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鉄道開業から200年、イギリス最新インテリアの豪華列車が誕生!

  • 2025.12.22
Hearst Owned

2025年夏、ロンドン発着の新たな寝台列車が誕生。クラフトマンシップをたたえ、新たな英国らしさが光るインテリアを手掛けたアルビオンノードに話を聞いた。『エル・デコ』12月号より。

SALVA LÒPEZ

世界各国でホテルやクルーズ、豪華列車を運営するベルモンドより、ロンドンからウェールズ、コーンウォール、湖水地方を巡る寝台列車「ブリタニック エクスプローラー」が誕生。インテリアを手掛けたデザイン事務所、アルビオンノードのカミラ・クラークは「インスピレーションは鉄道の旅そのもののロマン。ゆっくりとした旅のリズム、車窓から景色が広がっていく劇場のような体験です。インテリアもその延長上にありたいと考えました」と語る。

<写真>車窓の風景を存分に楽しめる展望車両にはバーを併設。イギリス国内の独立系蒸留所のジンのカクテルや、クラフトビールを味わえる。

SALVA LÒPEZ

最も大切にしたのは英国のクラフトマンシップ

1825年にイギリスで近代鉄道が開通して200年。節目の年に誕生したこの列車は、上品で優雅な英国らしさの中に温かみと新鮮さが息づく。その理由は職人の仕事にあるとクラークは説明する。「英国のクラフトマンシップをたたえることが、初めから重要な柱でした。豪華なだけではなく、土地に根ざしたものにしたかったんです」

<写真>グランドスイートの客室「ジュニパー」。グランドスイートはエルダー、ヴァレリアン、ジュニパーの3室を用意し、英国の植物の色彩やディテールを反映させている。

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そのため、イギリス国内のデザイナーやアーティストを抜擢。デザイナーのルーク・エドワード・ホールは、客室用にルベリ社の特注ファブリックを制作。貝殻や植物など、旅路にちなんだモチーフを描いたイラストが、客室にユーモアを添えている。アーティストのオリー・ファーザーズは数種類の木材を組み合わせたアートを制作。こういった現代のデザインやアートと、貴族の邸宅やヴィクトリア朝から着想を得た伝統的な要素を合わせることで、新たな英国のアイコンが生まれた。

<写真>深みのある赤でまとめられたグランドスイートの客室「ヴァレリアン」。ソファ上のアートはオリー・ファーザーズの作品。

SALVA LÒPEZ

クラークは英国らしさを模倣ではなく「ムード」として捉えたと言う。「古典的なプロポーションに抽象的なアート、遊び心あるファブリック、大胆なボタニカルモチーフを合わせ、伝統とモダンのバランスをとりました」

<写真>2両からなる食堂車はボタニカル柄とミラー天井、ライムドオークが織りなす上品で落ち着いたインテリア。朝食やアフタヌーンティー、ディナーがここで提供される。

SALVA LÒPEZ

鉄道という特殊な環境ゆえ、スケールや比率など住宅の設計とは異なる視点も求められ、空間を有効に使えるソファベッドや走行中でもグラスを安全に置ける縁高のサイドテーブルなど工夫を凝らしている。

<写真>英国の緑豊かな風景を反映した、グリーンを基調としたスイートダブルの客室。壁にはルーク・エドワード・ホールがデザインしたファブリックのパネルが張られた。ソファは就寝時にはベッドになる。

CHARLIE MCKAY

<写真>料理はミシュランの星を獲得しイギリス料理界をけん引するシェフ、サイモン・ローガンが監修。

CHARLIE MCKAY

<写真>地産地消を重視した、モダンブリティッシュの美味を堪能できる。

SALVA LÒPEZ

このプロジェクトを率いたクラークは現代の英国デザインの特徴を「多様性と自信」と語る。「一つの美学に縛られずに歴史やクラフト、個性を重ねて実験的精神と共に発展させる。何よりも大切なのは物語性とコラボレーション。デザイナーや職人が力を合わせて、未来を見据えたデザインになるのだと思います」

伝統的な英国らしさを新たな視点で解釈したブリタニック エクスプローラーは、それを見事に体現している。

<写真>ブルーがアイコニックな車両の外観。

BRITANNIC EXPLORER(ブリタニック エクスプローラー)
ヴィクトリア駅発着でウェールズ、コーンウォール、湖水地方を巡るツアーを用意。料金はダブルキャビン利用で£11,000~。3泊の旅程に加え、寄港地での観光アクティビティ、朝昼晩とブランチを含む食事、ワインやアルコールを含む各種飲料が含まれる。

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お話をしてくれたのは...

Camilla Clarke/Albion Nord (カミラ・クラーク/アルビオンノード)

アンソニー・クーパーマン、ベン・ジョンソン、カミラ・クラーク、オタリー・ストライドの4人によって、2017年に設立されたロンドン拠点のデザインスタジオ。英国スタイルを再解釈した空間づくりを得意とし、住居を中心としたプロジェクトを手掛ける。カミラ・クラークはクリエイティブディレクター。

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『エル・デコ』2025年12月号



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