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西陣織の魅力を世界へ。細尾夫妻に学ぶ、ポジティブに生きるためのメソッド

  • 2025.12.30
Hisashi Miyakawa

チャレンジ精神に満ちあふれ、新しい道を切り開いて躍進する注目のふたりにお話を聞きました。ライフスタイルやマインドセットから、幸せをつかむためのヒントを見つけて!

先人の思いを紡いだ伝統工芸の美しさがパワーとなって可能性を広げてくれた

西陣織のもつ美しさを世界に発信したい

1688年に創業し、330年以上の歴史を誇る西陣織の老舗、HOSOO。その12代目当主である細尾真孝さんは、ミュージシャンとしても活躍していた異色の経歴の持ち主。その後イタリア留学などを経て、美しいものに感応するHOSOOのDNAに導かれるように、西陣織の魅力を再認識。奥さまの多英子さんとともに、さまざまなアクションを通じて西陣織を世界へと発信しています。

「高度な分業制をとっている伝統工芸の西陣織は、後継者不足などの大きな課題を抱えていました。それでも西陣織が100年後も続く文化であってほしい、それにはグローバルに魅力を知ってもらう必要があると、父の代から海外での活動もスタート。そこで問題になったのは、織物の幅でした。通常反物の幅は約32センチですが、テキスタイルの基準は150センチほどとかなりの隔たりがあり、通常の幅のままだと製品が継ぎ目だらけに。この致命的な問題を解決するには、織物の幅を広げるしかない。そこで幅広の織機の開発に着手しました」

立ちはだかった壁とその向こうで出合ったもの

新しい織機の開発は、今まで誰もやってこなかった大きな壁。ゼロからのスタートでほぼ手探り状態です。真孝さんは志を同じくする職人たちと試行錯誤を続け、約2年かかってとうとう150センチの織機の開発に成功。テキスタイルの基準を満たしたことで多くのブランドからも注目されるように。ラグジュアリーメゾンと協業する機会も増え、たくさんのアーティストとのコラボレーションも実現。

伝統工芸は革新的であっていいもの

真孝さん:「伝統工芸というのは、スタイルが変わらない、コンサバティブなものだと思っていたんです。でも歴史を振り返ってみると、さまざまに形を変えていました。それに気づいてから、西陣織がとてもクリエイティブなものだと思えるように」

多英子さん:「自分たちが美しいと思えるものづくりを軸に、例えば企業として環境や社会に配慮した取り組みを積極的に行ったり、洋服のデザインや美容の開発をしたりと、今までにはなかった新しいアクションもどんどん起こしていきたいと話しています」

記憶に新しいところでは、大阪・関西万博のパビリオンの建築資材に西陣織を用いて大きな話題に。次は何をやってくれるのか、今後もますます目が離せません。

Keywords of Power Action

HOSOO

ショップに並ぶ爽やかな色合いのパジャマたち。古代草木染色の研究によって、鮮やかな色合いの再現に成功。過去の文献や資料を読み解き、実験を重ねたからこそ実現した美しさなのです。

HOSOO

絹と同じく古くから愛されてきた麻、ヘンプ素材の開発にも力を入れています。ヘンプ素材でできた寝具は、ふたりのパワーの源でもある質のよい眠りを得るために大きな助けとなっているのだとか。

HOSOO

「きものは先人たちの美意識やパワーをもらえるアイテム。身にまとうと力が湧いてくるような気がします」と真孝さん。同じくらい洋服も好きで、そのときの気分やシーンによって使い分けているそう。

Hearst Owned

ラグジュアリーブランドとのコラボレーションも多数発表しています。グッチとのコラボは第4章となり、伝統、クラフトマンシップ、クリエイティビティという両ブランドの魅力が詰まったもの。

細尾真孝さん・細尾多英子さん
PROFILE 真孝さんは音楽業界、ジュエリー業界を経て2008年細尾に入社。現在は「HOSOO」12代目、代表取締役社長。多英子さんは東京でブランドのマーケティング職を務めた後、真孝さんとの結婚を機に京都へ移住。「HOSOO」の副社長として製品企画からブランディングまで幅広く携わっています。
Instagram:@hosoo_official


Photos:HISASHI MIYAKAWA
Interview&Text:NONOKO HATA
25ans(ヴァンサンカン)1月号掲載(2025年11月28日発売)

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