MDSと「アシックス」による新プロジェクト「ISSEY MIYAKE FOOT」がスタート

MDS（三宅デザイン事務所）と「アシックス」が、フットウェアを共同で開発するプロジェクト「ISSEY MIYAKE FOOT」を始動。最初のプロダクトとなる“HYPER TAPING”が、2026年1月5日（月）より販売される。

「一枚の布」という、衣服のあり方の根源を問う思想を核に、時代に寄り添ったものづくりをしてきたMDSと、「スポーツで培った知的技術により質の高いライフスタイルを創造する」という志のもとで革新的なフットウェアを生み出してきた「アシックス」。日本が世界に誇る2つのブランドが、新たな価値をまとうフットウェアの創出に挑む。

プロジェクトのきっかけは、三宅一生の言葉だった。かねてから靴づくりに興味を示していた三宅が、新たな協業相手として「アシックス」を望んだのだ。これが2021年のこと。「アシックス」のライフスタイルカテゴリーである「アシックススポーツスタイル」と具体的にプロジェクトが動き始めたのは、2023年4月。そこから2年ほどかけて開発を行った。

「アシックス」のものづくりや技術力、そしてデザインを人の暮らしに関連づけていく真摯な姿勢に、自らと近しい印象を受けていたというMDS。ブランドの歴史を振り返るにつれ、その思いを強くし、とりわけ「アシックスストライプ」に感銘を受ける。

この「テーピング」というコンセプトを具現化するために「アシックス」が提案したのは、なんとレスリングシューズ。これをスニーカー構造で設計してはどうか、というアイデアだった。レスリングはもちろん、ボクシングや最近では一般的なトレーニングでも使われることの多いこのシューズは、アウトソールが薄く、歩く際に「地面を蹴る」感覚を得やすい。「素足」を感じることができるのだ。「肌に直接触れるテーピングをコンセプトとしたデザインと、相性がいいのではないか」と「アシックス」は考えた。

実際に履いてみると、足に吸いつくようなフィット感で、特に足の両サイドからしっかりと固定されているのを感じる。これにゴムバンドを装着することで、サポート力がさらに向上。一方で、インソールにほどよいクッション性があるので、地面を心地よく感じながら歩くことができる。

「アシックス」は、この“HYPER TAPING”のため、新型ラスト（足型）に加え、インソールも開発。内部に硬いプレートを採用しながら、クッション性と反発性のあるスポンジ材も取り入れることで、地面からの突き上げを緩和した。さらに、コンセプトの核となるテーピングの造形についても、素材探しから始めるなど、こだわり抜いた。その結果生まれたのは、太いオリジナルのゴムバンド。これにより、足を包み込むラインを印象的に描き出すことに成功した。

そして、MDSと「アシックス」が共に、開発のプロセスで最も苦労したと認めるのが、このテーピングの調整だった。「どんな足にもフィットするような」角度と長さについて、議論を重ね、試作を繰り返した。

アッパーのカラーは、ゴムバンドを起点に決めたという。「わくわくするような配色を」と選んだブルーとオレンジのバンドに合わせ、これを引き立てるキャンバスとしてアッパーを捉えた。

カラーは3種類。アイコニックな蛍光グリーンのほか、さまざまなファッションに合わせやすいオールブラックとオールグレーも用意した。カジュアルにもビジネスの場でも履けるよう、素材には本革も使用している。

今回のプロジェクトについて、「アシックス」は「デザインと機能の融合を高次元で追求できました。機能美の深求や見えない部分へのこだわりなど、大切にしている部分が共通しているからでしょうか」と言い、続ける。「“HYPER TAPING”は、『アシックス ストライプ』の歴史の延長線上に位置づけられるようなプロダクトになったと思います」

これに対し、MDSもこうコメント。「本質的なコラボレーションができたと思います。ものに対する美意識や品質の感覚をすり合わせるのは、実はとても大変な作業。『アシックス』とは、初めから同じレベルを求め合っていたのがよかった。息の長いコラボレーションにしたいですね」

“HYPER TAPING”は、2026年1月5日（月）からISSEY MIYAKE GINZA / 442をはじめ、「イッセイ ミヤケ」の一部店舗や、「アシックス」の一部直営店、それぞれのオンラインショップにて販売を開始する。

人の身体と向き合い、日本でものづくりを続けてきたMDSと「アシックス」による協業は、始まったばかり。多様なプロダクトの開発に取り組んできた両者が、豊富なアーカイブと新しいものを求める探究心を掛け合わせ、これから何を生み出していくのか、今後の展開が楽しみだ。