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タクシー乗車時に嘔吐、お漏らし…高額な「清掃費」請求されたら支払わないとダメ?弁護士が対処法を解説

  • 2025.12.20
タクシーを汚損した場合の法的責任は?(画像はイメージ)
タクシーを汚損した場合の法的責任は?(画像はイメージ)

12月は忘年会シーズンです。すでに職場の忘年会を終えた人もいれば、近日中に忘年会を控えている人もいると思います。この時期、夜のタクシー乗り場では、忘年会帰りとみられる人が多く並んでいるのをよく見掛けますが、飲み過ぎには注意が必要です。

ところで、明らかにお酒に酔った状態の人がタクシーに乗り込むのを見掛けることがありますが、もし途中で気分が悪くなって車内で嘔吐(おうと)したり、尿や便を漏らしたりしてしまった場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。タクシーの運転手から「車内清掃費」などを請求された場合、たとえ費用が高額でも支払いに応じなければならないのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士が解説します。

損害賠償責任を問われる可能性

タクシー乗車時、車内で気分が悪くなり、もし車内で嘔吐してしまったり、漏らしてしまったりした場合、法的責任を問われる可能性があります。タクシーに乗るということは、運転手と乗客との間で「旅客運送契約」(商法589条)を結ぶことに該当するからです。

契約を結ぶことで、運転手には、安全に最善ルートで目的地まで乗客を運送する義務が生じますが、乗客にも運賃を支払う義務のほか、運転手やタクシー会社に損害を与えないよう、注意して乗車する義務が生じます。

酔っ払ってタクシーに乗り、気分が悪くなる可能性が高いのにそのまま乗車し、エチケット袋なども使わず、嘔吐して車内を汚したり、事前にトイレを済ませることなく乗車し、漏らしてしまったりすることは、契約に基づく乗客の義務違反に当たり、損害賠償責任を問われる可能性があります。

損害としては、「車内のクリーニング代」や、クリーニングが済むまでの間、タクシーが稼働できなかったケースにおいて、「本来であれば得られるはずだった利益(逸失利益)」が考えられます。

もし運転手から「車内のクリーニング代」を請求された場合、実際に損害が生じているのであれば、支払いに応じる必要があります。

例えば、汚れの程度が軽く、シートもはっ水性のカバーが付いており、運転手自身がさっと拭き取る程度で済むようなケースでは、ほとんど損害が生じていないと考えられ、支払う義務がないこともあるでしょう。一方、汚れの程度や臭いなどがひどく、有償で業者に清掃を依頼しなければならないケースでは、少なくとも、車内清掃にかかった実費は支払う必要があります。

クリーニング代は、かかったとしても1万円から3万円程度だと考えられます。また、逸失利益については、汚れによって本来営業するはずだったタクシーが営業できない状況が、本当にあったのか検討した上で、具体的金額を計算することになるでしょう。

タクシー会社の配車の工夫などにより損害を小さくすることができるケースもあるでしょうし、事情によって金額は変わると考えられます。

いずれにせよ、通常、数十万円の損害が生じるとは考えにくく、数十万単位の賠償請求は、過大な請求に当たるでしょう。もし高額な費用を請求された場合、すぐに支払いに応じる必要はありません。賠償金額でもめた場合には、弁護士などに相談し、適正な金額のみを支払えるよう、先方と話し合うことが大切です。

タクシーの運転手は、原則として、乗客拒否をすることができません(道路運送法13条)が、「泥酔した者または不潔な服装をした者等であって、他の旅客の迷惑となる恐れのある者」は拒絶できることになっています(旅客自動車運送事業運輸規則13条3号)。そのため、タクシーの運転手が酒に酔っている客の乗車を断ったとしても、法的責任を問われることはないでしょう。

そうはいっても、営業上の理由などにより、運転手側が乗車を拒否することは難しいのが現状ではないでしょうか。酔って体調が悪いときは、しばらく休んでから乗車する、乗車中に気分が悪くなったら降車するなど、客側の配慮が求められているように思います。くれぐれも泥酔するまでお酒を飲み過ぎないよう注意しましょう。

オトナンサー編集部

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