけど、日頃相談を受けたりとかが多かったので、これ読んでもらって、ちょっと、ぼくが回答する代わりになったらとかも思ったり。
ぼくは本を読むことがあんまなかったんですよ。でも読んだことは多少あって、例えば愛についての本とかも読んだことあったけど、何もわからなかったり、とか。別にそれを基準に生きてるわけじゃなくて、それでいいんだなって思ってるし。だからこれを読んだからって自分の人生の道しるべにしよう、なんて思わなくていいというとこが大前提。その上で、みんながどう思うか、とか、私もこう思う、とか。ぼくの歌詞では結構言われるんですけど、それを超えてやっぱりこの言葉を心に宿わせて、道を迷った時に道しるべにしていくということも、いいと思う。どんな意見もきっと嬉しいと思うし、気になりはしますね。
けど、あんま読んでほしくない。結局、自分にとっては当たり前なことだったり、当然なことを書いてるから。でもそれをあえて書くっていうことにしたので、改めてそれを読まれるっていうのは、ちょっと恥ずかしい。誰かの当たり前がぼくにとっての当たり前じゃないというのもあるし、だからこそ、ぼくの当たり前がみんなにとっての当たり前じゃなかったりしたら、新たな思考や環境が生まれる可能性もあると思う。そういうちっちゃな可能性があるなら、うれしいですね」

――「曲を書くことは自分にとって救い」とありますが、文章を書くことはどんな変化をもたらしましたか。

あの「この本では新しいことを書こうとは思ってなくて、当たり前なこと――周りからしたらどうでもいいことはぼくにとってどうでもよくないっていうことを言いたいがために、書いたんですね。今まで持っていた考えをまとめていたつもりだったんですけど、書いているうちに、『自分はこういう考えなんだな』とか『こういう思いなんだな』と整理できたり、気づけたので。そういう意味では、書くことで整理されてく、研ぎ澄まされてる感じはありました」

――「自分らしさは流動的でいい」とありますが、デビューから今までで自分に変化があったと実感したことは?

あの「結構やっぱブレない方かなとは自分でも思うんですけど、でも昔はあまりにもぶれなさすぎたというところがある中で、この数年で自分らしさってぶれないことはもちろん大事だけど、その自分らしさに縛られないためには、もっともっと自分を知って、自分がこうやって気分が変わることとかも受け入れれること、それを知ると一番自分らしくいれるなっていうことに気づけたから。考えのバリエーションが増えた、ということが、自分でも流動的になったなって思いました」

――かなり正直に振り返っている過去のエピソードがたくさんありますが、そのつらさは?

あの「それはありました。過去のことは、やっぱり思い出したくないものがほとんどだったので。それをわざわざ振り返ることが嫌だったし、けど、それが自分の人生のつき物だったから。それを書いけば書くほど、自分がその物事に対してどこまで向き合えてたとか、どこまで許せてたのか、許せてないのかっていうのがわかりました」

――この振り返りって、ご自身のアーティストとしての活動にも影響すると思いますか?

あの「そうですね、それは今の自分に必要なことでもあったので。
読んでほしくないとは言ったけど、書いて後悔はしてないので。もちろんこれは自伝ではないので、全ては全く話してないし、何割かの話をその思考につなげると、つなげる過程で必要なものは書いた、という感じなんで、それを言ったことで、今後はもうちょい気楽になるかもしれないです。書く理由のひとつでもあったんですけど、自分の初期値というか、自分の考えとかを言葉の世界だけで提示するっていう挑戦みたいな。ひとつ段階を踏めた、初期値を本として言葉で残すことによって、次に行ける気持ちになりました。」

――中学生の時に作った「復讐ルール」。今のあのさんはどう感じますか。

あの「頑固だな。でも今と変わらないというか、割とこれをルールとしてやってきたので、当時も今もあんま変わらないルール。復讐といっても人を傷つけたいという思考はなくて。たとえ人を蹴落として、何かを得ることもできたとしても、蹴落とさずに何か得た時の方がすごいから。それを知ってて。蹴落としちゃうと自分の実力じゃない気がして。なので、そこは真っ向勝負で」

――幸せの定義は?

あの「うーん、めっちゃざっくり言うと、他人と比べない。自分自身の人生や生活や日常で、他の人、それが恋人や家族だとしてもですけど、他の人と比べるのは違う。他人に測られるものでもないし、他人と比べて測るものでもなくて、全部取っ払った上で、自分が楽しいとか嬉しいとか思えるものとかが幸せなのかなって思いました」

――ファンから求められることは、自分の幸せに繋がりますか。

あの「幸せというか、使命や宿命みたいのが強くて。自分ももらってるものがあればあげなきゃなって思うものもあって、一方通行じゃないから、なんか幸せとはまたちょっと違う感覚ではありますね」

――長年仕事をされているフォトグラファーの松岡一哲さんが撮影されてますが、どのような現場になりました?

あの「今まで何度も撮っていただいてるので、質感とかすごくわかってたっていうのもあって『こうしてほしい』とかは伝えてはいないんです。けど、作り込まないで等身大の自分を写してもらうようにはしてました。
写真自体は、ぼやけてたり、ピントが合ってないものもたまにあって、それがまた魅力だなと思いつつ、なのに自分の輪郭をすごくしっかり見えるような写真とか。『お、そういうぼくを引き出してくれるんだな』っていう、鋭さが。柔らかい光の中にもすごい鋭さが宿る写真家さんだと思うので、そういうとこを引き出してもらってます」

――お仕事が多忙な中で、すごい本を書かれましたよね。改めましておめでとうございます。

あの「この本は書き始めたのが2025年夏だったので、他の仕事もたくさんあって大変な時期にすごく短期間で書き上げたものです。でも、常に何かに挑戦して追い詰めているし、何かをやってる時に別のことを考えたりとかするから。歌詞とかもそうだけど、人との会話とか生活のなか浮かぶこともあるから。本も一緒で、逆に集中しすぎないからこそ生まれたんだと思います」

――この追い詰めた数カ月が、来年別のこととして実るかもしれませんね。

あの「だと嬉しいですね」

――お芝居にいきそうな予感。

あの「今ドラマをやってるんですが、楽しいですよ。分からないことが多いけど、学ぶことが多いので、それも面白さだなって思ってます」

――sweetは20代後半〜30代の女性が読んでくれる雑誌なんですが、多くの読者があのさんが大好きなんですよ。

あの「うれしいですね。その世代の女性はやっぱり自立している人が多いイメージで、どんどんどんどん強くなってしまうみたいな感じ。ひとり自立を突き詰めて、ひとりだからこそできる表現の広さだったり、仕事のバリエーションとかって絶対あるから、そこにすごく魅力を感じますね」

●BOOK info
『哲学なんていらない哲学』
定価:¥2,420
発売:2025年12月24日(水)
仕様:A5判
発売・発行:株式会社KADOKAWA

photo : JOJI[RETUNE rep]

text : MASAMICHI YOSHIHIRO

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