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「30代はもうおじさん?」今求められる“イケおじ”の条件と『デザイナー 渋井直人の休日』に学ぶおじさんの自意識の正体

  • 2025.12.29

おじさんがパーカを着るのはありかなしかの「パーカおじさん論争」が巻き起こったり、「おじさんが一番似合うのはユニクロ」という発言や、最近では柚月麻子がSNSで発信した「文化系説教ジジイにモテない方法」がバズるなど、何かと風当たりの強いおじさん界隈。今、どんなおじさんがかっこいいのか? 雑誌smartの30代男性編集者と元・smart編集長がそんなおじさん界隈について対談してみました。

「おじさん界隈」を男性編集者同士で語る

元・smart編集長T(以下、T):今、かっこいいと憧れられているおじさんって誰なんだろう? 昔でいうショーケン(萩原健一)とか松田優作みたいな人はいるのかな?

smart編集部・K:具体的に有名人ってなると、どうなんでしょう? SNSのストリートスナップとかで見かけた「イケおじ」がバズっているのはたまに目撃しますね。名もなきおじさんだけど、かっこいいなとか。僕は大学時代とか、ショーケンや松田優作は年齢がどうとかじゃなく、かっこいいと思ってました。

T:今の憧れはもっと身近な人になってきたのかな。

K:窪塚(洋介)さんは20代の人にも人気がありますよね。お高くとまった感じがしなくて、それこそSNSのストリートスナップにも出ちゃいそうな身軽さもあるし、インスタで毎年ハロウィンのときとかに家族の写真をアップする自然体なところもいいんだと思います。

T:最近、渋谷直角さんの『デザイナー 渋井直人の休日 メロウ・ブルー』という書籍が出て、これは50代・独身デザイナーの日常を描いてるんだけど、主人公の渋井さんはファッションもおしゃれ、趣味もいい、美味しいお店も知ってるという高スペックなんだけど、なぜか恋愛面では上手くいきそうでいかないんだよね。そして、インスタに写真をあげるのにも、いちいち結構悩む。

K:SNSを上げるのにすごく悩んだり、いろいろ考えすぎちゃう渋井さんの自意識過剰エピソードが逆に面白いですよね。インスタだと(スチャダラパーの)Boseさんとかは日常の何でもないこと、たとえば近所のドーナツ屋に行ったっていうことをUPしたりしてるんですけど、たわいがないこともなんか洒落ててオシャレなんですよね。

T:この単行本には収録されてないけど、おじさんのSNSはヤバいっていう回もあって、インスタ一つにもいろいろ気を使わなきゃいけないみたいですよ。

K:男子って高校生ぐらいで髪型とかを気にしだして、20〜30代でいったん気にしなくなるんですけど、おじさんになると、またまわりの目が気になりだすっていう周期がある気がするんですよ。ファッションもそうだし、SNSの写真のあげ方とかも。“オヤジだからここまでやっちゃ恥ずかしいかな”とか気にして、安全なところに置きにいくというか。

T:考えすぎるのも良くないけど、全然気にしないのもそれはそれで危ないというか。今、何歳からおじさんって思うんだろう?

K:もう30代ならおじさんじゃないですか?

T:30代!

K:20代前半の子たちから見たら、そう思われていると思います。

T:ギャルが20歳でもう自分をおばさんって言っちゃうような。

K:でも若者からおじさんって見られることの気持ちよさもあるじゃないですか?ちょっとつまらないギャグを言って、親父ギャグって言われることにカタルシスを感じたり(笑)。

T:自分がおじさんであることを安全弁にして話すとラクかもね。“おじさんだから、わかんないよ”って言えるし。

K:確かに、それを武器にできれば強いかもしれません。

T:でも、父親の下着を同じ洗濯機で洗わないでと娘から言われたりとか、加齢臭がするから近寄らないでって言われたりとか、いろいろ身が狭い場面もありそうですけどね。

K:今、男性用の化粧水とか加湿ケアとか体臭ケアとか、美容アイテムがいろいろ出てきてるから、対策はとりやすい時代になっていると思うんです。清潔感を保つことで戦えるというか。でも、男同士でもこういう話をすると、やってみたいっていうリアクションと気持ち悪いっていうリアクションの2つにはっきりと分かれますね

T:拒否反応を示す人はまだ多そう。「男なのに」とか、老いに抗わないのがかっこいいみたいな価値観の人。

K:でも、若い女性でそれをネガティブに捉える人ってほぼいないと思うんですよ。大多数が歓迎するだろうなと思うし、抗うほうがポジティブに捉えられることのほうが多いのに、おじさんだけがそこを気にしてるというか。肌が綺麗になったほうがいいというシンプルな価値観がなぜ受け入れられないんだろう。

T:年齢的なことだけじゃないのかもね。“男はワイルドがいい”信仰の人とかは。美容方面にはいかなそう。いまだに昔のロック・テイストのファッションを着続けている人は、偏見かもしれないけど、美容液は使わなそうだもん。

K:そういう美学の人って、意外と危ないかもしれないですよ。ロックなテイストも、今でもレザーアイテムが好まれていたり、受け入れられてますけど、昔と変わってきてるとは思うんですよね。以前はロン毛、レザー、アクセ、バイクみたいな要素を全部満たして認定されていたものが、今は認定基準が下がって、一個あればいいのを全部のせにしてるから、そういう人を見ると胸焼けするんじゃないですかね。

T:オヤジもアップデートしないとダメってことですかね。

K:所ジョージとか光石研さんがかっこいいと思えるのって、好きなものは昔から変わらないけど、ちゃんと人として時代とも向き合ってるからだと思うんですよね。あと、自分がおじさんであることに無自覚で、妙に若いところをアピールされるとツライというか。

T:聞かれてもないのに、フジロックの初年度に行った話はしないとか、大事かもね(笑)。

K:若い子にも、自分がこうなりたいというのはないかもしれないけど、こういうおじさんはいいね、これは嫌だねっていうのはあるかもしれないですね。

T:では、次回は業界のおしゃれオヤジに「かっこいいおじさん」について聞いてみましょう。

『デザイナー 渋井直人の休日』とは?

『otona MUSE』(宝島社)で連載中のコミック。著者の渋谷直角が「おしゃれなおじさんになりたいけど、きっと自分はこうだろうなぁ」という発想から生まれた主人公・渋井直人とその仲間が織りなす悲喜こもごもの日常劇。ファッション、グルメ、アートなどのリアルな情報も盛り込まれている。

渋井の自意識過剰ポイント

  • インビをくれた女の子が自分に気があると勘違い
  • ホームパーティに女性を招き、念のため寝室もコーディネイト
  • 推しのアイドルを素直に言えない
  • イベントで知り合った女性に絞ったDJの選曲
  • 友人からもらった化粧水をインスタにUPしようとして、写真をあれこれ違う場所で撮る
  • サザンオールスターズの3曲アンケートにすごく悩む
  • エレベーターに女性と二人っきりは相手が迷惑と慮る
  • たまたま知り合った女性バンドの打ち上げに参加できると期待が膨らむ

面白そうだと気になった人は『デザイナー 渋井直人の休日 メロウ・ブルー』をチェック!

デザイナー 渋井直人の休日 メロウ・ブルー

価格:2,178円(本体1,980円+税)

発売:POST

Profile/渋谷直角(しぶや・ちょっかく)
1975年生まれ。名前は本名。小山ゆう先生の『おれは直角』から名付けられた。マガジンハウスの『relax』でライター仕事を始め、同誌でマンガも描くようになり、以降様々な雑誌やwebで主にマンガを描いている。

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